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「バケモンの涙」を読んだ

「バケモンの涙」  歌川たいじ  光文社 を読んだ。

日本は未曾有の食糧難に襲われていた。橘トシ子19歳。大阪の旧家のいとはんは、国民学校の教師となるが、栄養不足で命を落とす子どもたちを何とか助けたいと願う中、少ない燃料で大量の穀物を食べられるポン菓子の存在を知る。一念発起、ポン菓子製造機を作ろうと使命感に燃え、製鉄所のある北九州に女ひとり乗り込み、工場を立ち上げるために奮闘するトシ子。子どもたちを飢えから救い、復員した人々にポン菓子売りの職を与えた、実在の女性の苦難を乗り越えていく姿に迫る、感動の物語。
(ブックスより)

日本のポン菓子の背景が、こんなにも切なく、一人の女性の一念からなっていたとは。
この本に出会えて良かったと思う。

まずね、戦争の悲惨さが、なんだろう…変な言い方だが、自然に入ってくるというか…
全然、声高に戦争の悲惨さを切り取って描写してるわけではないんだよね。
ただ、そこにあった情景(トシ子さんが見た)を、文章を通して見ているだけなんだけど、たった、その一部だけで、「本当に戦争は嫌だ」と思わされるんだよね。
そんなことが、来る日も来る日も続くなんてね。

トシ子さんは19歳で、いろいろな人の助力はあったとはいえ、一人で大阪から北九州へ行くんだよね。
当時の距離感は、今とは比べ物にならないだろうに、ほんと、その行動力はすごい。その行動力を生む一念がすごいんだな。

この小説は、事実をもとに作りあげられているそうだが、それでも、随所に作者のメッセージも感じる。まぁ、トシ子さんの言葉かもしれないけど。

「自分らしさは、探すものではない。見つけるものでもない。決めるものだ。」
「何が間違っているのか知ろうともしないで、上に唯々諾々と従う悲劇」
なんかは、心にズシリとくる。

とりあえず、朝ドラで見てみたい。


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