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2018 FIFAワールドカップロシア グループH 日本代表対セネガル代表 プレビュー

2018 FIFAワールドカップ グループH 日本代表の対戦相手はセネガル代表です。

昨日、アヤックス内の別部門、「ワールドコーチング」のスタッフとして海外のクラブや選手のスカウティング、コンサルティングを担当し、オランダナショナルチームU-13、U-14、U-15の専属アナリストを務める白井裕之さんが、素晴らしいプレビューを書いてくれました。

「これを読めば他のプレビュー記事はいらない」というくらい素晴らしい内容なので、ぜひ読んで頂きたいのですが、そう言ってしまっては書くことがないので、僕は白井さんが書かなかったことを書きたいと思います。

セネガル対ポーランド戦を見て気になったこと

この試合のプレビューを書く前に、セネガル対ポーランド戦を観たのですが、セネガルの戦い方で気になった点が2点あります。

1点目は、両サイドの守備です。

セネガルはFWの2人、中央のMFの2人、中央のDFの2人のアクションの強度が高く、特に守備時にボールを奪うアクションと、ボールを奪った後に素早く相手陣内にボールを運ぶアクションの強度は高く、「強烈」と表現してもよいほどです。

左MFでプレーしたマネばかりが注目されますが、FWのニアンのボールを運ぶスピードと守備、MFのゲイエのボールを奪うアクション、DFのクリバリの1対1の強さとパスの上手さは、他のチームの同じポジションの選手と比較しても強烈です。

ただ、中央は強烈なのですが、反面気になったのはサイドの守備です。ポーランド戦では、右MFにサール、左MFにマネが務めていました。2人ともボールを持った時は素晴らしいプレーを披露するのですが、ボールを持たない守備時のアクションについては気になった点がありました。

右MFのサールですが、ボールを奪いにいくアクションはするのですが、1度ボールを奪いにいって奪えないと、アクションが止まってしまうのです。

相手が動き直したら、相手を追いかけるのではなく、その場で止まってしまう場面がありました。ボールを奪うアクションも、他の選手と比較すると、強度が高いとは言えません。そして、サールの後ろで守る右DFのワゲもサール同様に連続してアクション出来る選手ではなく、ボールばかり見てしまって、相手選手に背中を向けてしまう癖があります。

ポーランドは試合途中から、セネガルの右サイドに狙いを定め、ワゲの背後を明らかに狙って攻撃を仕掛けていました。この試合にサールとワゲが出場するかは分かりませんが、もし出場したらセネガルの右サイドの守備は狙いどころだと思います。

なお、サールは攻撃時もアクションが少ない選手で、ボールを受ける時に相手を外す動きはほとんどしません。足を止めて、人がいない場所で待っているだけです。スピードが早いのでボールを持たれたら脅威なのですが、ボールを持った時のプレーの迫力と、シュートチャンスを作った回数が伴わないのは、ボールを持っていない時の動きに問題があるからだと思います。

そして、左MFのマネ。マネのプレーを見ていて感じたのは、「リバプールでプレーしているときほど守備はしていない」ということです。

ポーランドがセンターライン付近でボールを越えようしているとき、マネはFWと同じラインに立って、ゆっくりと戻っている場面が何度もありました。本来なら素早く自陣に戻って、相手にパスを受ける場所を与えないようにしなければならないのですが、マネはサボっているように見えました。

リバプールだったら、もっと素早く戻っていると思うのですが、セネガル代表では多少は守備をしなくてもよいのでしょう。前半はマネが空けたスペースをなかなか活用できなかったポーランドですが、後半は3-6-1というチームオーガニゼーション(システム)に変更し、マネが守っているポジションからボールが運べるようになりました。

アクションが強烈なので、覆い隠されてしまいがちなのですが、アクションを連続して起こしたり、相手のアクションについていかないという欠点が、両サイドの守備からは感じられました。

2点目は、チームオーガニゼーションの変更が機能しなかったことです。

後半からポジションが3-6-1にチームオーガニゼーションを変更したので、後半開始直後に中央のDFのサネが監督に「どうするのか?」と聞きにいきました。監督の選択は、攻撃時はDF4人を継続し、守備時は右MFのサールを下げて5人のDFで守る、という戦い方でした。

しかし、この戦い方は上手くいきませんでした。サールとワゲはもともと連携して守ることができないので、セネガルの右サイドはさらに混乱してしまいます。そして、右MFのサールがDFに下がることが伝わってないのか、サールが下がったことで空いたスペースを誰もカバーしません。セネガルは選手交代で修正しようとしますが、結局試合終了時まで、サールが空けたスペースをカバーする選手はいませんでした。

セネガルはアフリカ代表のチームとしては珍しく、規律をきちんと守るチームだと言われています。たしかに、自分が担当しているエリアを外れてプレーしたり、身勝手なプレーをする選手はいません。ただ、細かく見ていくと、選手同士の連携や状況に応じて戦うということについて、問題をかかえているチームだということが分かりました。強烈な強みもありますが、弱点がないチームではありません。

ポーランドにとっては悔やまれる2失点でしたが、試合自体はポーランドのプラン通り進んでいたと思われる試合で、試合結果は逆になっていてもおかしくない試合だったと思います。

日本代表はセネガルの弱みをいかにつくのか

たぶん、日本代表もセネガルの強みと弱みは理解していると思います。

セネガルがポーランド戦のように、相手にボールをもたせる守備を選択してくるのであれば、日本代表がボールを持つ時間が長くなるはずです。

日本代表としては、セネガルの両サイドの守備の問題と、サイドと中央の間に空くスペースを上手く活用して、ボールを運びたいところです。日本代表が繰り返し試してきていた、吉田、昌子、柴崎、長谷部の4人のパス交換と、パスの受け手になる、乾、香川、原口の動きがポイントになると思います。

守備ではセネガルの攻撃に対して、どこからボールを奪いにいくのか、注目したいと思います。コロンビアとは異なり、セネガルはDFの背後にロングパスを出す攻撃を活用してきます。

また、セネガルにはクリバリというパスが上手いDFがいるので、出来るだけクリバリからDFの背後に蹴られるのは避けたいところです。ポーランドはレヴァンドフスキがほとんど守備をしないので、クリバリは好きなようにパスを出せましたが、日本代表はクリバリからのパスを防ぐために、もう1人の中央のDFのサネにボールをもたせる、といった守備を仕掛けてくると思います。

センターライン付近で強度が高まるセネガルの守備を攻略して相手陣内にボールを運べるか、そして、セネガルの素早い攻撃とロングパスを活用した攻撃をいかに防ぐのか。この2点がポイントになるのではないかと思います。

どんな試合になるのか、楽しみです。

photo by Jon Stammers

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