普通の人に説明しておくことの意味とは

 コロナ禍の影響もあって瞬く間に広がったオンライン会議システムを通じて、まだ多くはないのですが、最近ごく普通の人たちがSDGsやサーキュラーエコノミーに興味を持って開催する勉強会などに参加する機会がぽつぽつと出てきました。

 オンラインで募集された参加者は、学生さんから社会人まで、バックグラウンドもさまざまなら年齢層もばらついているのですが、テーマがテーマだけにどうしても知見に限りがあり、誰かが書籍や他のセミナーから仕入れてきたと思しき知識を共有する形で進められる議論も、業界では当たり前の知識からだいぶ遠いところで足踏みしていたりします。

 専門家が講師役を引き受けている場合はまだしも、そうでないとどうしても堂々巡りに終始して消化不良になる確率が高いように見受けます。

 いわゆる業界の方々に、こういう会議でお目にかかることはほとんどないのですが、もしも適うことならそういう機会にも進んで参加して、実情を直接お話しいただくのが良いのです。それは何も社会のためのみならず、最終的には回りまわって会社や業界のためにもなるからで、インターネットのおかげもあって世の中はどんどんそういう流れになってきているという点を今日は共有したいと思います。いわゆるデータマイニングと言われる手法を使うことで、SNS上にはどんな言葉が飛び交っているか?を継続的に観察できるようになってきているのです。

 俗にいう「世間の評判」みたいなものについて、インターネット以前はせいぜいマスメディアによる世論調査くらいしか計測ツールがありませんでした。今でもテレビや新聞は、これ見よがしに政権支持率などの数字を挙げて世論調査を報道しますが、SNSで飛び交うコトバのデータマイニングに比べると、頻度や質において大きく立ち遅れていると言わざるを得ません。なにせ既存の世論調査は決まった選択肢の質問しかできないので、新しい考えや新しいコンセプトを拾うことができないわけです。既存メディアの役割と言えば、せいぜいインターネットを使わない高齢者の意見もカバーできる、というくらいしかないのです。

 その流れにあって、たとえばサーキュラーエコノミーが注目されているとすると、当然それに関わるつぶやきや発言の頻度が上がります。そうするとAIがSNSで観察される新しい流れとして関係する単語や物事についての評価をピックアップします。それを注意深く見ている人たちにとってはその情報こそが世の中の変化を示すものだったりするわけです。具体的にはシンクタンクや金融関係のアナリストなどが、そういう最先端の情報にお金を払って世の中の変化を観察しています。その評価が、たとえばESG金融に関する政策に反映されたりするわけです。

 世の中の機関投資家と言われる団体が動かしているおカネは、もとはと言えば普通の人たちが預けた年金や生命保険の掛け金だったりします。そういう投資家にとって、運用先として望ましいのは、世論の関心が向いていたり、世論に支持される業界や分野であることはお分かりいただけると思いますが、サーキュラーエコノミー業界については残念ながら必ずしもプラスの評価のみが確立されているというわけではないのが実態です。

 令和の世の中になってもなお、忘れたころに産廃の違法投棄や廃棄物置き場で発生する火事のニュースが流れたりします。そういう業界であることを全否定するのは難しいかもしれませんが、リサイクルや有害物質管理に関心のある一般の方々に、第一者として直接説明する機会があるのなら、日頃のお考えや社会に対する貢献の中身などについて直接理解を得る良い機会ではあるわけです。そこを通じて疑問の解消に努めることにより、努力が積もり積もって最終的にはSNS上で良い評価を獲得できるのだとしたら、積極的なオンライン対話の取り組みも、やってみる価値がありそうな気がしませんか?

 自らの評判には自ら責任を持つ、業界としての矜持はこんなところでも表現できるのではないでしょうか。どうあがいても、コロナ禍の影響は後しばらく続きます。他方で環境問題への意識は日本国内でも急速に高まりつつあります。好機を掴むなら今、まさに今なのです。

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