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2017年J2第18節 東京ヴェルディ対名古屋グランパス レビュー「櫛引に求められるリーダーとしての役割。杉森に求められる勝敗を背負う選手としての役割」

2017年J2第18節、東京ヴェルディ対名古屋グランパスは1-2で東京ヴェルディが勝ちました。負けましたが、全く悲観する内容ではないと思います。

ボールを保持し、相手の守備を自分たちがアクションを起こすことで崩せていました。ツエーゲン金沢、東京ヴェルディと敗れましたが、連敗したことでこれまでのやり方を急に変える必要はありません。むしろ、名古屋グランパスのレベルが上がっているため、序盤戦とは負け方が変わっています。勝ち点を失っている事は事実ですが、今後十分取り返せる内容だったと思います。

悔やまれるのは、玉田の負傷欠場です。1点を追う展開で玉田が起用できていたら、スペースもありましたし、違う結果になっていた気がします。交代出場した永井がよいプレーが出来なかったので、なおのこと玉田がいればと感じずにはいられませんでした。

東京ヴェルディは名古屋グランパス相手にどう戦うのか徹底されていました。まず、攻撃時に、名古屋グランパスのDFとGKの間のスペースを狙って、斜め方向のパスを出してきました。前節対戦したツエーゲン金沢も徹底的に名古屋グランパスのDFとGKの間を狙ってきましたが、この戦い方をするのは理由があります。名古屋グランパスのDFがボールを奪われた時のアクションが遅く、相手のFWをオフサイドポジションにしたり、相手に背後を狙わせないような動きが出来ていないからです。

名古屋グランパスのDFには青木と小林という、今までDFとしてプレーしたことがない選手がいます。この2人のプレーが原因で、相手にDFとGKの間を狙われているように感じるかもしれませんが、この2人のプレーが原因ではありません。原因は櫛引のプレーです。

櫛引に求められる役割は変わってきている

櫛引は足が速く、1対1の対応に優れ、ヘディングも強く、序盤戦の名古屋グランパスの守備を支えてきました。ところが、最近の櫛引はよいパフォーマンスが披露出来ているとはいえません。序盤戦の素晴らしいパフォーマンスと比較すると、櫛引の現在のパフォーマンスに不満をもっている人もいると思います。僕は、櫛引の実力の問題というよりは、櫛引が慣れ親しんだ守り方と、現在の名古屋グランパスに求められている守り方が違う事、そして櫛引に求められている役割が変わってきているからだと思います。

櫛引が2016年シーズンまで在籍していたコンサドーレ札幌は、相手に攻め込まれる機会が多いチームです。したがって、DFラインの位置を下げ、相手の攻撃を迎え撃つような守備をすることが多いチームでした。序盤戦の名古屋グランパスは、ボールを保持する時間が短く、相手に攻め込まれる時間も長かったので、DFラインが自陣深くにあるので、櫛引としては以前と同じような守り方をしていれば守り切れました。

しかし、シーズンが進むにつれて、名古屋グランパスのサッカーは急激にレベルアップしています。ボールを保持する時間が増え、相手にボールを保持される時間が減る一方、相手の攻撃を受ける時は数的同数か、数的不利の局面で相手の攻撃を止めなければならない場面が増えました。そして、DFはボールを保持するだけでなく、攻撃の起点として相手の守備を外すきっかけとなるプレーが求められるようになりました。

今までは下がって相手の攻撃を受け止めていればよかったのですが、今の名古屋グランパスには相手のFWにも自分たちが仕掛けて主導権を握る事が求められています。そして、まだ相手に仕掛けるような守備が櫛引には出来ていません。どうしても最初の一歩が下がってしまうのです。

今の名古屋グランパスのDFのリーダーは櫛引です。櫛引の位置によって、他の選手は立ち位置を決めています。櫛引が下がってしまえば、他の選手も下がってしまいます。コンサドーレ札幌でプレーしていた時は、櫛引はDFのリーダーとして他の選手を引っ張る立場の選手ではありませんでした。

しかし、名古屋グランパスでの櫛引は、DFのリーダーとして、周りの選手を引っ張り、守備で仕掛けるリーダーとしてのプレーが求められているのです。1人のDFとしての櫛引は素晴らしい選手ですが、DFリーダーの櫛引のプレーは物足りません。

今の櫛引に必要なのは、成功体験よりこの試合のような失敗だと思います。痛い失敗を繰り返しながら、少しずつ学んでいくしかありません。J1昇格を目指すチームにとって、痛い失敗を繰り返しながら学んでいく余裕はないようにも思えるかもしれませんが、櫛引が成長しなければ、J1昇格出来ないのも事実です。今後の櫛引のプレーに注目したいと思います。

今後も期待できる小林のセンターバック

この試合で櫛引とセンターバックを組んだのは、小林です。小林は初めてセンターバックでの出場でしたが、よいプレーをしていたと思います。1対1の時に相手のFWに対してボールを奪いに行き過ぎるように見える時もありましたし、背後を狙われるのが怖いので、櫛引より更に下がった位置をとる場面もありましたが、少しずつ慣れていき、後半はよいプレーが出来ていたと思います。

やはり、小林が入ると他の選手がプレーしている時より、攻撃時のMFやFWへのパスが早く、正確で、プレーのテンポが上がりました。もっとDFラインの位置からボールを運ぶようなドリブルを仕掛けて、相手を引きつけてパスをするようなプレーをしてくれれば、5-4-1で守る東京ヴェルディの守備を崩しやすくなると思いますが、たぶん次の試合ではボールを運ぶプレーも披露してくれると思います。中央のMFでは、田口、ワシントンの2人がよいプレーをしているのでなかなか出場のチャンスがありませんでしたが、今後はセンターバックで出場機会を増やしていくと思います。このポジションでプレーできれば、小林も長く選手生活をおくれるはずです。今後の小林のプレーに注目したいと思います。

試合に出ながら成長を続ける青木

名古屋グランパスは、開幕から左サイドバック、左ウイングバックでプレーする選手を固定出来ていませんでした。内田、和泉、杉森、杉本、押谷といった選手がプレーしましたが、満足出来るプレーをした選手はいませんでした。風間監督がサイドのプレーヤーに求めているのは、ボールを運ぶプレーです。相手の動きを見て、マークを外してボールを受ける動きと合わせて、「空いている場所」と表現するサイドを活用して、相手陣内までスムーズにボールを運びたいと考えているからです。

前節と今節に左サイドバックに起用された青木のプレーを見ていると、今後も左サイドバックでプレーする機会が増えそうな気がします。ドリブルでボールを運ぶプレーに長けており、攻撃時にミスも少なく、ボールを簡単に失う事がないからです。名古屋グランパスのサッカーでサイドで簡単にパスをミスしていては、サッカーになりません。内田が2試合連続で出場機会がないのは、ミスが多いからです。

もちろん、青木のプレーには課題もあります。ボールを受ける動きを止めてしまう場面もありますし、ボールを奪われた後に戻らなきゃいけない場所に戻るのが遅れる事があります。しかし、これらの問題は試合出場を続けていれば、解決する課題です。本人も自覚していると思いますし、愛媛FC戦の時のように、不必要にボールを保持している選手に近づくといった動きも減りました。試合を通じて成長し、少しずつドリブルという強みを披露し始めています。あのドリブルは凄いです。

青木はこのまま左サイドバックでプレーを続けるというよりは、慣れてきたらMFやFWでプレーするようになると思います。いつ、どのタイミングで、青木のプレーするポジションが変わるのか。青木のポジションが変わるタイミングは、名古屋グランパスのレベルが上がったタイミングだと思います。引き続き注目です。

「期待の若手」から「勝敗を背負う」選手に

最後に杉森のプレーについて書きたいと思います。この試合1得点を挙げましたが、後半に3回訪れた決定機をいずれも得点出来ず、逆転されるきっかけを与えてしまいました。ただ、ボールを運ぶ動きだけでなく、狭いスペースでボールを受ける事が出来るようになり、ボールを止める時のミスも少ないので、狭いスペースでも相手の守備を気にせずにプレーすることが出来るようになっています。序盤戦の自信なさげなプレーとはまるで違います。

この試合は確かに杉森がシュートを決められずに負けました。ただ、どんなFWもこのような経験はします。杉森は期待される若手から、勝敗の責任を負う選手へと急速に成長を遂げようとしています。これからも失敗をすると思いますが、今のプレーを続けていれば、必ず結果はついてくるはずです。

何より、この試合で決めた得点は、才能ある選手にしか決められない得点です。今日は杉森で負けたかもしれませんが、これから杉森のおかげで勝った。そんな試合が増えるはずです。

この試合に勝っていたら、得点を挙げた事で満足したかもしれませんが、負けた事で次の課題もみえたはずです。僕は杉森がどこまで成長するかで、名古屋グランパスの2017年シーズンがどうなるかは決まると思います。レビューで取り上げないときも、引き続き杉森に注目したいと思います。


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