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2017年J2第15節 愛媛FC対名古屋グランパス レビュー「青木と杉森が後半早々に交代した理由」

2017年J2第15節、愛媛FC対名古屋グランパスは、2-1で名古屋グランパスが勝ちました。

この試合のプレビューで、愛媛FCの特徴として、「第14節時点でセットプレー以外の失点はわずか5失点で、J2最小失点(8失点)の横浜FCの4失点に次ぐ数字で、セットプレーの失点を除くと愛媛FCは非常に守備のよいチーム」と書きました。愛媛FCが守備がよいのは、5-4-1のフォーメーションで人数をかけて守っていること、そして、選手間の距離を常に短く保ち、相手に攻撃させる場所を与えないように守っているからです。前半の名古屋グランパスは、愛媛FCが攻撃する場所を与えてくれないため、ペナルティエリア付近まではボールは運べますが、なかなか相手の守備を攻略することが出来ません。

狙い通りの攻撃だった愛媛FCの先制点

愛媛FCは攻撃時の狙いも明確でした。攻撃時は3-2-5のフォーメーションに変更し、守備の時はDFラインに下がっている両サイドの選手が、FWの位置まで移動します。中央3人のDFがボールを保持したら、まずはFWの有田を狙うか、両サイドの選手に対してロングパスを出し、名古屋グランパスのDFを押し込もうとしました。例えボールを奪われても、ボールを失う位置はゴールからは遠いので、失点のリスクは少なくなります。そして、サイドの選手にパスが通ったら、一度MFの選手に下げ、今度は中央に向けて斜めのパスを出して、ペナルティエリア中央を攻略しようと試みます。愛媛FCの先制点は、右サイドへのロングパスからDFにパスを下げ、中央の選手に斜め方向のパスを出し、中央の選手から名古屋グランパスのDFラインの背後に走った選手に斜めのパスを出して得点を奪うという、狙い通りの攻撃から生まれた得点だったと思います。

ボールを受ける動きが改善されつつある田口

ただ、名古屋グランパスは失点しても慌てませんでした。慌てずパスを回し、自陣深くで守る愛媛FCの選手を引き出そうとします。この試合は田口がボールを積極的に受け、距離やスピードを変えたパスを使い分け、相手の守備を崩そうとします。田口は怪我から復帰直後は連続して動き続けられなかったり、相手が守っている場所の外でしかボールを受けられませんでしたが、最近の試合では相手の守備者の間でパスを受けたり、DFの背後でボールを受けられるようになっています。田口のボールを受ける、相手を外す動きが改善された事によって、同点ゴールが生まれたと思います。

後半に入ると、愛媛FCはボールを奪う位置をより相手ゴールに近い位置に設定します。名古屋グランパスのDFがボールを持った時、前半はボールを奪いにいきませんでしたが、後半は積極的に奪いにいきます。楽にボールを持てていた名古屋グランパスのDFや田口も、後半は相手の守備者に捕まるようになってきます。しかし、相手がボールを奪いに来ているということは、空いている場所があるという事でもあります。空いている場所とは、愛媛FCのDFの背後です。その事を理解していたのは、シモビッチです。タイミングよくパスを受け、ダイレクトでDFの背後にパス。ボールを受けた途中出場の八反田から玉田にパスを通し、玉田が落ち着いてゴール。狙い通りの得点だったと思います。

青木と杉森が後半早々に交代した理由

この試合で名古屋グランパスは、後半7分に青木に代わって杉本、後半13分に杉森に代わって八反田を入れました。後半早々に2人代えるという事は、風間監督が前半のこの2人のプレーに不満があったということです。そして、後半開始時に代えかったのは、ハーフタイムに改善策を授け、改善がみられたら継続して起用しようと考えていたのだと思います。しかし、2人とも改善されなかったので、交代させられたのだと思います。

2人が交代させられた理由は同じです。2人が交代させられた理由は、相手の守備を崩そうとする動きが少なかったからです。青木も杉森も、相手にボールを奪われるようなプレーは少なかったので、ミスなくプレー出来ているように思えます。しかし、2人ともパスを受けて、相手ゴール方向にターン出来るのにターンしなかったり、パスを受けてもすぐに味方に返してしまったり、相手が待ち構えている場所でボールを受けたりと、相手の守備を崩そうとする動きが出来ていませんでした。

青木はボールを受けても1タッチで味方に返す場面が多く、求められているドリブルで相手の守備を崩すプレーにトライしようとしません。杉森は相手DFの背後を狙おうとする動きは悪くないのですが、背後"しか"狙っていないので、相手に動きを読まれていました。背後を狙うふりをして相手が空けた場所で受ける、あるいは和泉や田口に近い位置で受けようとして背後を狙うといった、臨機応変なプレーが出来ていませんでした。まだまだ2人とも、相手を見ながら最適なプレーを判断する余裕はないのだと思います。

ただこの2人には、幸運にも玉田というお手本がいます。玉田はボールを保持して相手に奪われない技術はもちろん素晴らしいのですが、最も素晴らしいのは、相手を見ながら最適な判断を選択出来る事です。相手にとって攻略されたら嫌なポイントをわかった上で、ボールをもらう前の駆け引きでわざとボールを受けたい場所を空けておいてから動いたりと、常にどうやったら相手の守備を崩せるのか先を考えてプレーしているという事が伝わってきます。

玉田も昔からこのような動きが出来ていたわけではありません。実戦での経験を積み、試行錯誤しながら身につけた動きだと思います。青木も杉森も、ボールを運ぶ能力はとても高い選手です。だからこそ、ボールを持っていない時にいかに相手を崩すか、玉田をお手本にして、身につけて欲しいと思います。

なお、後半14分の玉田の得点以降、愛媛FCに押し込まれる展開が続きました。もちろん、愛媛FCがボールを奪いにくる位置をより相手ゴール方向に近くしたということもありますが、杉森と青木を交代させたことで、相手DFの背後を狙う選手とボールを運べる選手がいなくなった事も要因です。だからこそ、杉森と青木には期待しています。

次節は力が試される試合

3戦勝利なしの後の2連勝。首位と勝ち点2差の4位につけていますが、まだまだ改善の余地はたくさんあります。4月以降無失点試合が1試合しかなく、2得点奪わないと勝てないという状況が続いています。また攻撃もシュート数が増えてきましたが、まだまだ相手が守るペナルティエリア付近を、意図した攻撃で攻略した場面は多くありません。やらなければいけないことは分かってきていますが、だからこそ改善の余地が沢山残されています。全く満足出来る状況ではありません。

次節は横浜FCとの対戦です。名古屋グランパスにとっては、現在の力が試される試合といっても良いと思います。どんな試合になるのか、楽しみです。

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