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写真展 「点滅」を終えて

2020年6月22日に天草市本渡にオープンした「本屋と活版印刷所の屋根裏」という場所で私、錦戸俊康の写真展「点滅」を開催させていただいた。まずはお店の紹介から始めさせていただく。こちらのお店は『古書店+喫茶店+ギャラリー』とどれも私の趣向と心臓に直球で深く突き刺さる内容の組み合わせなのである。

「本屋と活版印刷所の屋根裏」の店主は6年前に埼玉県所沢市より奥さまと移住された美術家の森本大祐さん(以下ダイスケさん)。ダイスケさんは3月まで天草の老舗窯元に勤務されていたが一念発起し退職してこちらの店舗をスタートさせた。1階には2019年4月にスタートした「本屋と活版印刷所」がある(またこちらのお店の記事も書きたいと常々思っている)。店内の専門的な(電気・水道など)工事以外は全てひとりで作り上げた強者で、私とは「アマクサローネ」というイベントの実行委員として一緒に活動している間柄だ。スタイル抜群の男前で私の被写体のひとりでもある。今後はダイスケさんが作る「屋根裏芸術」という雑貨も展示販売されるそうだ。

青一色に染まった店内は天草なので「海」のイメージだと思われがちだが、実は「夜」が主題であると本人談。案内に、営業時間は午前10時より寝るまでと記載してある。店主のダイスケさんが寝るまでの営業なので昼間と夜間の雰囲気をそれぞれ楽しめる。どちらの時間帯も落ち着けるのでいつ行ってもいい時間が過ごせること間違いなし。現在のところは0時にクローズしているとのこと。

ホットコーヒーと水出しアイスコーヒーを注文できるので店内の気になる古書達とともにいくらでも長居できる。ダイスケさん自身もお客さんにはゆっくり寛いで長居してもらいたいそうだ。まだまだ紹介するべきことは多々あるが写真展「点滅」について書き始めたいと思う。

ダイスケさんがこちらの店舗の内装工事を始めてから少し経った頃に、素晴らしい空間ができるに違いないと確信した。連続的に、出来れば月に一度のペースで展示をしたい希望を伝えると快諾していただき、展示のイメージを掴む為にできるだけ完成前の店舗に通わせてもらった。

店内の壁面はコンクリートなのでなるべく壁を傷つけない様にする為、コンクリートパネルを青で塗り、取り外しのできる展示用の壁を作ることにした。塗料の調合をダイスケさんに教えていただき、梅雨時の貴重な晴れの日に色塗りを強行したのだが、気温がとても高い日だったので久しぶりに熱中症目前までいってしまった。何本の水を飲んだのか全く覚えていない。ツナギを着て作業に没頭していると、博多や東京で仲間達と作った自主ギャラリーを思い出してしまう。ここ天草で、またしても壁を塗っている私がいた。

そんなこんなでヘロヘロになりながらも壁面は完成。壁を塗って貼るだけでこんなにへばっていてどうするのか。店内をひとりでやり切ったダイスケさんに感服である。毎月展示をするので今後は改良していくのだろうが、当面の間はこの壁を活用していく。意図していなかったが合わせた木目がなんとなく繋がって見えたのは嬉しい誤算だった。

あれこれバタバタと準備に追われたが7月1日より錦戸俊康写真展「点滅」がスタート。今までは沢山刷ったものの全てを送ることができずに余らせていたDMは極力減らすことにした。

初日からちらほらとお客さんが来てくださる。遠方からお花が届き吃驚した。オープン前から気にされていた方も多く嬉しい限り。

気になっていた写真の専門書がとても面白い。在廊中にお客さんがいない時間も充実させてくれるお店だ。

店内を縦横無尽に闊歩する4匹の猫達はとても大人しく懐っこい。『古書店+喫茶店+ギャラリー』に加えて猫カフェ的要素もあり盤石さを感じてしまう。それにしても素晴らしい雰囲気の床である。

理想的な作業机でダイスケさんはいつも何かしらを制作している。なんでも手作り。日々、店に隙のない気になる備品がどんどん増えていく。

今回の展示期間は二週間。ずっと在廊していられはしないが、お店のある本渡に用事がある際は少しでも立ち寄ることにしていた。短い時間の在廊を知らせる投稿に反応してくださった方々ともお会いできてとても良かった。

こんなご時世なので不特定の方を招くパーティーを開くこともできないが、1階&2階の関係者さんらと餃子の集いを開いた。何を思ったのかひとりで餃子を300個作ってしまった、餃子を包む時間は中々に修業的な面を感じ後悔もあったが好評だったので良しとしよう。

楽しい宴は夜深く続き、最後はダイスケさんと店内の床に転がって寝ていたそうだ。写真について聞かれることも多く、沢山の話ができてとても嬉しかった。

最初の展示は11枚にしようと決めていた。ある男との出会いから素数であることにとても執心している自分がいる。想定していなかったがプリントや出版している本が意外と思える枚数・冊数を買ってもらえたことに我がことながら驚いている。今回の展示に使用したフレームは北海道旭川の写真家・山田博之氏から受け継いだもの。こちらのフレームは非売品である。

久しぶりの再会や新たな出会いに溢れていた展示だった。写真を始めてから沢山展示をしたが、改めて自分達で開いた写真展は面白い出会いのきっかけになることが多いと感じる。

片隅に置いていたノートには嬉しい感想を書いてくださる方々も多く、特に17歳の高校生からの感想がとても響いた。高校まで天草在住だった私はこういうお店にやって来る人々や空間、そして文化に憧れていたことを思い出す。もしかすると、当時にもこういう場所はあったのかもしれない。だが、あの頃の私は知ることはなかった。高校生の私にとって遠い存在だった「写真」や「芸術」を今の天草に住む若い人達にも見てもらいたいという勝手な願望も今回とこれからの展示にも込めている。

あっという間の二週間だった。昨年まで活動していた「GRAF Publishers」を脱退し、ただ日々を撮ることしかしていなかった私に、また活動の場を与えてくれたダイスケさんと「本屋と活版印刷所の屋根裏」に感謝するばかりだ。言うだけは簡単だが、これからここ日本の西端にある天草、この空間で毎月発表していく。信じられない災禍と制約の多い時世ではあるが、自分なりに動いていこう、情熱を注ごうとまた強く心に火が点いた。

ご来場くださった皆々様、遠く近くよりお祝いの品々をお贈りくださった皆々様ありがとうございます。また来月も写真展を開催させていただきます。

【次回写真展のお知らせ】

錦戸俊康 写真展
「当然」
会期:2020.8.19水~8.26水  入場無料
開場:午前10時~寝るまで
会場:本屋と活版印刷所の屋根裏
住所:863-0023
熊本県天草市中央新町19-1  本屋と活版印刷所 2F ※建物裏に駐車場あり

6月22日にオープンした古書店「本屋と活版印刷所の屋根裏」にて開催する錦戸俊康写真展の第二弾となります。ぜひご高覧ください。

在廊日は錦戸のSNSでお知らせいたします。こちらの古書店さんではホット・アイスコーヒーが注文できます。
@noyaneurahttps://m.facebook.com/noyaneura/http://booksandletterpress.comhttps://www.instagram.com/nishikidotoshiyasu/

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