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「何となく書く」から、「からだで書く」へ。

何となく書いてはいないだろうか。何となく書けないときはないだろうか。あるいは、書くことが当たり前になってしまって、「書くことってなんだっけ?」と疑問に思い始めている人はいないだろうか。なんだか、自分が書いているのではなく書かされているような気がする。「書く」とはいうけど、具体的にどういうことかわからない。

そんな疑問を考えるため、「かくからだ」というマガジンを作ることにした。

書くときには、何が起こっているのだろう。まず、「書きたい」と心が動く。書きたい、と思ったあなたは何をする?机に座って、パソコンを開くかもしれない。あるいは、手元のスマートフォンにメモをするかもしれない。紙にペンで文字を書き始めるかもしれない。それらは全て、「書く」ことなのだけれども、からだの動きはどれも違う。キーを叩いたり、画面の上で指を動かしたり、ペンを持って支えたり。そのやり方それぞれに、心地よさがあって、どんな文章が出来上がるのかも違う。

書くことの原始的な形は、やはり紙とペンで書くことだろう。一人で部屋にこもって、机にすわり、明かりをつける。ノートを開く、ペンのキャップをとる。そして、白い紙にペン先をあてる。ゆっくりと一つずつ体が書くことに向かっていることがわかる。それだけではない、お気に入りのノートとペンなら、それすらも体の延長に思えてくる。書かれた文字も、自分で書いた自分の分身のようなものだ。まるで、自分の体がいつもと違うような感覚になる。それだけで、書くことは特別なことに思える。

パソコンで書くと、キーを叩いて書くのだから、文字を手で書くのとは格段に文章を早く書くことができる。文字も均一で、きれいに並んでいる。書き直すことも、切り取って貼り付けることも簡単にできる。たくさんの文章を書いても、並び替えたり、整理したりすることができる。自分の考えを整理し、組み立てていくのに向いている。書いたものを、インターネットで人に見せたり意見を聞いたりすることもできる。文章を分析する研究室でもあり、どんどん書いていくための工場でもあり、文章が発信されていく放送局でもある。

スマートフォンならどうだろう。パソコンよりかはできることが少ないかもしれないけれど、どこでも書ける。電車の中かもしれないし、外で人を待ちながら書いているのかもしれない。旅先で文章を書きたくなるのは、その場所では何か特別なものが書ける気がするからかもしれない。そうしてみると、どこにでも持ち歩けるスマートフォンには机に腰を落ち着けていては書けないような状況で言葉を捕まえることができるかもしれない。スマートフォンはスナップショットをするのに向いているけれど、言葉のスナップショットもできる。俳人たちが旅をして俳句を読むように、都市の中を歩きながら作られた新しい詩が生まれるかもしれない。

まず、書きたいと思ったとき、書くための道具や方法を選ばなくてはならない。「書きたい」という思いだけで書くことはできない。

「書きたい」と思っている人は、そうした文章を作り出す具体的な手段を知りたいのではないだろうか。

世の中には、文章の書き方や構成の仕方などのコツや情報がたくさんある。しかし、文章についての知識があっても、自分が書く段になるとそれをどう具体的に言葉にするのかわからない。書いては見たものの、書き方があっているのかどうかわからず自信が持てない。

「書く」という具体的な動きから始まる文章論があってもいい。そこで、「かくからだ」というマガジンを作ることにした。

私たちは、書いている。からだによって書いている。この場合、からだとは単に肉体を指すにとどまらない。先ほどに述べた、「書く道具」も私たちの体の延長として書く行為を支えている。それに、考えている頭、いわば精神のような見えないものも書くときには働かせている。そして、「文体」という言葉に見られるように、文章の中では独特の身のこなし方がある。そうした、抽象的な「からだ」にも目を向けて書くことを考えていきたい。

目的は、「書くこと」をもっと、私たちのものにすることだ。私たちのからだで、私たちが書きたいように書く。書いている私たちのからだから「書くこと」を見つめ直すとき、そこにはもっと実感のある文章があるのではないか。「何となく書く」から、自分の「からだ」で書くことへ。それがマガジンのコンセプトである。

マガジンは、私個人によって編集、執筆される。だから、参考程度に聞き流して欲しい。「からだ」は一人一人ちがう。大切なのは、自分の地宅にある「からだ」を見つめ直すことである。

どういう書き方が良いのか、自分で見つけていってほしい。あるいは、すでに書いている人は自分の書くスタイルとの違いを楽しんでほしい。そしてさらに、それを自分らしく洗練させるきっかけにしてほしい。私も、このマガジンを編集することで自分の「からだ」を見つめ直したい。

そして、何よりも「書くことが楽しい」と思える人が増えますように。

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最後までお読みくださりありがとうございます。書くことについて書くこと、とても楽しいので毎日続けていきたいと思います!