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2020年6月福島取材⑱/埋め尽くされた野球場

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双葉中学を後にし、下羽鳥〜上羽鳥方面へ。

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この辺りはまさに除染中のイメージ。3月に来た際もそうだった。細野豪志は震災後、双葉町民の前で「採算度外視で除染をやりきる」と明言したが、その言葉が守られることはなく、9年以上に渡って放置されたままだった。このエリアは立ち入りできる範囲が非常に限られていて、行けると思えばバリケードで遮られることも多く、特にどこに寄るということもなく、ぐるっと回ってからそのまま双葉総合運動公園へ向かった。

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双葉総合運動公園は海沿いの高台にある。中間貯蔵施設エリア内にあり、ここには今もたくさんの放射性廃棄物を詰めたフレコンバッグの仮置場がある。これは僕の気のせいかもしれないが、2017年に訪れた時と違って、「中間貯蔵施設エリア」となってからは、入域が少し厳しくなったように感じている。

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双葉総合運動公園の中には野球場もあり、そこも御多分に漏れずフレコンバッグの仮置場となっている。双葉町といえば、甲子園に3回出場した名門、双葉高校がある。この野球場で、甲子園の予選会なども行われていただろうが、今ではこの有様だ。朝日新聞記者、三浦英之さんの著書「白い土地」にも双葉高校について書かれた章があるが、休校となってしまった双葉高校のことを、かつての卒業生たちはどう思っているのだろう。

浪江町、高瀬川脇のフレコンバッグ仮置場で上に引かれたシートは真っ黒に黒光りしていた。双葉町のここではグリーンのシートだ。緑なら見映えがいいと考えたそうだが、どうにもこの違和感は拭いがたい。

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高台から住宅街を見下ろす。普通に家が建っているのに、ここには誰も住んでいない。誰一人住んでいない。まさに神隠しのようだ。この日は月曜で、様々な作業現場からいろいろな騒音が聞こえていたが、その中には生活音は一切ない。

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何とも言えない気持ちで運動公園を後にする。中間貯蔵施設エリアのゲートでは、環境省の「除去土壌等運搬車」のちょっとした渋滞が出来ていた。これも「復興」の進むこの地域の風物詩ともいえる風景だ。何度この姿を見てきただろうか。

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この後、浪江町加倉スクリーニング場近くのコンビニへと移動する。実は前日、SNSを通じて朝日新聞の三浦英之記者とアポを取っていた。三浦記者は朝日新聞福島総局の所属でありながら、南相馬に住み込んで、そこで一人南相馬市局長として取材を続けていた(当時)。記事を読んで、SNSでやり取りもしつつ、ずっと会って話してみたいと思っていた。ただ、僕みたいな無名の売れないフリーの絵描きが最前線の記者にアポを取ろうとしたところで相手にされるわけがない。この日は、双葉町民で「原子力明るい未来のエネルギー」の標語を考えたOさんと一緒ということもあり、3人で会いませんかと声をかけてみたのだ。

広いコンビニの駐車場で、中古のランクルに乗った三浦さんは先について僕らを待ち構えていた。全身火傷のように日焼けした僕に驚きつつ、いくつか言葉を交わし、浪江町役場のまちなみマルシェへと移動し話すこととなった。

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僕自身は取材を受けるつもりはさらさらなく、いっぺん会って話をしてみたいと思っていただけだったが、そこで急遽「なぜ福島を描くのか」という取材を受けることになった。そんな取材を受けることは初めてだったが、話すにつれ自分の薄っぺらさが露わにされるようで、言いようのない恥ずかしい感情に襲われることとなった。

その後、三浦さんはOさんへも取材をする。この取材がきっかけとなって、震災から10年を経た21年3月の大きな記事につながっていったことは、本当によかったと思っている。

2020年7月7日の朝日新聞福島版には、国の言いなりだった飯舘村菅野村長の引退会見の記事の隣に僕の記事が載ることになった。これは三浦さんが狙ってやったことではないかと勝手に考えている。ここからOさんへの取材につなげることが出来たという意味で、恥ずかしいけど、この記事は僕にとっては大切な宝になったと思っている。

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<終わり>

ようやく1年前の取材記録が終わりました。通して読むと拙すぎる文章に嫌気がさすと思うのでそれはやめてください(笑
昨年8月と10月の取材記録もまだですが、頑張って写真だけでも何とか公開します。

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