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「チームで戦う」と語るチームほど「チームで戦えてない」問題。

最近サッカーやNBAを観ていて考えるのが「連携」である。チームで戦うスポーツは1人の力だけでは到底勝つことは出来ないので、選手同士連携してプレーをせざるを得ない。

映像で観るようなサッカーやNBAのような試合で、選手同士の連携は当然練習する。どの選手がいつ、どこに、どう動いて、どんなプレーをするのか。相手の状況に応じてどんなプレーを選択するのか。選択肢は無数にあるが、状況に応じて適切な選択が出来るようにNBAの選手であっても繰り返しトレーニングしていく。トレーニングをする時間がなければ、映像を観たり、手順が書かれている本を読んで読む。頭に入れただけだと実行できないから、身体がスムーズに動くように繰り返しトレーニングしていく。連携は地味なトレーニングの繰り返しで初めて成立する。

チームで連携してプレーできているチームは、どの選手がいつ、どこに、どう動いて、どんなプレーをするのかが、複数の選手同士でずれなくスムーズに機能しているように見える。スムーズに連携出来ているチームの動きは美しい。

一方でひとりひとりは頑張っているが、チームでは連携してプレー出来ていないチームの試合を観るときもある。連携出来ていないのは、「いつ」「誰が」「どこに」「何を」「なぜ」「どのように」という「5W1H」がチームで共有されていないと言うことでもある。「5W1H」という言葉で分かった人もいるかもしれないが、スポーツの連携は「プレーを通じたコミュニケーション」が上手くいっているかどうかを現したものなのだ。だから、連携がないチームというのは、選手に問題もあるが、監督やスタッフも含めたコミュニケーションに問題があることが多い。

監督が「5W1H」を伝えられないと選手は連携して動けないし、選手が表現できる「5W1H」のレベルが低いと、プレーで表現できるコミュニケーションの量も質も限られる。監督は選手が表現できるコミュニケーションの能力を把握し、相手を踏まえて、どんな方法だと上手くいくのかを考える。もちろん選手も考える。コミュニケーションとは相手がいることで成立するもの。相手のことを考えていない「自分たちのサッカー」と呼ばれるサッカーは、コミュニケーションとしては一方通行なのだ。そして、そんな自分たちのサッカーが相手を上回れないならそれは痛いだけだ。

最近ヨーロッパ2部のサッカーチームの試合映像を観ることがあったのだが、観てびっくりした。チームとしてどんなサッカーをしたいのか明確に意図があり、選手がチームのコンセプトを理解し、監督が求めるプレーをチーム全員で連携して実現しようとトライしていたからだ。

もちろんヨーロッパ2部なのでミスもある。ただミスする理由は、個人のスキルが足りないからであって、チームが意図している組織にミスがあるわけではない。組織はしっかり構築されていて、選手はしっかり構築された組織の上で自分の個性を表現しようとしている。これが「チームで戦う」ということなんだなと改めて思い知った。

ちなみに「チームで戦う」「チームで勝つ」という人が多いチームほど、不思議とチームで連携してプレー出来ていないことが多い。これはNBAでも同様で、ブルックリン・ネッツのジャック・ヴォーンヘッドコーチはチームの連携が上手くいかなかった時期に盛んに「Group」という言葉を繰り返していた。

連携が上手く言っているチームは、チームで戦うとは言わない。自分がやるべきことをしっかりやれば、仲間とは連携できる。連携する仕組みは監督やコーチの仕事。実行するのは選手の仕事。チームで戦うためにはそれぞれに求められる仕事をきっちりやる。連携するベースとなる役割分担が出来ていないというチームほど、出来ていないから「チームで戦う」と口にする。そう言い聞かせないと、自分がチームから離れていくからだろう。

あと、「チームで戦う」と口にする人は、個人の責任から逃げていることが多い。これは会社員でもよくあることで、「会社が悪い」「上司が悪い」と口にする人は大抵自分がやるべきことをやっていないというケースが多い。人に文句を言う前に、まずは自分がやることをやる。口にしていいのはそれからだ。

つくづく、スポーツにおける「連携」とは「5W1H」をベースとしたコミュニケーションであり、コミュニケーションを円滑にするには、監督やスタッフが仕組みを作り、選手は実行するという役割分担が明確になっていることが必要なのだなと。


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