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フランスで人気のマンガって? - ジャパンエキスポレポート(2/5)

ジャパンエキスポレポート全5回 –(1/5)(2/5)(3/5)(4/5)(5/5
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マンガ新聞編集部の西野です。

前回に続き、Japan Expoのレポートを全5回集中連載でお送りします。

今回は第2回。どんなマンガがフランスでは読まれているのか、にフォーカスします。

手に入らないマンガを買いに来る。それがマンガファンにとってのJapan Expo

日本のコミケとは違い、Japan Expoは物販(と商談)の展示会だ。

私たちがいつも読んでいる日本のマンガは、「manga」と表記・発音されて、アメコミやバンド・デシネ(フランス語圏の伝統的な大判オールカラーのマンガのような本)とははっきり区別され、認識されている。

このJapan Expoは、日本の企業や自治体が出展しているが、マンガについては、日本からの集英社や講談社が出展するわけではなく、日本のマンガの仏語版を手掛けている現地フランスの出版社がブースを出している。

というのも、日本での人気タイトルの多くが、早々に仏語に翻訳されていて、各出版社からリリースされているからだ。

日本の出版社はフランスにおいては、あくまでコンテンツの提供元としてライセンス契約をし、日本のように販売元としてマンガを売ってはいないのだ。

Japan Expoでは、毎年、マンガを刊行しているフランス出版社の上位10社ほどが出展し、ブースは書店のごとく、ぎっちりとマンガが並び、販売スタッフが飛び回っている。

それぞれの出版社の推し作品はひときわ目立つディスプレイをされ、大きくピンナップされている。

マンガは「Shonen」「Seinen」「Shojo」と日本の呼び方がそのまま定着してカテゴライズされている。この3つがメインカテゴリーだが、「Shojo」の人気・広がりはわずか。「Shonen」「Seinen」が認知・人気のおおよそだ。

前のレポート①でもお伝えしたように、フランスでは日本の出版社や雑誌別に版権契約をするのではなく、作品単体ごとにそれぞれの出版社が買っている。

例えば、週刊少年ジャンプ掲載作品ならば、フランスではこのように各社で単行本が発売されている。

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(↑フランスでの集英社と言っても過言でない大手出版社Glenat社では、もっとも広い壁面で『Dr.STONE』をPRしていた。Boichi先生は『ORIGIN』でフランスでの評価が高い。フランス人好みの画風である作家のひとりだ。)

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(↑『約束のネバーランド』を発行する出版社のブース。床に無造作に置かれているのは数話分を掲載した無料の小冊子。作品を新規読者にアピールするため、Japan Expo会場では各社はこうした小冊子を無料配布している。)

これらのジャンプ作品は日本と同様に大ヒットとなっている。

つまり各社がバランスよく、ジャンプの人気作品を分け合ってるというわけだ。

面白い作品は、誰が読んでも面白い。人気の傾向はやはり世界規模で同じ、ということだろう。

また、週刊少年ジャンプ作品以外での人気タイトルも紹介したい

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マンガのシェアで、不動のNo.1のGlenat社は、私見ではさしづめフランスの集英社と認識している。

2位のkana社は小学館に社風が似ていると感じている。また、3位のPIKA社のリリースは、講談社の太い作品が多く見受けられる。この10年間では、2位と3位はこの2社で競い合っているという経緯も面白い。

さて、Japan Expoの現場に戻ると、各社の傾向として、すでにヒットしている作品だけではなく、これからヒットさせたいであろうタイトルをJapan Expoでの推し作品にしているよう各社の意図が見えて興味深い。

上記のジャンプ掲載作品は日本と同様にファンが多いのは前述のとおり。しかし、それ以外で推しになっていた作品は意外なものがあり、日仏の違いが今回のJapan Expoの特徴的な点だった。

以下に挙げよう。

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Check Me Up!(『恋はつづくよどこまでも』)


Magus of the Library(『図書館の大魔術師』)

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GOBLIN SLAYER!(『ゴブリンスレイヤー』)

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MAGICAL GIRL HOLLY SHIT(『間違った子を魔法少女にしてしまった』)


Perfect World(『パーフェクトワールド』)


Prisonnier RIKU(『囚人リク』)


La Malédiction de Loki(『魔女の怪画集』)

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そのほか、Ki-oon社によれば、『BLACK TORCH』の人気が日本以上にあるとのことで、タカキツヨシ先生を招いてサイン会を開催していた。

AKATA社では、ブースにおける売れ行きNo.1は『Orange』だという。



また、販売だけでなく、作品プロモーションも兼ねたアトラクションを併設しているブースが増えていた。

『EDENSZERO』のPRブースではSF作品にちなみ、「重力回転ボール」とでも言うような乗り物に長蛇の列ができており、順序良くぐるぐる回されるのを楽しみに待っていた。

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(↑座席と体をベルトで固定して上下左右に回転しながらクイズに答えるというEDENS ZEROのイベント)


20年以上前からアニメが放送され、現在でも人気が健在な『CITY HUNTER』では冴羽獠(フランス名ではニッキー・ローソン)の愛車と撮影ができるアトラクションを購入者特典として開いていた。大人気作品『僕のヒーローアカデミア』のゲームとの隣接スペースのため、あっという間に大変な混雑になった。

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(↑『CAT’S EYE』とともに北条司先生の作品は国民的な人気がある『CITY HUNTER』はフランスで実写映画化されている。)


もっとも記憶に残ったのこともひとつとして、『NARUTO』を発売している出版社では、すでに『サムライ8  八丸伝』のプロモーションが始まっていたことだ。


2019年12月6日に第1巻の発売を告知するプロモーションビデオでは八丸が雄姿を見せ、ナルトと肩を組み、堂々たる“NARUTOの後継作品”を来場者に印象づけていた。

同時に『SAMURAI8 La Légende de HACHIMARU』のパイロット版の小冊子(第1話72ページ)を無料で大量に配布、リリースまでの準備に余念がないことを感じさせられた。

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(↑机の上に並んでいるのがパイロット版の小冊子。背後のスクリーンには『SAMURAI8』本作からのコマを使用した動画が投影されていた。)


こうした推し作品のラインアップはノベルティなどの販促グッズも投入されている。

そのため「書店ではなくJapan Expoでマンガを買うと特典がある」というお祭り気分をさらに盛り上げているのだ。

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(↑『東京卍リベンジャーズ』1冊を含めて3冊を購入するともらえるTシャツ。〈タケミっち〉にジャストミートな拳が入ったコマがプリントされている。非売品といいう言葉に弱い筆者はTシャツ欲しさにフランス語版である『Tokyo Revengeres』第1巻を買った。)

販売スタッフも来場者とカウンター越しに気軽に会話をし、「これが好きなら、こっちも気に入ると思うよ」など、商魂というよりも自分たちのオススメするマンガをぜひ読んでほしいというマンガファン同士の交流のように見えるのだった。



※本記事は「マンガ新聞」2019年08月20日の再掲載です。


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