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2017年J2第3節 ジェフユナイテッド千葉対名古屋グランパス レビュー「今のチームの精一杯」

2017年J2第3節、名古屋グランパス対ジェフユナイテッド千葉は、0-2でジェフユナイテッド千葉が勝ちました。

この試合のプレビューで、僕はこんな事を書きました。

今の名古屋グランパスは、今節戦うジェフユナイテッド千葉の事を考えて戦う余裕はありません。まずは自分たちの出来る事をやるので、精一杯なはずです。今のチームの精一杯がどのくらいなのか、この試合では披露されるはずです。

図らずも、今の名古屋グランパスの「精一杯」がどのくらいなのか、よく分かる試合になりました。

90分通してジェフユナイテッド千葉のペース

試合は90分通して、ジェフユナイテッド千葉のペースで進みました。ジェフユナイテッド千葉は、守備の時は5-3-2というフォーメーションを採用し、FWとDFとの距離を短くし、ペナルティエリアよりかなり相手ゴールに近い所までDFラインを上げて守ります。

攻撃の時は、3-1-2-4というようなフォーメーションになります。DF3人とMFのアランダの4人でボールを動かし、DFの両サイド2人は、タッチライン付近まで移動し、1人1人の距離を広くとります。相手に複数人で囲まれないようにした上で、相手が積極的にボールを奪いに来たら、「4」のポジションにいるFWとウイングバックの選手か、MFの2人にボールを預け、相手の守備を外せるようにしています。

特に名古屋グランパスは、「2」のポジションを務める町田の受ける動きと、杉森と大武の間、内田と和泉の間のスペースにジェフユナイテッド千葉のDFや左ウイングバックのホルヘ・サリーナスから出てくる、斜めのロングパスに苦しめられました。

町田を抑えようとすると、ロングパスが出てくるし、ロングパスを警戒してDFラインを下げると、町田にボールを受けられてしまいました。2017年シーズンのジェフユナイテッド千葉の攻撃は、サンフレッチェ広島や浦和レッズの攻撃に似ていて、相手の守備者同士の距離を広げ、局面毎に数的優位を作り、相手の守備を崩そうとしてきます。

J1では局面の変化が決まっているので、相手が立つ場所にあわせて、マークする選手を決めて、フォーメーションを変更することで対応してしまうのですが、名古屋グランパスはそれをしませんでした。正確に言うと、今の名古屋グランパスにはそんな事が出来る余裕はないのです。自分たちの事で精一杯なのです。

DFの自信のなさがチームに伝搬する

この試合がジェフユナイテッド千葉の攻撃が機能したのは、名古屋グランパスのFWとDFとの縦の距離、右サイドの選手から左サイドへの選手との横の距離が広がってしまった事が要因でした。FWはボールを奪いにいきたいけど、DFは下がって守りたい。前と後ろに意志が一致しないため、ボランチを務めていた八反田と宮原(後半はワシントン)は広いエリアをカバーしなければなりませんでした。相手を押しこんで戦いたいなら、僕はDFラインをもっと相手ゴールに近いところに設定しても良かったと思います。できなかったのは、自信がなかったからだと思いますし、「失点したくない」という思いが強かったからだと思います。

僕はDFの自信のなさが現れていたのは、守備より攻撃だと思います。攻撃の時にDFがボールを持った時、ほとんど縦方向にパスを出す選手や、ドリブルでボールを運んで、相手を引きつけてくれるような選手がいません。

相手はパスコースを切っているだけなのに、ボールを持ちたくないからとりあえず近くの味方に渡してしまいたい。でも、FWはジェフユナイテッド千葉のDFラインの背後ばかりを狙っているので、ボールを受けにきてくれません。

仕方なくボールを受けにくる八反田が狙われて、相手に何度もボールを奪われたのは、当然の結果だと思います。FC岐阜戦でも同様のプレーがみられましたが、改善されていませんでした。もちろん八反田もミスが多かったですが、八反田に対して、爆発しそうな時限爆弾を自分のところで爆発するのを避けるかのようにボールを渡すのは、責任を押しつけているようで気の毒です。

印象に残ったのは、後半に大武が相手から1対1でボールを奪った瞬間、後方にいた楢崎がボールを受けようと、ゴールエリアから大武の方向に向ってダッシュしました。しかし大武は楢崎にパスをせず、タッチラインにボールを蹴り出す事を選択しました。その瞬間、楢崎がとても残念そうな仕草をしていたのが印象に残りました。

今の名古屋グランパスは、FWに佐藤、永井、玉田といった自信を持って自分のプレーを表現出来る選手がいるので、そこまでボールを運べばどうにかなります。実際、パスの受け手と出し手のタイミングがあった時は、中央のエリアを素早く崩す攻撃が何度も出来ていました。まだ1回か2回しか動きが連動しないのですが、この動きを試合中に続けていけば、必ず攻撃は連動していくと思います。

気になるのは、DFを含めた、ボールを奪った後のプレーです。ボールを受ける動きが少なく、ボールを相手に奪われないように運ぶプレーも少ない。これではボールは前に運ばれませんし、唯一ボールを前方に運ぶ事が出来る八反田の仕事は増えるばかりです。DFの自信のなさが、今の名古屋グランパス全体のプレーから見え隠れする「自信なさ気なプレー」の根幹になっている気がします。

自信なさげなプレーの要因になっている風間監督の戦い方

ただ、責任は選手だけではありません。自信なさ気にプレーさせているのは、風間監督の戦い方にも要因があると思います。僕が気になっているのは、選手のポジションです。

今の名古屋グランパスは、攻撃の時は4-3-3、守備の時は5-4-1で守ります。この試合では、前半は宮原がボランチから下がることで、攻撃の時にはDF4人になるようにし、後半は和泉がMFの位置に入ることで、DF4人になるようにしていました。しかし、この複雑なフォーメーション変更が、攻撃をスムーズに機能させていない要因だと思うのです。なぜそう考えるかというと、選手がまず「攻撃の時にフォーメーションを変えなければならない。」「守備の時にフォーメーションを変えなきゃならない」と、フォーメーションを変える事が目的になってしまうようなプレーをしてしまう要因になっているからです。

このフォーメーション変更をする理由は、まだチームの技術が不足しているので、守備の時は人数をかけて守る、攻撃の時は相手の守備をずらさないと攻撃できないという考えがあるのだと思います。しかし、今の名古屋グランパスの選手たちは、基本的な動きを実行するだけで精一杯です。過剰なフォーメーション変更は、選手のタスクを増やすだけのような気がするのです。

選手を配置している場所も、もっと整理しても良いと思います。和泉と杉森は、あまりプレーしたことがないサイドでプレーしていますが、守備の時に自分が守らなければいけないポジションばかり警戒してしまい、攻撃の時にボールを受ける動きが遅れています。ボールを運ぶ時にミスも多いので、2人を起用している事によるメリットも出せていません。むしろ、相手チームにとっては、狙い所になってしまっています。

FWが頻繁にポジションを入れ替わるのも気になります。風間監督は、縦のポジションチェンジは好みますが、横のポジションチェンジは好まない監督です。中央、左右のポジションは固定し、横ではなく、縦の動きで攻撃をさせる監督です。しかし、今の名古屋グランパスのFWは、永井、佐藤、押谷、玉田といった選手が頻繁にポジションを入れ替えています。しかし、ポジションを入れ替えても、相手の守備者を外す事が出来ていません。守備でもマークすべき選手が曖昧になり、相手に攻め込まれる要因にもなっています。

「嫌われるくらいに極端な事をやれ」

一番気になるのは、「嫌われるくらい極端に何かをしないと、物事は変わらない」と語っていた風間監督が、名古屋グランパス就任後、極端な事をしていない事です。たとえば、DFには本職のDFを起用せず、徹底的にボールを動かせる選手を起用するといった、実現させたいサッカーを表現するために、極端なくらい戦い方をしてもいいと思うのですが、今の風間監督の戦い方は、人に好かれようとして、逆に嫌われやすい人の対応に見えます。風間監督らしくありません。もっと極端に振り切って欲しいと思います。それこそ、嫌われるくらいに。

2013年の川崎フロンターレに比べれば全然マシ

でも、僕は名古屋グランパスの今後の対しては楽観的です。なぜなら、川崎フロンターレの時よりチーム作りのペースは早いからです。川崎フロンターレの時に、「これはヤバイ」と世間が騒いだのは、2013年の序盤でした。

2012年途中に風間監督が就任して半年が経過したころでした。何気なく戦って、何気なく上手くいっているように見えたチームが、本腰を入れて取組始めたように見えたのは、実は就任後に半年が経過してからでした。本当にこの半年が余計だったと、今振り返っても悔やまれます。

今の名古屋グランパスは、2013年前半の川崎フロンターレに比べれば、まだ全然マシです。あの頃の「監督替えなきゃいけないのか」という空気に比べれば、全然マシです。

名古屋グランパスは川崎フロンターレが半年かかった現状認識までのタイミングが、就任後3ヶ月で訪れています。悪い事ではありません。選手も、監督も、スタッフも、現状を正しく認識することが出来ました。甘くはありませんが、プレーをきちんと見直すと、上手く出来ている場面もあります。あとは、上手く出来ている場面が連続出来るように、日々の練習に取組み、個々の選手の役割を整理するだけです。

GW前までは、サポーターは我慢が必要かもしれません。しかし、今の取組を続け、少しずつ改善をしていけば、必ずチームは素晴らしいサッカーを披露してくれると思います。僕は、今後の名古屋グランパスに期待しています。楽しみです。

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