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2017年J1第15節 川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島 レビュー「ボールを保持していれば攻撃する場所を選べる」


2017年Jリーグ第15節、川崎フロンターレサンフレッチェ広島は1-0で川崎フロンターレが勝ちました。

この試合のプレビューで、「サンフレッチェ広島はスローテンポな試合をする」と書きました。サンフレッチェ広島は、攻撃回数と攻撃を受ける回数が共にリーグ18位。攻撃回数は試合のテンポを現すデータなので、いかにサンフレッチェ広島の試合がテンポが遅いかが分かります。

サンフレッチェ広島はゆっくりとしたテンポでパス交換し、相手が焦れてボールを奪いにきたら、相手の守備のズレをついて、空いている選手にパスをして、ボールを相手陣内に運びます。したがって、サンフレッチェ広島と試合をする時は、ボールを奪いにいく時と、ボールを奪いにいかずにパスコースを塞ぐ守備を使い分け、相手のペースで試合を進めさせない事が求められました。

DF4人で守ってみせた川崎フロンターレ

今まで川崎フロンターレはDF5人で守ることで数的不利な局面を作らせないようにして守っていました。しかし、この試合は途中までDF4人で戦い、上手く守ってみせました。

この試合の川崎フロンターレは、サンフレッチェ広島がボールを持ったら、ボールを持っている場所によって守り方を変えていました。相手ペナルティエリア付近であれば、積極的にボールを奪いにいきますが、センターサークル付近までボールを運ばれたら、パスコースを塞ぐ守備に切り替えます。中央の千葉と丸谷は、阿部(後半は小林)と中村が対応し、青山には大島が対応します。サンフレッチェ広島は、攻撃時にウイングバックと呼ばれるポジションを務める、ミキッチと清水(柏)がFWと同じ位置に上がり、FWが5人並んでいるように見える時があります。大抵のチームはDF4人で守るので、FW5人で攻撃するサンフレッチェ広島に対して、数的不利になってしまい、押し込まれてしまいます。

川崎フロンターレはボールがある方のウイングバックをサイドバックがマークし、センターバックは出来るだけ中央から動かないようにします。センターバックとサイドバックの間のスペースは空きますが、サンフレッチェ広島はあまり攻撃してこないエリアなので、放っておきます。対応すべき場所、人を上手く整理することで、サンフレッチェ広島にスムーズにボールを相手陣内に運ばせませんでした。

ボールを保持していれば攻撃されない

前半はボールを保持できるようになったものの、なかなか相手陣内にボールが運べません。サンフレッチェ広島も川崎フロンターレ同様に、相手ペナルティエリア付近であれば積極的にボールを奪いに行き、センターサークル付近までボールを運ばれたら、パスコースを塞ぐ守備に切り替えてきました。ただ、エドゥアルド・ネットと大島がボールを持った時は素早く距離を詰めて、判断する時間を与えません。DFとMFの間にスペースも空いていないので、中央から攻撃を仕掛けてもサンフレッチェ広島の守備に引っかかってしまいます。サンフレッチェ広島が守っているエリアの外側でパスを回す時間が長く続きました。

しかし、僕は前半の戦い方は悪くなかったと思います。観客としては退屈だったかもしれませんが、ボールを相手に与えていないので、どういうプレーをするかという主導権は川崎フロンターレが保持していました。ボールを保持しているという事は、相手に攻撃をさせないという事を意味します。サッカーはボールを保持し続けていれば、攻撃する権利を持ち続ける事が出来るスポーツで、時間制限はありません。サッカーで「攻撃は最大の防御」と言われるのは、守備をする時間を減らすという意味では、理にかなっているのです。そして、サンフレッチェ広島はボールを積極的に奪いにくるチームではありませんので、後は相手の守備をどう崩すか、どこを空けるかという点だけでした。

攻撃する場所を見極めて戦った後半

川崎フロンターレは後半に入って、攻撃する場所を修正してきます。まず阿部と小林のポジションを入れ替え、FWを小林、左サイドに阿部を配置します。小林がDFの背後を狙うことで、DFがボール保持者に対して積極的にボールを奪いに行く動きを牽制します。また、サンフレッチェ広島のMFはペナルティエリアの横幅程度を保って守っている反面、守っているエリアとタッチラインの間にはスペースがありました。

このスペースを利用して、阿部、大島、そして登里がボールを受け始めます。特に効果的だったのは、登里です。エドゥアルド・ネットがボールを持ったら、近くに寄ってボールを受けるのですが、ボールを受ける場所が、サンフレッチェ広島にとってはボールを奪いにいけない絶妙な場所でした。サンフレッチェ広島としてはボールを奪いに行くと、素早く空いている場所にパスを出されてしまうので、少しずつサンフレッチェ広島の守備が崩れていきます。

逆サイドでは阿部が同じように空いている場所を使ってボールを受け始めます。元々、サンフレッチェ広島の守備を分析すると、アンデルソン・ロペスが守るべき場所に戻るのが遅いので、左サイドは攻め所でした。阿部が上手いのは、わざとボールを受けたい場所を空けておいて、相手が別の場所や他の人に気を取られた瞬間に動き出して、狙っていた場所でボールを受けてしまう事です。得点を挙げたミドルシュートの場面や、大島からパスを受けてゴールキーパーと1対1を作り出した場面は、阿部の駆け引きの上手さを現していました。

ズレないように変更した川崎フロンターレとズラそうとしたサンフレッチェ広島

1-0とリードした後、川崎フロンターレはボールを保持しながら、相手に攻撃させないようにします。サンフレッチェ広島は、ボールを奪い返す守備が得意ではありません。また、サンフレッチェ広島は相手の守備の隙きをついて攻撃するのが得意なチームなので、相手が場所を空けないように守備をしてきたら、なかなか崩す事が出来ません。2017年シーズンは、ピーター・ウタカやドゥグラスや浅野のように、個人の力で局面を優位に出来る選手もいないので、先制されるとますます苦しくなってしまいます。

川崎フロンターレは奈良を交代出場させ、フォーメーションを5-4-1に変更します。少しずつウイングバックの選手に対する対応が遅れていたので、対応する選手の数を同数にしてマークがずれるのを防ごうとします。ところが、サンフレッチェ広島は宮吉を入れて、フォーメーションを4-4-2に変更。川崎フロンターレがズレないように対応したら、今度はサンフレッチェ広島がズレを起こすような変化をしてきました。守るべき選手が誰なのか混乱した川崎フロンターレは、最後の10分は押し込まれてしまいます。しかし、中央を奈良、谷口、エドゥアルドと並べていたので、相手の攻撃をきちんと跳ね返し、シュートを打たれてもチョン・ソンリョンがなんとかしてくれたお陰で、どうにか1-0で勝つことが出来ました。

今は勝ち点を積み重ねる事が大切

1-0の勝利。シュート5本の勝利というのは川崎フロンターレらしくありませんが、きちんと試合をコントロールし、自分たちがやりたい試合をある程度実践した上で、最後はきちんと逃げ切るという戦い方が出来ていたという点は、評価すべきだと思います。

これから試合が続きますが、今の川崎フロンターレは出来るだけ勝ち点3を積み重ねていく事が大切です。僕はACLが再開するまでの9試合で、6勝2分け1敗の勝ち点20くらい獲得出来かどうかが、目安だと思っています。ACLが再開するまで、どこまで勝ち点を積み重ねていけるか。引き続き注目したいと思います。

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