2018年J1第18節 湘南ベルマーレ対川崎フロンターレ プレビュー「求ム、空気が読めない、ギラギラした選手」
追記:本日は台風の影響で開催中止が決まりました。
2018年J1第18節、川崎フロンターレの対戦相手は湘南ベルマーレです。まずは、Football-Labに掲載されている前節までのデータを元に、湘南ベルマーレのデータから分かる特徴を紹介したいと思います。
プレビューで紹介する「2つの指標」
プレビューでは、2つの指標に基づいて、川崎フロンターレの対戦相手の特徴を紹介しています。
1つ目は、「チャンス構築率」。これは、シュート数を攻撃回数で割った指標で、1回の攻撃でどのくらいの確率でシュートチャンスを作れるかを把握するためのデータです。このデータから、チームのビルドアップ(攻撃の開始からシュートチャンスを作るまで)の特徴を把握することが出来ます。
2つ目は、「シュート決定率」。これは、得点数をシュート数で割った指標で、何本シュートを打てば得点を奪えるのか、把握することが出来ます。
2つの指標ともに、10%を目安にしています。守備では「被シュート構築率」「被シュート決定率」という指標に着目することで、シュートチャンスを作らせない守備がどのくらい出来ているのか、得点を奪われない守備が出来ているのかを把握することが出来ます。
相手陣内にボールが運べていない湘南ベルマーレ
前節までの湘南ベルマーレの攻撃のデータを分析すると、攻撃回数は124.3回でリーグ11位、シュート数は10.7本でリーグ17位、チャンス構築率は8.6%でリーグ16位、シュート成功率は10.4%でリーグ6位です。
目につくのは、チャンス構築率の低さとシュート成功率の高さです。実はこのデータの傾向は、前節のV・ファーレン長崎と同じです。前節のプレビューで、僕は「チャンス構築率が低くて、シュート成功率が高いチーム」の特徴として、こんな傾向があると書きました。
・ 得点の割合でセットプレーの割合が50%近い数字を記録している。
・ 特定の選手のシュート成功率が高い
・ クロス、中央からのロングパスなど、特定の攻撃からのシュート成功率が異常に高い
湘南ベルマーレは「セットプレーからの得点が多い」というイメージがあるかもしれませんが、実は総得点の割合を調べてみると、PKを含めても28.6%しかなく、川崎フロンターレの24%とそこまで大きく変わりません。
他のチームとの違いは、「その他」と定義されている、「オウンゴールやシュートが味方に当たって入った場合」のゴールが多いことです。
「その他」の得点の割合は、23.81%でリーグ最多。この傾向から推測されるのは、「湘南ベルマーレがボールを相手陣内に運ぶことに苦労している」ということです。相手陣内にボールを運べていないから、チャンス構築率も低いし、得点も意図したプレーによるものが少ない。そんなチーム状態が推測出来ます。
他のデータを調べてみると、30mライン侵入回数は33.2回でリーグ17位、ペナルティエリア侵入回数が12.1回でリーグ15位、ボール支配率は43.5%でリーグ18位と、ボールを保持して、相手陣内に侵入する回数も、時間も少ないということが読み取れます。
相手の守備に有効なアタックが出来ているかを測る「直接フリーキック」の数も、1試合平均で11.4回でリーグ17位。枠内シュート数も1試合平均3.6回でリーグ16位。攻撃に関するデータを調べていると、10位という順位で折り返したのが不思議なくらいです。
もちろん、チョウ・キジェさんほどの監督が、こうしたデータや傾向を把握していないはずはありません。前節は3-0で勝っていることからも、きちんと対策を用意しているはずです。データを踏まえた上で、湘南ベルマーレがどんな攻撃を披露するのか、とても楽しみです。
シュートは打たれているけれど、決められていない
湘南ベルマーレが10位でリーグ戦を折り返せたのは、守備が要因だと思います。湘南ベルマーレの守備のデータを分析すると、被攻撃回数は、128.5回でリーグ11位、被シュート数は15.1本でリーグ16位、被チャンス構築率は11.8%でリーグ16位。被シュート成功率は8.6%でリーグ5位です。
攻撃に関するデータを調べると、相手陣内に上手くボールが運べていないので、ある程度相手の攻撃を受けていることは推測出来ます。しかし、被シュート成功率が10%を下回っているということは、相手にシュートを撃たれていても、ゴールの枠に飛ばさせていないか、シュートをきちんとGKが止めているからではないかと思われます。
選手の活躍を相対的に測る指標として、Football-Labでは「チャンスビルディングポイント」という指標を採用しているのですが、GKの活躍度合いを示す「セーブ」の部門で、湘南ベルマーレのGKの秋元は5位に入っています。
日本代表の東口、中村といった選手よりも高い指標を示しているということは、シュートを撃たれていても秋元が止めてくれているから失点が少ないのではないかということが読み取れます。
川崎フロンターレとしては、シュートは撃てているけれど、秋元に止められて、なかなか得点が出来ないという試合展開にはしたくありません。いかに秋元が守るゴールを、川崎フロンターレの攻撃がこじ開けるか注目です。
いいときに、悪い芽が育っている
川崎フロンターレはリーグ再開後2連勝。一見するとチーム状態は良いと感じるかもしれませんが、僕はそうは思いません。
かつて、読売ジャイアンツの監督を務めた藤田元司さんは、こう語っていました。
「いいときに、悪い芽が育っているんですよ。
悪い時期は心配しないけれど、
勝っている時期が、いちばん怖いんです」
僕が考える「悪い芽」とは何か。それは、出場するメンバーが固定されていることです。鬼木監督は様々なメンバーを試し、試合を戦ってきました。しかし、リーグ再開後に試合に出場しているメンバーは、守田を除いたら2017年シーズン後半に試合に出ていたメンバーです。
守田に関しても、エドゥワルド・ネットを蹴落とし、実力で勝ち取ったポジションというよりは、どちらかというと「与えられた」ポジションだと思います。
2018年シーズンに加入した、鈴木、下田といった選手がベンチメンバーに入るようにはなっていますが、スターティングメンバーを脅かすようなプレーをしているわけではなく、まだまだ「良いプレーをちょっとしてくれたら嬉しい」選手です。
大久保は移籍し、齋藤学はベンチ外が続き「怪我をしなければよいよね」くらいにサポーターが感じているとするならば、それは温かい目で見守っているというより、期待されるところまで至ってないということでもあります。
前節後に、森谷に関するコラムを書いたら、有料記事なのに多くのコメントをTwitterで頂きました。
森谷だけが悪いわけではなく、エドゥワルド、登里、長谷川、田坂といった選手たちも、スターティングメンバーを脅かすようなプレーが出来てませんし、タビナス・ジェファーソンや田中碧や脇坂といった選手はベンチにも入ってきません。
鬼木監督が全くチャンスを与えていないわけではないにもかかわらず、結局メンバーは元に戻った。この事実を僕は重く受け止めています。
2017年までの川崎フロンターレは、試合に出るために競争が激しく、中村や大久保や小林に至っては毎年のようにライバルをぶつけられていました。中村や大久保は与えられたポジションに安住していたわけではなく、ライバルたちを蹴落としてきたから、ポジションを獲得出来たのです。チームで数少ないポジションを争って、バチバチと戦い続けてるからこそ、チーム力が年々向上し続けてきた。僕はそう感じています。
今の川崎フロンターレは、実力もつき、相手チームからのリスペクトも得られるようになりました。しかし、最近のチームは、妙に落ち着いている反面「絶対にポジションを奪ってやる」とギラギラとプレーするような選手が少ない。そう感じています。言い換えるなら、スターティングメンバーの選手に怒られるくらい「空気を読まない」選手がいません。
谷口も、車屋も、一定のパフォーマンスを披露していますが、彼らが自分のポジションが危うくなると感じるくらい、ギラギラとプレーする選手が出てきて欲しいと思っているのは、他ならぬ鬼木監督だと思います。だから、「止める」「外す」「受ける」といったプレーに問題はあるものの、「ポジションを奪ってやる」という気持ちを(まだ)感じさせてくれる鈴木が、出場機会を増やしているのだと、僕は感じています。
求ム、空気の読めない、ギラギラした選手。
誰が出てくるのか、楽しみにしたいと思います。
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