初めて休日ができる

行幸は突然に訪れる。

昨晩、恥ずかしがり屋の工場長とやちむん屋のフトシさんと3人で夜明けまでインスタントラーメンをつつきながら話していたのは、2つの工房の夜の窯の番、徐冷炉の世話をどうしようか、ということだった。昔と違って工房も人が増えたし、交代で夜の窯番をすればいいんじゃないか? 一人にかかる負担はそれほど重くないはずだよ、とぼくはいった。

絶妙なタイミングだと思うが、朝屋我が、「窯のチェックはしないで済むようにした」という。その晩、彼は警備会社と話をつけて、2工房の夜間チェックをしてもらうようにした。徐冷炉の調整だけすればあとはどこにいてもいいという状況になった。あわせて、「このままじゃ俺の人生はなくなってしまう~ぅ!」とハタと思ったらしく、工房のメンバーが交代制で夜当番をするようにしたい、と言い出した。

屋我とぼくの願いは完全に一致。単純計算すれば、徐冷炉の世話は2週間に1回で済むようになる。警備会社がついたという時点で相当気持ち的にはラクになったが、徐冷炉の世話もしないで済むようになればこれはもう、ありえないくらい「自由」だ。

更に今朝、皆の休みの日を決めよう、という話になった。笑いが出てしまうくらい昨晩話していたことがスムーズに決まっていく。ぼくの休日は月曜日になった。当面は車もないので何をしようか、という感じだが、海も近いので、1日海を眺めて過ごすのもいい。一番飢えているのは映画を観ること。でもしかし、いまはぼくに休日ができた、ということだけで、相当嬉しい。この数年ガラス工房に関わっている間、今日の今日まで1日たりとも休みの日はなかったので、これからいよいよ「沖縄満喫」ができる。

住むところに関しては、当面屋我のアパートで同居という形になる。経済的にもそれがいいし(ぼく的にはストレスレス)、屋我が心配しているのは、「睡眠薬を飲んだあと起きれずに3日くらい家から出てこれなくなることが想定される」ということらしい。言われればたしかに、それは考えられること。一気にアパートを借りることを考えるよりも、程よくプライベートを保てるくらいがちょうどいいのかもしれない。いままでの工房ライフで心身ともに健康状態を維持できてきたのだから、あまりスタイルは変えないほうがいいのだろう。ときどき屋我は、「俺はお前のお母さんか!」と言うが、アパートを借りる件にしても、そこで心配な要素をぼく以上に把握しているところもあり、「お母さんだなぁ」と思えなくもない。ありがたいこと。それにしても、別れた彼女の「あなたたちは老後も二人で一緒に過ごしているよ」という「予言」があたってきているような気がする。なんだかなあ。

この頃屋我がよく人前でぼくを褒めるようになった。大体お互いふざけて貶しあうことが多かったので、ちょっとした変化。「工房最強の男」とも「お客さんの相手をさせたらニラカナが一番すごい」とも、その他もろもろ。沖縄に初めて渡ったとき、「都会っ子でモヤシのお前を大根にしてやる」と屋我は言っていたが、「最強」とまで言われるようになった。文句なく「大根」になっているだろうと思う。不便さは人間をたくましくするし、その不便さから人の心のありがたさを知ったことは本当に得がたき経験だったと思う。

現在工房にはPCが5台あり、今日無線LANルーターを取り付けた。皆がインターネットを利用できる環境が整う。海を眺めながらネットができる。素晴らしい。

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