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東洋経済さんの記事があまりにスカスカなので、マトモなツッコミいれてみました。

東洋経済ONLINE「フランスで「日本マンガの人気」再沸騰している訳」という記事がありました。
https://toyokeizai.net/articles/-/460243h

あれあれあれ?これ背景や認識がすっぽ抜けてるじゃないか!と感じまして、反論反証をすることにしました。以下、該当記事と比較しながらお読みいただければ幸いです。

再沸騰なんてしてない

日本マンガは2000年代に入り、前半は倍増ペースの売り上げを続け、2013、2014年のフランス全体の出版不況の影響で若干の落ち込みがあったものの2015年には不況前以上の右肩上がりを続けている、仏出版業界の花形ジャンルだ。(※1)今年になって急に再燃したものでは決してない。

コロナ禍でフランス国内の書店は閉業を余儀なくされたが、国内の全書店が一丸となり「click and collect」(※2)、つまり自宅でサイトから購入ボタンをワンクリックすれば、近所の書店から配達されるというインフラを設備、フランス国内の書店業界の経済を支えた。こうした巣篭もり需要があったことを見落としてはいけない。

マンガ購入は想定内

そして政府がコロナ経済対策として文化クーポンを18歳に配布(フランスでは選挙権は18歳から)、ちょうどその世代は自身にとっては高額なマンガやアメコミを購入するコア世代であり、即購入に充てられやすいことは想定内であった。マクロン政権が若年層の取り込みにアニメとマンガをあからさまに利用しているため、彼のマンガ・アニメに関する恣意的なツイートには数千単位で「選挙利用のくせに」というディスが連なっている。

バンド・デシネを「フランスの漫画」と呼ぶ勿かれ

ちなみにフランスにおける文字以外の本では、バンド・デシネ(該当記事中の「フランスの漫画」という表現は正しくない)30%、マンガとアメコミが年によって30%または40%のシェアをずっと取ってきており、マンガだけが爆発的にフランスを席巻しているというわけではない。

また永井豪先生はフランスにおける日本のアニメ・マンガのパイオニアであることはご存知の方も多いだろう。多くのロボットアニメが1970年代後半から通常の地上波で放送されていた。「UFOロボ グレンダイザー」(フランス語では「Goldorak」)も局の壁を超えて数度となく放映されていた。1980年代、天候の悪いバカンス期にちょうど放送されており、家で引きこもっていた子供から大人までが視聴し、一気に全国的な知名度と人気を博した、というのが国民的人気の一因といわれている。

グレンダイザーは現役タイトル

現在でも「Goldorak」はフランス人作家によってマンガ化されてはヒットしている現役タイトルだ。コロナ感染の爆発が治り、10月から平常営業にもどった書店でも、「Goldorak」の10月の刊行にむけて、現在、大型書店で大々的に宣伝している。

永井作品を支えてきた立役者として欠かせないのは、出版社ISAN MANGA(※3)だ。日本で版権の切れた過去の名作を立派な装丁やフルカラーを用いてリバイバル、フランス人の永井作品蔵書に貢献している。ISAN MANGAでは永井豪作品のほか寺沢武一先生の「COBRA」も売れ筋だ。

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仏アニメを説明するうえで”WAKANIM”の活躍は不可避

アニメはどうであろうか。近年では有料ストリーミングサービスで、Funimation傘下のWakanimがAniplexとのライセンス契約をした2015年頃からシェアを拡大しはじめ、現在では人気の新タイトル(『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』など)を配信している。世界的な傾向だが、海賊版を視聴される余地を徹底的になくすため、日本放送の翌日には完璧な翻訳字幕をつけて間髪おかずに公式を視聴者に届けている。そのため契約者は年々増加ということだ。

フィーリング原稿は誤解を招く

走り書きになってしまったが、そこそこウォッチングを続けて、渡仏して取材し、データを集めている立場としては、最近とくに増えてきているマンガ・アニメについてフィーリングで書かれた原稿に突っ込みを入れたくなっていて、今回、東洋経済さんの記事にソフトな反証をしてみました。

よかったら読んでみてください私の記事。
https://note.com/nishinoyukiko/n/n476f0aedd62f
http://previous.mediajuku.com/?p=2579

注釈
※1 https://www.journaldujapon.com/2020/04/19/bilan-manga-2019-ventes-en-france-lextraordinaire-ascension/
※2 https://www.francetvinfo.fr/culture/livres/confinement-les-librairies-se-lancent-dans-le-click-and-collect-pour-sauver-leur-activite_4166595.html
※3 https://isan-manga.com/

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