パタゴニアが提示する「未来への羅針盤」

Coyoteという雑誌があります。Switchという雑誌と同じ会社が出版している雑誌で、旅をテーマにしたエッセイやインタビューを掲載しているのですが、No49の特集はパタゴニアでした。パタゴニアは、今年創業40週年を迎えました。

パタゴニアという会社は、仕事の合間にサーフィンに行くのもよし、会社を休職して別の仕事や長い度にでるのもよし、といった従業員の自主線を尊重した働き方、自然環境に配慮し、長く使ってもらうことに主眼をおいた製品づくり、自然環境を維持するための様々な支援活動の実施など、一般的な会社とは違う働き方や方針で運営されてきた会社です。

そんなパタゴニアが、40年かけて伝えてきたメッセージとは、何か。それが、今回のCoyoteの特集のテーマです。今回の特集のテーマが特に強く伝わってくるのが、パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードのインタビューです。インタビューの中でイヴォン・シュイナードが語っていた言葉を、何回かに分けて紹介します。

今回は、「未来への羅針盤」です。

お手本は梅干屋

イヴォン・シュイナードは、これまで紹介したインタビューの言葉の中でも、繰り返し「資本主義とは何か」、「消費とは何か」ということを語っていますが、Coyoteの「未来への羅針盤」というインタビューの中で、彼はこのように語っています。

資本主義の根幹にあるのが消費だから。
どんなにグリーンビジネスの製品を作っても、製品は増え続けていく。
パタゴニアが耐久性や持続性のある優れた商品を開発しても、
他社はそれを模倣し、粗悪品を安価で大量生産していく。

「資本主義とは何か」、「消費とは何か」を振り返った上で、イヴォン・シュイナードは、株式会社のビジネスモデルについて、このように語っています。

株式会社は成長することなしにビジネスモデルを作ることはできない。
株を公開している以上、会社は毎年製品の生産向上をめざし、成長をもくろむ。

株式会社は、「成長し続けなければ、ビジネスモデルを作ることはできない」と語った上で、イヴォン・シュイナードは理想のビジネスモデルをこのように語っています。それは、ちょっと意外な例えでした。

いつだったか京都にある梅干屋さんの話を聞いたことがある。
先祖代々、家庭で七百年、梅干屋さんを営んでいる。
ネット販売もせず、小さな店先で梅干しだけを売っている。
まさに環境を破壊せずに維持するという、
サステナビリティのお手本のような店だ。

モノを大切にする姿勢を伝えたい

パタゴニアは2013年で創設40年を迎えました。イヴォン・シュイナードは過去の40年を振り返った上で、自分自身の役割について以下のように語っています。

正直、パタゴニアでの私自身の仕事はもう終わったように思う。
悲観ではない。やりたいことはやった。

「私自身の役割は終わった」と言いつつも、まだイヴォン・シュイナードには伝えたいことはあるようです。彼は、これからのファッションで伝えたいことについて、次のように語っています。

私はユーザーがパタゴニアの製品を修理するような流れを作りたいし、
ものを大事にする姿勢を伝えたい。
だからこれからは古着を売るという展開を
広げていこうと思っている。
(中略)
ミニマムは何も貧しく制限された生活ではない。
物にばかりかこまれるのではなく大切なことに集中して生きる。

どん底の中で見つけた答え

パタゴニアは、今でこそ独自のポジションを築き上げていますが、40年の間には危機もありました。1991年には経営状況の悪化に伴い、120名の従業員を解雇しています。その事を振り返った上で、イヴォン・シュイナードは危機から学んだことを、このように語っています。

成長をコントロール出来ず、在庫を増やし、
会社は危機に直面した。
反省を踏まえて私が考えたことは、
誇りに思える製品を作ること、
一企業として環境に悪影響を与えないこと、
かつ抑制する方法を考えること。
成長、拡大は本質的な価値観ではないこと。
年間1%の売上を環境団体に寄付すること

イヴォン・シュイナードは、自身が考えたことを共有するため、パタゴニアの経営幹部15名とアルゼンチン・パタゴニア地区へと旅に出ます。旅の間、イヴォン・シュイナードと経営幹部は「なぜビジネスをやるのか」徹底的に話し合い、考えを共有していきました。これがパタゴニアにとって、大きな転換期となりました。パタゴニアはどこにでもあるアウトドアメーカーから、オンリーワンの会社へと生まれ変わったのです。

自分で仕事を作る

最後に、イヴォン・シュイナードは「次の世代へ」というタイトルで、仕事について、次のように語っています。

大人は大学に行って、ハイテク産業に従事しろと言って、
若い人は皆三十歳までに億万長者になりたがっている
でもそんな仕事はない。
将来仕事が欲しいなら、自分で仕事を作らないといけない。

イヴォン・シュイナードの言葉を聞いた人は、現在自分が置かれている環境とあまりにも差があるため、「パタゴニアのような考え方では企業は運営できない」と考えるのも無理はありません。

しかし、実際パタゴニアは、イヴォン・シュイナードが発言したメッセージを実現させるべく、責任をもって努力している会社です。「パタゴニアだから出来る」「パタゴニアのようには出来ない」と考えても構いませんが、実際パタゴニアは「出来ない」と思われている方法で、運営されている企業です。

パタゴニアという企業は、大きな規模の会社ではありませんが、大きなメッセージを抱えて運営されている会社です。Coyoteのパタゴニア特集号をきっかけに、パタゴニアのメッセージに耳を傾けてはいかがでしょうか。


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