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祝辞 feat.グレーな感情

前職の同期が再就職先が決まったと連絡をくれた。

彼女は3歳年下。
切れ長の目に白い肌が私とは対照的で、その綺麗な容姿に憧れていた。
なかなかハードな業界で、自分の無力さに涙することも度々あったが、そんな時はいつだって同期の存在が私を助けた。
同期、妹、友人、、戦友というべき仲間だった。

お互いその仕事は好きで憧れて始めたが、ハードな上にそれはそれは安い給料。
そして俗にいう「下請け」会社だったため、どれだけ経験を積んで「ベテラン」になることはできても、「上に行く」ことはできなかった。

そんなこんなで私たちは大好きな現場を離れた。

解放感と居場所を手放した寂しさを隠しながら、お互い別業種へ就職した。

私は刺激はないが然程ストレスにもならない穏やかな職場に勤め、今も尚、刺激がないなどと戯言を言いながら、働いている。
一方、彼女は再就職したはいいが、不慣れな業種に戸惑い、それと同時にあの業界への未練を募らせた。

あの偉そうにはびこっていた感染病も、だんだんと世の中の隅に追いやられつつあるこのタイミングで、その業界は盛り返してきた。そして、雇用を拡大しようとしていた。

彼女は次に就いた職を離れ、かつて私たちが必死にもがいていたあの業界に再就職をした。
「下請け」ではなく、「私たちに仕事を与えていた側」として。

嬉しかった。
彼女がなんだかんだあの世界が好きで、、と微笑みながら報告してくれたことが、素直に嬉しかった。
彼女のおかげで夢の続きが見られる気がして、嬉しかった。
99%は。

私は高卒のため「私たちに仕事を与えていた側」に行くことは出来ない。
受験資格すらないのだ。

だから、うらやましかった。歯がゆかった。
これが残りの1%。

99%の嬉しさ、喜び、尊敬と誇り
1%のうらやましさとやるせなさ

置かれた場所で咲くことも、咲きたい場所を探すことも、
どちらも眩しくて儚い。

きっと誰しもが感じることのあるグレーな感情を抱き、生きること。
人間って愛おしい。

追伸
これを読むことはないとわかっていながら
「あさひ おめでとう。がんばれ。」  戦友より

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