レジ袋の憂鬱

先日テレビのニュース番組で、川崎の高校生が「魚が食べないレジ袋」を開発した、というストーリーが紹介されていた。高校生の取り組みとしては出色だと思うし、環境についての問題意識をそこまで高めたという点において十分評価に値する。同じ話がネットでも流れていた。https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/6101

ニュース番組によると、魚が忌避する物質を混ぜたプラスチック袋を作り、それを細かく砕いてエサと混ぜて魚に与えたところ、薬剤の濃度がそれほど高くなくても魚はそれを吐き出したのだとか。映像でも流れていたので、実験的な成果はあったのだろうと思う。

仮にこのようなポリ袋が市場に流通したとして、どのような影響があるのか。誰でも分かることは、この袋が市場全体に広く深く行き渡るという展開が考えにくいことだ。さらに、魚が嫌がる成分を含んでいれば海に捨てて良いのか?という議論にはどう答えるのか?魚は食べないことが実験で確かめられたとして、他の海洋生物はどうなのか?魚に食べられず海洋中を浮遊するポリ袋は他に害を及ぼさないのか?

懸念はまだある。廃プラスチックの処理工程を考えたとき、今回使われた忌避剤(デナトニウムという化学物質)は、ポリエチレンやポリプロピレンから見れば明らかに異質な混入成分だ。ただでさえ再生が難しいと言われるプラスチックの中にそのような混入成分が増えることは、ほぼ同時に再生利用への技術的・経済的なハードルを上げることになる。

流石に高校生の取り組みにここまで期待するのは酷だと思う。だとすれば、社会のどこかにこの成果をさらに追いかけるための受け皿はないのだろうか。着想は悪くないとして、まだ明らかな課題を抱えたその種を、社会的に洗いなおすような取り組みには確かな意義がある。

今のところ、廃プラスチックと環境問題を考えたとき、このような取り組みは全くと言って良いほど全体最適にはつながらないのだ。残念ながら、現段階ではこの取り組みには大きな瑕疵があると言わざるを得ない。いや、瑕疵があるのは取り組みではなく、日本社会の方かもしれないのだが。

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