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書評「VISION 夢を叶える逆算思考」(三笘薫)

Numberの特集が面白かったので読んでみました。

最近サッカー選手の思考法に関する本ブームにうんざりしていたこともあり、読まないようにしていたのですが、カタールW杯に選ばれた日本代表選手の考え方はこれまでと少し違っているようにも感じたので手に取ってみました。そして、読み終えてその予感は正しかったし、大谷翔平など最近のアスリートの特徴を現している本になっていると感じました。

多くのアスリートの著書に書かれている「どう目標を達成するのか」「どうメンタルを保つのか」といったことも本書には書かれているが、これまでのアスリート本と違って、「マインド」「メンタル」といったどこか雲を掴むような話に終始するのではなく、どうプランニングし、どう実行し、どう分析して、どう改善していくのか、という「PDCA」サイクルを回す方法がアスリートの視点で書かれているのがとても面白いと感じました。

三笘の話で興味深かったのは、何かを取り入れる際には必ず「エビデンス」があるかどうかを判断基準とするということ。いいと思った事でもエビデンスがなければ取り入れない。こういう考え方は大学で身につけたものだと思いますが、見知った情報をそのまま取り入れてしまいがちな人とは違って面白いなと思いました。

大谷翔平にも共通することですが、現代のアスリートはデータや映像を使って自分のプレーを分析することに抵抗がないし、トレーナー、栄養士、エージェントなど、自分のためのチームを作るのが上手い。その上で、休養、栄養、トレーニングといった自身のパフォーマンスを向上させるためにどう時間を使うのかをしっかり考え、やるべきことを実行していく。昭和の時代の豪快なスポーツ選手の時代や平成の自分探しの旅をする時代も終わり、どこかスタートアップの経営者のような合理的な姿が三笘からも感じられて面白い。

本書を読んでいると、野球だけでなく、サッカーも頭がよくないと出来ないスポーツになっているんだなと嬉しくなりました。三笘はここから魑魅魍魎とした怪物たちが争うトップ中のトップの世界に足を踏み入れていくわけですが、そこでどう三笘がPDCAサイクルを回していくのか。そこで得た知見は三笘だけでなく、日本サッカーにとっても大きな知見になると思いますので、ぜひ定期的に還元して欲しい。本書を読み終えてそんなことを考えました。


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