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2017年J2第21節 湘南ベルマーレ対名古屋グランパス レビュー「ただただ勿体無い試合」

2017年J2第21節、湘南ベルマーレ対名古屋グランパスは1-2で湘南ベルマーレが勝ちました。正直勿体無い試合だと思います。勝てる可能性はありましたし、引き分ける事は出来たと思います。

前半の名古屋グランパスは、よいプレーが出来ていました。湘南ベルマーレはボールを積極的に奪いにきていましたが、名古屋グランパスのDFとMFは慌てません。特に磯村と小林の2人がミスなくボールを運んでくれるので、他の選手が必要以上に味方のDFに近づくことなく、プレーすることが出来ます。「出して、受ける」を繰り返し、相手陣内にボールを運んでいきます。相手陣内にボールを運び、相手を自陣に押し込み、後は「どう崩すか」だけでした。

湘南ベルマーレはプレビューにも書きましたが、ボールを「どう運ぶか」というプレーに課題をかかえています。特にDF3人のパスのスピードが遅く、相手を動かして空いている選手にパスを出して、MFにパスを出すというプレーが出来ていないのです。

ボールを運ぶ手段としては、相手DFの背後にロングパスを出すか、FWのジネイにロングパスを出すしかありませんでした。得点もセットプレーの割合が高いので、セットプレーとDFの背後を狙ったロングパスに注意して、相手陣内でパス交換しながら、相手が疲れてきたところを仕留めればよい試合でした。しかし、プラン通りに試合を運ぶ事は出来ませんでした。

湘南ベルマーレの狙い通りだったセットプレー

1失点目は警戒するべきだったセットプレーからの失点でした。湘南ベルマーレとしては狙い通りのプレーだったのだと思います。名古屋グランパスは中央にシモビッチ、キッカーに近いサイドに和泉、ゴールキーパーの横にシモビッチが立ち、他の選手はマンツーマンで選手をマークします。湘南ベルマーレは身長の高い選手はいないので、上手くスクリーンプレーを使ってフリーの選手を作り出します。

キッカーの秋野がコーナーキックを蹴る瞬間、ジネイがワシントンに身体を預け、手も使って押しのけ、ペナルティエリア内中央にスペースを作り出します。審判によってはファウルと取られるくらいギリギリのプレーだったと思いますが、ファウルの判定はありませんでした。

ジネイが作り出したスペースに対して島村が走り込むのですが、ただ島村が走り込むのではなく、石川と入れ替わるようにして動きます。島村は石川をスクリーンに使って、自分をマークしていた小林を外します。小林は石川にぶつかった分だけ、一瞬反応が遅れます。ワシントンもジネイを押しのけ、シュートコースを消そうとしますが、一瞬反応が遅れます。フリーでボールを受けた島村は、正確にボールを捉えてシュート。湘南ベルマーレとしては、何度も練習していた狙い通りのセットプレーだと思います。

このプレーを観ていて感じたのは、名古屋グランパスの選手が湘南ベルマーレのセットプレーに対して、きちんと対策出来ていなかったという事です。赤鯱新報の宮原のインタビューによると、ミーティングで湘南ベルマーレのセットプレーに注意するようにという指示はあったようなのですが、PKスポット付近のスペースを空けてしまうのは、不用意としかいいようがありません。

人が集まっているということは、他のスペースに動くという事を意味します。誰かが動いた後は、スペースが空くという事です。もしかしたら初見だったのかもしれませんが、初見だったとしても、誰かが1人立っていれば、防げた失点です。名古屋グランパスのセットプレーの守備は研究され、相手はきちんと対策を施していました。名古屋グランパスは第19節のアビスパ福岡戦に続いてのセットプレーからの失点。反省が全く活かされていませんでした。


何度も見たロングパスからの失点

2失点目も勿体無い失点でした。ファウルの後、湘南ベルマーレは素早くプレーを再開。秋野がロングパスを出し、奈良輪がフリーでパスを受けます。時間があった奈良輪は、ジネイに正確なパス。ジネイがヘディングシュートを決めます。このシーンは競り合わなかった磯村と小林のプレーも問題ですが、僕は奈良輪がフリーでプレーしたことの方が問題だと思います。

後半から名古屋グランパスは、4-3-3-から4-4-2にフォーメーションを変更しているのですが、奈良輪がボールを持った瞬間、素早く左MFに移った和泉がマークすべきでした。ところが和泉は左DFの櫛引の位置まで下がってしまい、奈良輪に対応するのが遅れます。

和泉は1失点目のコーナーキックにつながる場面でも、ドリブルでボールを運んでいた山田に対して後ろに下がってしまい、ボールを奪いにいくのが遅れます。山田からジネイに浮き球のパスが出て、ジネイがヘディングシュート。小林が上手く対応しましたが、コーナーキックになってしまい失点してしまいます。共に和泉が素早く距離を詰めていれば防げた失点だったと思います。

ただ、ロングパスをジネイに合わせるという攻撃は、湘南ベルマーレが何度も実践していたプレーでした。名古屋グランパスはワシントンにジネイをマークさせ、小林と磯村はこぼれ球をひろうことで、大半の時間帯は上手く対応していたのですが、ジネイがワシントンをマークするには、和泉と田口が相手のMFをきちんとマークしなければ成立しません。和泉のプレーは本当にもったいなかったと思います。第18節の東京ヴェルディ戦の時もロングパス2本で失点。あの時と同じ失点でした。同じ失敗を繰り返していては勝てません。

坪井の交代出場が流れを変えた

20試合で16失点しかしていない湘南ベルマーレ相手に2点を取り返すのは簡単ではありません。名古屋グランパスは佐藤に代わってフェリペ・ガルシアを入れます。湘南ベルマーレのDFは身体の大きな選手はいないので、フェリペ・ガルシアのドリブルはとても効いていました。

フェリペ・ガルシアが入ったことでシモビッチへのマークも緩み始めます。杉森のスーパーゴールで1点を返し、湘南ベルマーレも前半から名古屋グランパスのパス交換を止めようと動き続けていたので、少しづつ足が止まりつつありました。この時間帯に得点が奪えていれば、逆転も出来たと思います。

ところがこの後が続きません。杉森がシュートをミスし、シモビッチへのラストパスはあわず。和泉のシュートはゴールキーパー正面と、チャンスは作りますが決めきれません。湘南ベルマーレは杉岡と島村の連携が悪く、2人の間にスペースが生まれていたのですが、チョウ・キジェ監督は島村に代わって坪井を入れて、杉岡の位置取りを修正させ、他のDFの位置取りも修正してみせました。この交代が試合の流れを変えました。

一方、名古屋グランパスの交代は上手くいきません。フェリペガルシアの交代は効果がありましたが、2人目に入った杉本はドリブルでボールを運ぶことが出来ません。最初のプレーで対面する奈良輪に激しく身体を当てられたのも影響したのかもしれませんが、普段の素早いドリブルは陰をひそめてしまいます。また、交代したのは得点を挙げた杉森でした。

風間監督は「杉森は疲れていた」と語っていましたが、僕は疲れているのは理解しますが、この試合で違いを作り出していたのは、フェリペ・ガルシアと杉森です。杉森が交代して以降は、相手陣内までボールは運べるものの、シュートチャンスが作り出せません。僕は和泉か櫛引を代えても良かったと思います。この交代は失敗だったと思います。

前節となぜ同じ戦い方を選択しなかったのか

直近5試合で1勝4敗。ボールを相手陣内に運び、得点は奪えているけれど、セットプレーとロングパスを活用した相手の攻撃に対応出来ずに失点。負けている試合は全て同じパターンです。さすがに、「きちんと対策しようよ」と言いたくなります。怪我人も出ているので、試合に間に合わせるだけで精一杯なのかもしれませんが、同じパターンで負け続けているのはプロではありません。確かに相手を押し込めていますが、与えている失点の価値が安すぎます。

前節はシモビッチに代わって佐藤を起用して、守備を最優先することで勝利を勝ち取りました。今節は青木が欠場したとはいえ、佐藤を中央のFWで起用し、左FWに和泉を起用し、矢田を中央のMFで起用するなど、同じ戦い方をして、失点を防ぐ事を優先させながら戦うという方法もあったと思います。前の試合に勝った方法を捨てて、違う方法を選択して負けるというのは、敗戦から学習しているとは言えない気がします。僕は今節のような試合こそ、監督の力で勝たせて欲しかったです。

チームが苦しい時に、限られた戦力を活かして、チームを勝たせるのは監督の仕事です。ここまで湘南ベルマーレを追い詰めることが出来たからこそ、監督の工夫で勝たせてあげるべき試合だったと思います。この試合に負けたことで、アビスパ福岡と湘南ベルマーレとの勝ち点差が9に開いてしまいました。敗れた事で、プレーオフ圏内に入ることを、最低限の目標にしなくてはならなくなりました。この敗戦は本当に大きい。そう思います。

ファウルの基準、イエローカードの基準が良くわからなかった

最後にひとこと。この試合は、審判の判定が微妙に試合展開に影響しました。前半に田口と磯村に対して、ジネイが短時間で繰り返しファウルをしますが、磯村に対するファウルのタイミングでイエローカードが出ていたら、試合展開は変わっていたと思います。

前半の山田の田口に対するタックルも危険なプレーでした。山田とジネイにイエローカードが出ていたら、湘南ベルマーレは積極的にボールを奪いにいけなくなったと思います。また、後半に杉本に対して奈良輪がプレー後に激しく身体をぶつけていますが、これもイエローカードはなし。フェリペ・ガルシアに対するプレーでイエローカードが出るなら、奈良輪に対するプレーでイエローカードが出てもよかったと思います。

あそこでカードが出るか出ないかで、試合の流れは変わります。カードが出なかった事で、湘南ベルマーレの選手は思い切って、名古屋グランパスの選手に対してボールを奪いにいけました。特に狙われていた田口は何度も湘南ベルマーレの選手から、プレー後に身体を当てられていましたが、よく我慢していたと思います。

また、83分に杉森がファウルスローをとられていましたが、その前にもファウルスローをしていました。少なくとも僕は後半に1回確認しています。後半のファウルスローをとらず、83分のファウルスローはとる。

この試合は選手がフェアにプレーしたので、判定に文句を言ったりといった事はありませんでしたが、なぜこのプレーにカードは出ないで、なぜこのプレーにファウルとカウントされないのか、正直よく分かりませんでした。

湘南ベルマーレと名古屋グランパスの対戦のように、拮抗した相手同士の対戦であれば、審判の微妙な判定が試合に影響します。凄くレベルの高い試合だったので、審判の判定は残念でした。

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