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佐藤寿人が名古屋グランパスで得点が増えない3つの理由

18試合が終わった時点で、9試合に出場し1得点。名古屋グランパスのキャプテンを務める佐藤寿人の現時点での成績だ。J1通算161得点、J2通算51得点を挙げるストライカーの成績としては、寂しい成績だ。佐藤がシーズン前に思い描いていたのは、得点王争いをしながら、J1昇格を目指して戦う自分自身の姿だったと思う。

しかし、現実は違った。開幕直後はボールを上手く運べないので、佐藤はボールを受ける場所をDFやMFに近い場所に移し、ボールを運ぶプレーをサポートし続けた。ようやく得点を挙げた第6節のロアッソ熊本戦で怪我をして離脱。佐藤が怪我をしている間、チームは試行錯誤を続けながらも、少しずつ順位を上げていった。ようやく怪我から復帰し、スタメンに戻った第13節の大分トリニータ線は1-4で敗戦。ボールを上手く運べず、単純なミスから失点を重ねたチームを助ける事は出来ずに途中交代。その後、第15節まで3試合連続出場機会なし。第16節からも途中出場が続いている。

途中出場している佐藤の動きを観ていると、コンディションが悪いわけではない。相手の背後を取る動き、相手の前に入る動きは、相変わらずタイミング、スピード共に素晴らしい。動きの質が著しく落ちているわけではない事は、プレーを観ていればよく分かる。しかし、得点数は伸びない。J1通算161得点を挙げた実績をもつストライカーが、なぜJ2で結果を残せていないのか。僕は3つの理由を考えた。

佐藤が望むタイミングでパスが出てこない

1つ目は、佐藤が望むタイミングでパスが出てこない事だ。佐藤がサンフレッチェ広島に在籍していた頃、佐藤はパスを出す選手と緻密にコミュニケーションをとり、パスを出すタイミングを綿密にあわせて、自分が得点を奪うためのパスを出してもらえるようにしていた。しかし、今の名古屋グランパスは佐藤が得点を奪うためにチームが作られていない。したがって、佐藤が欲しいタイミングで、欲しいパスが出てこないのだ。

そして、佐藤の動き出しが早くて、パスを出す選手が佐藤の動きにあわせられていない事も、佐藤が得点を奪えていない要因だ。第18節の東京ヴェルディ戦で、解説を務めていた水沼貴史さんは再三佐藤の動き出しの上手さを賞賛していたが、佐藤が動き出したタイミングにあわせたパスは1本も出てこなかった。佐藤の動きを見れていないし、タイミングをあわせられていないし、佐藤の動きに合わせてパスを出せる選手もいない。名古屋グランパスの選手たちは、開幕直後から急速に成長しているが、佐藤の意図を汲み取ってプレー出来る選手はまだいない。これが現実なのだ。

風間監督の下で一番成長したのはシモビッチ

2つ目は、シモビッチの成長だ。「佐藤が得点を奪うためにチームが作られていない」と書いたが、では誰が得点を奪うためにチームを作っているかというと、それはシモビッチだ。僕は開幕から18試合観続けて、一番上手くなった選手はシモビッチではないかと思っている。開幕当初のシモビッチは、動く範囲も狭く、ボールも正確に止められず、相手を外す動きも少なく、ボールを預けても相手に奪われる事が多かった。

しかし、試合を重ねる毎にプレーは改善され、ボールを失う事はほとんどなくなった。それだけではなく、相手を外す動きの頻度が増え、得点が取れる相手の背後や相手の前に入る動きのスピードが上がった。シモビッチは199cmの身長があるので、高いパスを出しておけばよいと考える人がいるけど、シモビッチの本当の凄さは、ボールを正確に扱える技術にある。

そして、左右両足のシュートは強烈で、正確。第17節のツエーゲン金沢戦の終了間際のターンしてから打ったミドルシュート、第18節の東京ヴェルディ戦の左足のミドルシュートは、いずれもゴールにはつながらなかったが、ボールを扱う技術に優れたプレーヤーでなければ、打てないシュートだった。

開幕戦はベンチスタートだったシモビッチだが、試合を重ねる毎に成長し、結果を残し、FWのポジションを掴み取った。佐藤は自分が望むパスが欲しければ、シモビッチ、杉森、永井、押谷といった選手たちとのポジション争いに勝たなければならないし、シモビッチ以上のプレーを披露しなければならない立場なのだ。

佐藤寿人はプレースタイルを変えようとしている

3つ目は、佐藤自身がプレースタイルを変えようとしている事だ。サンフレッチェ広島に在籍していた頃の佐藤は、DFと駆け引きしながら、動きで相手を外し、得点を奪うことから逆算してプレーをしていた。

しかし、名古屋グランパスに加入してからは、サンフレッチェ広島の時とは違うプレースタイルでプレーしているように見える。名古屋グランパス加入後の佐藤は、ゴールから遠いMFの近くでボールを受け、時にボールを運び、味方にパスをした後、ゴール前に入っていくという動きをしている。明らかに、名古屋グランパスに入ってからはプレースタイルを変えているのだ。

ただ、このプレースタイルがまだ佐藤自身しっくりきていないように見える。ボールを受けようとするタイミングが早すぎたり、ゴールから離れすぎていたりするのだ。プレースタイルを変えているのは、今までと同じプレースタイルでは生き残れないという考えがあるのだと思う。

今の佐藤のプレースタイルは、風間監督の下で得点を量産した大久保嘉人のプレースタイルに似ている。しかし、大久保には圧倒的なボールを運ぶ能力と、自在に変化するミドルシュートという武器があり、その武器を活かすために、あえてゴールから遠い位置でボールを受けていた。佐藤が大久保の真似をしているわけではないのは百も承知だが、佐藤なりのパスを引き出す動きや、味方を活かす動きはあると思う。ただ、まだ答えがみつかっていない。そんな状況だと思う。

佐藤の現状は名古屋グランパスというチームの伸びしろ

繰り返すが、僕は佐藤寿人の力が衰えたとは全く思っていない。ドリブルで何人も抜いて得点を奪う選手ではないので、得点を奪えていない理由は分かりやすいのだ。まだ、名古屋グランパスのプレースタイルに合わせて最適なプレーを選択できていないし、他の選手も佐藤にあわせたプレーが出来ていないだけだ。

ただ、佐藤と他の選手のプレーが噛み合ったら、佐藤は得点を量産してくると思う。今の名古屋グランパスは、勝ち点を積み重ねながら、毎試合成長している。試合経験の少ない選手だけでなく、シモビッチや田口といった経験を積んだ選手も成長している。そして、佐藤の現状は、名古屋グランパスというチームにまだまだ伸びしろがたっぷり残っている事を示している。

僕は佐藤のプレーがどう変化するのか、注目しています。他のサポーターの方々も、注目して欲しいと思います。

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西原雄一
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