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2017年J1第14節 横浜F・マリノス対川崎フロンターレ レビュー「相手の守備は素晴らしかったが、崩す方法はあった」

2017年Jリーグ第14節、鹿島アントラーズ対川崎フロンターレは、0-2で横浜F・マリノスが勝ちました。

この試合のプレビューでも書きましたが、横浜F・マリノスは、ボールを奪ってから素早く攻撃する「カウンター攻撃」を得意としています。齋藤学、マルティノスというスピードがあり、ドリブルも得意な選手がいることもあり、1試合平均のパス本数、ボール支配率は低いものの、1試合平均のドリブル回数が16.5回でリーグ3位を記録しています。ドリブルを活用してボールを相手陣内まで運ぶチームなのです。

また、守備は「シュートは打たれるけれど、成功率の高いシュートは打たせていない。あるいは、シュートを打たれていてもしっかりブロックしている」チームという事がデータから読み取れます。シュート数に対するゴール数の割合「被シュート成功率」は、7.2%でリーグ5位を記録しています。

データに基づいた横浜F・マリノスの分析結果から、攻撃においては「相手ペナルティエリア付近にいかに侵入して、成功率の高いシュートチャンスを作り出せるか」。守備においては、「いかに相手のカウンター攻撃を止めて、得点させないか」がポイントでした。試合結果からいうと、横浜F・マリノスの狙い通りの試合だったと思います。

素晴らしかった横浜F・マリノスの守備

この試合は、特に横浜F・マリノスの守備が素晴らしかったです。横浜F・マリノスは、守備の時は「4-4-2」のフォーメーションで守ります。特にMFの4人、DFの4人がペナルティエリアの横幅くらいの長さで並び、川崎フロンターレに中央でボールを受ける場所を作らせません。サイドにボールが動いたら、素早く横幅を保ったまま移動し、川崎フロンターレの選手に対して素早く距離を詰めます。この守備を90分間継続して実行しました。

川崎フロンターレは、横浜F・マリノスの守備を崩せません。中央でボールが運べないので、横からボールを運ぼうとするのですが、横からボールを運んで中央にパスしても、横浜F・マリノスには中澤、デゲネクというセンターバックが守っており、高いボールはチャンスになりません。GKとDFの間に速いパスを入れればチャンスを作れたかもしれませんが、横浜F・マリノスは出来るだけ横から速いパスが出ないように、パスコースを消し、GKとDFの間にスペースが生まれないように守っていました。

川崎フロンターレは、中央からボールが運べないので、横からボールを運ぶ事を選択します。1失点目の後、ハイネルと登里を入れて、フォーメーションを3-4-3に変更。ハイネルと登里にサイドからボールを運ばせ、相手の守備を崩そうとします。しかし、登里は上手くボールを運んでくれましたが、ボールを運ぶスペースがないので、ハイネルがよいプレーが出来ません。ボールは保持するものの、攻めあぐねる時間が続き、結果的にカウンターで2失点目を喫し、敗れてしまいました。

横浜F・マリノスの守備をどう崩せばよかったのか

川崎フロンターレは火曜日にACLを戦った影響からか、ボールを受ける、相手を外す動きの頻度、スピードが遅いように見えました。コンディションも良くなかったのだと思います。ただ、絶対に崩せない守備だったかというと、そこまでではなかったような気がします。

僕はもっと中央から攻撃しても良いと思いました。中町と扇原は上手く中央で受ける場所を消していましたが、2人の間ではなく、DFとMFの間は後半から少しずつ空いてきました。ボールを受けて前を向くのは簡単ではありませんので、受けて、ワンタッチで味方に戻して、もう一度受ける。こうした動きを繰り返すと、少しずつ中央が空いてきます。中央が空いてくると、DFが前のスペースを気にして背後が空いてくるので、小林のような選手が背後を狙えば、チャンスが作れます。

背後を狙う動きと、間でもらう動きを組み合わせて、中央のエリアを攻略するというプレーは簡単ではありませんが、川崎フロンターレなら出来たと思います。他には、エドゥワルド・ネットと中村の2人が横浜F・マリノスの守備の外側でプレーする時間が長かったのですが、2人のうちどちらかが相手の守備に対してドリブルを仕掛け、相手の守備を動かすようなプレーをしても良かったと思います。ドリブルで相手を引きつけてパスを出し、改めて受ける。奪われるリスクもありますが、もっと中央でドリブルを仕掛けても良かったと思います。

家長は川崎フロンターレの戦い方にフィットするのか

エドゥワルド・ネットや中村以外に、中央でもっとドリブルしても良かったと思うのが家長です。この試合は主に中央でプレーした家長ですが、あまりドリブルを仕掛けるようなプレーはありませんでした。また、ボールを止める動き、相手を外す動きが遅く、次にプレーまで時間がかかるため、なかなか中央からボールを運ぶ動きのテンポが上がりませんでした。横方向のパスを繋いで、素早く縦方向にパスを入れても、家長がボールを受けるとまた遅いテンポに戻ってしまうという場面もありました。

家長は復帰してからACLで2試合フル出場しましたが、まだまだ「出して、受ける」のテンポが遅く、相手を外す動きのタイミングが味方とあっていません。また、ボールを受けた後、次のアクションを起こすまでに時間がかかるので、他の選手と同じテンポでプレー出来ません。川崎フロンターレのサッカーは、フィールドプレーヤー全員が同じテンポでプレー出来ないと力が落ちてしまいますが、家長のプレーのテンポが遅く、次にどんなプレーをするのか分からないため、他の選手の動きが止まってしまいました。

家長のボールを奪われない技術は本当に素晴らしいのですが、1つアクションを起こしたら次のアクションまで時間がかかるという欠点があるので、これまで日本代表に選ばれず、選ばれても定着出来ずにいます。川崎フロンターレというチームで求められている事は、家長の課題を改善する可能性を秘めています。今後、家長がチームのテンポに合わせてプレー出来るようになるのか、注目したいと思います。

なかなかフィットしないハイネル

また、ハイネルが途中から入り、同じテンポでプレー出来ない選手が2人に増えたことで、さらにパス交換のスピードが落ち、攻撃のテンポが落ちてしまいました。鬼木監督はハイネルを辛抱強く起用し続けています。ハイネルの素早くボールを運ぶプレーは、今後川崎フロンターレの武器になると思って起用しているのだと思いますが、まだ「ボールを受けたらドリブル。ダメならパス」というプレーの選択方法が変わっていないため、なかなか他の選手と同じテンポでプレー出来ません。相手DFの背後を狙うプレーも少ないので、ボールを受けても相手に捕まってしまう事も多いのも気になります。

攻撃するスペースがある時にトドメを刺しにいく時に起用すると凄くよいプレーをする選手なのですが、スペースがないと全くよいプレーが出来ません。本当なら同点や負けている試合で、得点を奪いにいきたい場面で起用したい選手なのですが、今後も辛抱強く起用し続けるのか、どこかで見切りをつけるのか、鬼木監督の決断に注目したいと思います。

この試合の横浜F・マリノスの守備に対して、大島、エウシーニョといった選手がいない中で崩し切るのは簡単ではなかったと思いますが、やりようはあったと思います。パス交換のテンポを上げれば崩せる相手との対戦が多かったので、中央からボールをドリブルで運ぶプレーを忘れているように感じました。パスだけでは相手は崩せません。昨日早朝に行われたチャンピオンズリーグで優勝したレアル・マドリーのように、モドリッチ、マルセロ、イスコといったボールを運ぶプレーを積極的に仕掛けていかないと、なかなか相手の守備は崩せない。そう感じました。

8月までにいかにリーグ戦で勝ち点を積み重ねられるか

次の試合は6月17日。ようやく怒涛の連戦が終わりました。ACLでベスト8、リーグ戦も1試合すくない状態で勝ち点8差。両方とも十分チャンスは残っています。ACLとリーグ戦あわせて3敗しかしていないことを考えると、上出来の前半戦だったと思います。エウシーニョの合流も間近です。今後8月までの戦いで求められるのは、リーグ戦でいかに連勝を増やして、勝ち点を積み重ねていけるかです。柏レイソル、浦和レッズ、ガンバ大阪といった上位チームとの対戦も予定されています。上位チームとの対戦でいかに勝利をおさめ、勝ち点差を詰めていけるか。ACLが再開するまでの9試合で、5勝2分け2敗の勝ち点17くらい獲得出来るのが理想です。

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