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書評「ホークス3軍はなぜ成功したのか?~才能を見抜き、開花させる育成力~」

2020年の日本シリーズは第2戦まで終わって、福岡ソフトバンク・ホークスの2勝0敗。何より衝撃的だったのは勝ち方だ。読売ジャイアンツに何もさせない、力の差を見せつけるような勝ち方はパ・リーグとセ・リーグの差とかではなく、福岡ソフトバンク・ホークスというチームがいかに今のプロ野球の中で飛び抜けた存在なのかを見せつけるような勝ち方でした。

福岡ソフトバンク・ホークスの強さを支えているのは、ドラフト上位で指名された選手や、外国人選手や、FAで獲得した選手ばかりではない。千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成、石川柊太、周東佑京などは、全員育成選手としてプロのキャリアをスタートさせている。3軍と呼ばれるチームからスタートした選手たちが、今のソフトバンク・ホークスの強さを支えている。

では、福岡ソフトバンク・ホークスの3軍はどのような経緯で生まれ、どのように運営されているのか。福岡ソフトバンク・ホークスの強さを支える3軍に迫った書籍が、本書「ホークス3軍はなぜ成功したのか?~才能を見抜き、開花させる育成力~」です。

本書で印象に残ったことは3点あります。

一芸に秀でた選手を獲得すること

1点目は「一芸に秀でた選手を獲得すること」。ドラフト上位の選手のように全てに秀でていなくても、身体の使い方やプレーでどれか秀でたものがあれば獲得して鍛える。獲得コストが低いので、リスクも低いというわけです。

実戦の機会を与えること

2点目は「実戦の機会を与えること」。福岡ソフトバンク・ホークスの3軍は四国のアイランドリーグや九州の社会人リーグや大学と定期的に試合を行っている。ただトレーニングするだけでなく、定期的に実戦の機会を与えることで選手を見極めるだけでなく、選手がPDCAサイクルを自発的に回せる仕組みを作っているというわけです。

育つ環境を与えること

3点目は「育つ環境を与えること」。福岡ソフトバンク・ホークスは筑後にHAWKSベースボールパーク筑後という施設を建設。スタジアムを含めた2面の練習グラウンド、室内練習場がある施設は、練習したい選手にとってはいつまででも練習できる環境といって良いと思います。

選手の獲得、PDCAサイクルを回すこと、環境整備。もちろんコストもかかりますが、コストをかけるだけでなく、きちんと人が育つためのサイクルを回していることも、ソフトバンク・ホークスの3軍から次々と選手が育っている要因だと思います。

企業では当たり前のことをプロ野球チームでやる

本書を読んでいると、福岡ソフトバンク・ホークスが企業が採用で取り組んでいる当たり前のことをプロ野球チームでも実践していることに気がつきました。エリート大学出身ではなく一芸に秀でた人材も獲得し、研修で鍛え、実戦で試し、就職したあとも成長できるだけの環境を用意する。ソフトバンクが当たり前のようにやっていることを、プロ野球チームでも実践したらこうなる。そう言われているような気もします。

本書を読んでいると、福岡ソフトバンク・ホークスの強さは当然のような気もしますが、福岡ソフトバンク・ホークスの1強というのも寂しい。他のチームがいかに福岡ソフトバンク・ホークスに対抗するのか。楽しみにしたいと思います。


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