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第弐話:ガンオタとの出会い

前回は私が非オタとして形成されるその一部始終を書いた。

さて、今日はいよいよ結婚までの縁に至ったガンオタの登場だ。
(ガンオタオットの詳細はこちらからご覧ください↓)

「僕、ハゲてるんですよね」

ガンオタとは2014年1月に、私が大学生の頃に参加していた他大学のサークル(ちなみに軽音サークル)の先輩の紹介で出会った。
先輩は独立して様々なビジネスを展開していて、今でも多方面で活躍している。

出会いのきっかけとなった場所も、その先輩の新事業立ち上げを祝う仲間内のパーティーで、ガンオタは先輩の知り合いだったらしくその場に招待されていた。

ガンオタは襟付きのシャツにジャケットを羽織り、小綺麗な格好をしていた。そして頭にはおしゃれなハットをかぶっていたのでよく目立っていた。

複数人で話している時、確か彼もその場にいたので、私は「そのハット素敵ですね」などと声をかけたのだと思う。

すると彼は、パッとハットを取り
「僕、ハゲてるんですよね。」とツルツルピカピカに光っている頭を見せてきた。

以前私が日頃更新しているブログにも書かせてもらったが、ツルツルピカピカの頭と向かい合って食事をしていると、マジで蛍光灯の光に頭が反射する。それくらいキレイなピッカピカのハゲなのだ。

話を聞くと、30代後半の頃に多発性円形脱毛症を発症し、ある日を境にどんどん髪の毛が抜けてしまったのだそう。

最初の頃こそ皮膚科に通ってステロイドを処方してもらったのだが、飲めど待てども一向に毛が復活する気配はない。
そこでガンオタは薬を服用するのをやめ、頭をツルツルに剃り上げ、堂々と「スキンヘッドの人」として生きていくことを決意したとのことだった。(このように、ハゲの自分を受け入れて堂々と生きることについても、またどこかで記事にしておきたいと思う。)

まだ「多様性」という言葉も今のように一般化していなかった2014年だったが、彼は脱毛症のことを全く隠すことなく、堂々と「ハゲ」を宣告してきた。それに潔さを感じ(というかめちゃくちゃ印象的だった)そのパーティが終わった後も、ハゲの彼が気になってしまった。

そこで後日その先輩にお願いして、私は正式にガンオタを紹介してもらうことになり無事(?)お付き合いをスタートすることにした。

ガンオタのハゲ

ガンオタ、ガンオタと連呼しているが、この時点ではこの人が「生粋のガンオタ」ということを露知らず、今では信じられないが一緒にディズニーランドに遊びに行っていた。私は今でもディズニーランドは好きだけれど、オットと一緒に行こうとは今では到底思えない。今では一緒にディズニーに行くよりも、コミケに行く方がいいと思える。

さて、そんなこんなである日ガンオタの家に遊びにいくことになった。
ガンオタは私を自宅の最寄駅まで迎えにきたのだが、
「ごめん、あまり片付いていなくて・・・」と先に謝ってきた。

そうは言っても、その日もガンオタは小綺麗な格好をしていた。きっと「あまり片付いていない」のレベルが、私の想像しているソレとは違うのだろう、と思いながら家に招いてもらった。

がしかし、部屋に入ると本当に全く片付いていなかった。(一応持ち家だったので)部屋こそ広いものの、漫画や雑誌が床から積み上げにされており、洗濯済みの服や下着は部屋の1ヶ所の床にまとめて投げ捨てられていてタンスは機能していなかった。この住環境からあの小綺麗な格好が一体どうやって出来上がるのだろう。

そして白地に茶色のブチ柄が入った猫が1匹いた。(後にこの猫は私にとってかけがえのない存在になるのだが)ちなみに冷蔵庫には、猫のおやつのかつおぶしくらいしか入っていなかった。

部屋の汚さの次に、私は壁を見た。
壁には「機動戦士ガンダム」のポスター、壁に飾る以外にもディスプレイの方法があるだろうと感じるガンダムのグッズが、壁中に飾られていた。(ビームサーベルのお箸とかがあった)

そして本棚にはゴルゴ13の全巻とガンダムやキャプテンハーロックなどの漫画がぎっしり並べられており、それに加えてガンダムのフィギアが飾ってあった。本棚は全く掃除をされていない様子で、本棚の漫画とフィギアには埃と猫の毛がこんもりと積もっていた。

「これって、ガンダムってやつのロボット・・・?」と私は一応聞いてみた。
するとハゲは「ロボットじゃないよ、モビルスーツっていうの^^♪」とご丁寧に解説までしようとしてきた。

モビルスーツ。嗚呼、聞いたことがある。
それは私が大学生の頃アルバイトをしていた電気量販店で、同じフロアにいた社員さんがケータイの待ち受け画面にしていたアレだ。レジのバックヤードに飾っていたアレだ。私に一番縁のないワードだ。

「ガンダム、好きなんだ?」と私は尋ねた。

するとハゲは
「好き、というか人生そのものだよ^^♪」と張り切って答えてきた。

小綺麗な彼は「ハゲのガンオタ」だったのである。

これはほんの一部

ガンオタはいい人

「また遊びに来てね^^♪」とガンオタは言ってくれたが、あの住環境に私はとても行く気になれなかったのは本当に正直な感想である。趣味嗜好はともかく、部屋が汚すぎる。というか、この時点で「この人無理かも」と思ってもおかしくはないし、事実そう思った。

がしかし、部屋が汚いことを除けばガンオタは一緒に過ごしても苦痛ではなかった。自身はガンオタかもしれないが、それを私に押し付けようとはしないし、私が毎年出かけてるフジロックフェスティバルに行く時も「いってらっしゃい、気をつけてね^^♪」の一言のみで送り出してくれる。

人の趣味を悪く言わないし、自分の趣味を他人に押し付けない、人の行動をいちいち把握しない、その代わり人のご機嫌を取りに行くような行動もしない、自分を趣味を隠すこともしない、高価なクルマやブランド品には興味なく真面目にコツコツ働く、家でイライラすることなく自分で自分の機嫌を取れる、そういう人だ。

そして最初に遊びに行った時こそ冷蔵庫には猫おやつしか入っていなかったが、私よりも料理が上手かった。そしてよく食べ、よく飲んだ。

人の性格や行動を赤の他人が変えることはできないけれど、赤の他人は部屋を美しく掃除することならできる。

確かに、部屋はキレイな方がいいし(注意:女子はマストで部屋がキレイな方がいいが)ガンダムよりも旅行とか車とかキャンプとか、そういう趣味の方が万人の女性に刺さるだろう。でもそんな趣味が刺さるのも顔面の良さが持つ効果効能も、最初の3ヶ月までだと個人的には思っている。

それよりも、人の趣味を悪く言ったり家でグチグチしたり、例え給料が良かろうがつまらなく仕事に出かけたり、そんな行動をしないことの方が私にとっては心地よかった(あくまでも個人の感想)。

そんな感じで、特別盛り上がることもなかったが1年が過ぎ、私は一人暮らしのマンションの更新タイミングに合わせて、ガンオタの家に引越して共に住むことを決めたのである。私が「機動戦士ガンダム」を鑑賞する7年前の話だ。

次回予告

引越しに合わせてハゲ宅を整理していると、私にとっては全くの未知の世界のモノがゴロゴロ発掘された。そして迎えた結婚式の準備で、オタクVS非オタの戦いの火蓋が切って落とされるのである。

使用写真:Gilang Prihardono / Shutterstock.com

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