経済が伸びない世の中で

 世界の人口ピラミッドを眺めていて、ごく最近になって大きな変化の予兆が現れていることに気が付いた。アジアは言うまでもないが、人口爆発が言われているアフリカでも、実は新生児の数が頭打ちになる傾向が出始めていて、長期で見れば全体的に世界の人口が増え止まりつつあるのだ。

https://www.populationpyramid.net/ja/%E4%B8%96%E7%95%8C/2020/

 人口動態は、当たらないと言われる未来予想の中で唯一かなり精度の高い予測が可能な分野だと言う。大雑把に言って2060年くらいを境目に、世界の人口は増えなくなり始める。

 人口が増えなくなれば、もしかしてCO2排出量も減るのではないか?という見方があるとしたらそれはかなり甘いと言わざるを得ない。たとえ人口爆発が緩和されたとしても、意図的な制御を働かせない限り、消費型経済はアフリカにも確実に浸透する。SDGsもサーキュラーエコノミーも、ある意味で意図的な制御にあたる。何とかして持続可能性を高めようという考えが動機になっている。

 とはいえ、人口が増えないというファクターが持つ意味はかなり大きいと言わざるを得ない。カネを持っている先進国が持続可能性追求に舵を切れば、カネのない途上国は結局のところ追随せざるを得ないのだが、人口増のパワーが続く限り、高効率だろうが脱炭素だろうが途上国は資源需要を増やさざるを得ないし、先進国で技術を持つ企業などには対応するところが出てくる。平たく言うと、経済が伸びている限り需要は続くし、需要があるところに供給は生まれるので、人口増が続く限り資源消費型経済を転換させるのは難しい、ということだ。

 それが長期的には緩和されるということなら、話はだいぶ変わってくる。人口停滞からさらに進んで人口減少へと変化するトレンドに合わせて資源循環の促進による高効率化を図ることができたなら、たとえば温室効果ガスの削減にはかなり力強いベクトルが働く、ということになるのではないだろうか?

 アフリカで人口が頭打ちになる。依然として資源需要は高まるが、他方で先進国からは資源循環への対応を問いかけられる。ソフトローやデファクトスタンダードがそうなれば、アフリカ側から意図的に新たな鉱山開発や鉱物資源に依存した素材産業の話は出て来にくくなるはずだ。そうだとすると落ち着く先は資源循環でしかありえない。

 石油・ガスの世界も同様に、変化に対応せざるを得なくなる。すでに今年、アメリカの証券取引所では、エクソンモービルがダウ平均の子弟銘柄から外された。これこそが変化の方向性を如実に物語っている。

 経済が伸びない世界の中で、それでも経済は次のヒーローを求めるものらしい。もしかしてそれが持続可能性で、株価はそれに従って高くなるというのなら、踊らない手はなさそうだ。狂乱の文化を蔑む人にとっては悪夢的かもしれないが、結局そんなレベルでしか、大きなおカネは動かないのだ。だったら踊ってカネを回すことで、SDGsやサーキュラーエコノミーを花咲かせれば良い。最近はそんな風に考えることが多くなったと思う。

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