勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方vol.21「オシムさんと風間さん」
マーケティング視点で風間八宏を分析する
2014年から2016年まで川崎フロンターレの監督を、2017年に名古屋グランパスの監督を務めている頃、風間八宏さんの考えを知りたくて、すべての試合のプレビューとレビューを書いていました。
ただ風間さんの考え方やメッセージは、サッカーのコーチや戦術が好きなマニアックなファンほど違う捉え方をしている気がします。
普段デジタルマーケティングの仕事をしている人にとっては、風間さんの考え方はとても合理的で解像度が高く腑に落ちることばかり。サッカーが好きでビジネスの最前線で活躍する人で風間さんのことを知っている人ほど「風間さんはすごい」と話しています。
そんなわけで、風間さんの考え方を僕なりの解釈で説明してみます。
オシムさんと風間さん
先日イビチャ・オシムさんが亡くなった後、手元にあるオシムさんに関する本を読み直してみました。
オシムさんの本を読みながら感じたのは、風間さんとチームのプレーを改善させるアプローチが似ているなぁということです。
風間さんは「止める蹴る」というボールを扱う技術を基点にプレーの改善を進めました。楽天大学の仲山進也さんの言葉を借りるなら、風間さんはこういう考え方でチームビルディングを進めているということになります。
オシムさんの場合は、「止める」を「走る」に置き換えたのだと思います。風間さんはボールを基点にチームをビルディングしていったのですが、オシムさんはボールではなく「人」を基点にチームをビルディングしていったというわけです。
オシムさんがまず走るようにチームを促したのは、走ることによって選択肢を増やしたかったからだと思います。選択肢が浮かばない選手が多いのは、動かないからなのでまずは動かす。走るようになると自然と次の選択肢が増える。選択肢が増えると正しく選択できずに迷うようになるので、正しく選択できるようにトレーニングをする。複数のビブスの色を使ったトレーニングは、迷ったときに正しい選択を促すためのトレーニングだったのだと思います。
慣れてくると選べるようになるのでチームとしてのステージも上がっていきます。当然ステージアップには個人差があるので、ステージアップした選手のレベルをどんどん引き上げていく。この順番でチームが必ずしもステップアップしていくわけではないので、ステージを上下しながら少しずつチームを作っていくことになります。オシムさんはこのチューニングに長けた人でした。
多くのサッカーのコーチは、オシムさんの「走る」という意味を勘違いしている気がします。オシムさんが「走る」と促したのは、まずはアクションの量を増やし、選手たちに考えるための選択肢を与えるためで、徒競走の回数を促そうとしたわけではありません。このアプローチは風間さんと似ていて、風間さんはボールを扱う技術を基点にしながら、選手に考える時間を与えようとしたのです。
この2人はサッカーの捉え方が似ています。サッカーを構造化して捉え、個人のアクションを基点にチームを改善し、個人のアクションが連携するようにチューニングを繰り返す。こうやってチームを少しずつレベルアップさせているのです。
オシムさんがジェフユナイテッド千葉の監督を務めていたら、日本代表の監督を務めていたら、といった話をよく目にしますが、その答えの一つは川崎フロンターレなのかもしれません。風間さんが5年間かけて監督を務め、鬼木さんが構造を引き継ぎ、チューニングを繰り返してレベルアップし続けているのが今の川崎フロンターレだとすれば、オシムさんがやりたかったこと、考えていたことの一端は既に披露されているのかもしれません。
大和シルフィード分析サポート担当の日記
アスリートでも、コーチでも、監督でも、トレーナーでもない僕は、スポーツに関係ない仕事で培ったスキルや知識を活かして、スポーツを分析しています。このコーナーでは、2022年シーズンを分析サポート担当として戦う大和シルフィードのことを書いていきます。
「外す受ける」を強調している理由
先程のオシムさんと風間さんのコラムの続きになります。
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勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方
Jリーグ、海外サッカー、ランニング、時事ネタなど、自分が普段楽しんでいるスポーツの楽しみ方について、ちょっと表で書けない話も含めて、4,0…
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