注目すべきキーワード「イネーブリング」とは(CEマトリックスのご紹介)

 最近、この言葉をよく見かけるようになった。もともと環境問題に関する途上国支援の世界では長いこと使われて来た概念だが、「できるようにする」と言う意味だ。主に知識やスキルが足りずに何かの仕事ができない場合、それを補うことによってできるようにしてあげること、と言うと判りやすいだろうか。たとえば、とある後発途上国が有害化学物質の取り扱いに関する法規制をまだ持っていないと仮定しよう。仮にそれが国際条約で特別な取り扱いを求められるような展開になった場合、先進国や国連の技術協力によってそれを可能にする支援が行われる。この活動をenabling activitiesと言ったりする。

 横文字では慣れ親しんだ表現なのだが、それがカタカナ語として使われるようになったのはごく最近のことだと思う。心理学やセラピーの世界では、支援者が手を貸すことで当事者が状況を改善するプロセスを指すときに使われたりしている。アルコール依存症からの脱却を目指す当事者に対して、支援者が伴走することで成功をイネ―ブリングする、みたいな言い方だ。

 SDGsの実践プロセスにも、さまざまな形でイネ―ブリングを試みる動きが盛んだ。一頃は入門書ばかりだったSDGsについての出版物も、実践を志向するものが増えてきている。最も数が多いのはカードゲームの類だろう。次いでさまざまなフォーマットや参考書、ワークショップの手引書なんかもあったりする。

 私はサーキュラーエコノミーについて、よく「SDGsを実現するためのツールとして好適」という説明をする。だったらサーキュラーエコノミーをカンタンに実践できるハウツーがあるのか、と言われると実はこれが難しい。

 エレン・マッカーサー財団が示している定義のように、とあるビジネスモデルがサーキュラーエコノミーかどうかを診るための定性的な指標はあるにはあるのだが、そもそもサーキュラーエコノミーの範囲がリサイクルからサブスクまでものすごく広いこと、それらのうち、一つのビジネスが完璧なサーキュラーエコノミーを実現していると言える事例は世界的にもまだそれほど多くないこと(大半が、いわば発展途上にある)など、可視化すら容易ではないことがその大きな原因だ。

 そうは言っても、このままだと普及すらおぼつかない状況であることに間違いはないので、何か対策が必要だろうと思っている。たとえばビジネスモデルの別は問わずにサーキュラーエコノミー化することをイネ―ブリングできる何かがあると大変都合が良いのではないだろうか。

そう思ってデザインしたのがこんなツールだ。

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 タテの列には循環、IT、サービス化を取り、ヨコの行には強み・弱み・機会・脅威を取って、自社が持つ商品やサービス、能力や経験値などを書き込んで行く。そうすることで厚みのある部分と手が回っていない部分が炙り出される、という仕掛けだ。仮称だが、「CEマトリックス」と呼んでいる。

 世の中で、サーキュラーエコノミーを実践してみたいという会社があるなら、ぜひこのマトリックスを試してほしい。浮かび上がった自社の姿から、次なる課題が見えてくるはずだ。詳しいお問い合わせはこの記事へのコメントをいただければ対応したいと思う。

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