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雲を染める夕陽が記憶にあるものよりもずっと濃かった 夏が来ていた 目線を下げると、アスフ…
消えた猫のもとめるもの モノローグの間は目を閉じて ごく手短に撫でろという だから消えたの…
まちかどにすわる犬 ゆうやけに照らされたまち 往来のくるまとひとを 犬はじっと あしたは晴れ…
ぴくぴくと動いている。あっ、という口のかたちのまま声を出せずに固まっている。手綱の先にい…
光に青猫の影 ぼろ布の塊を抱いた猫 錆び付いたフェンス アスファルトを焦がす日光 転がるよ…
夏が呼んでるらしい 季節にも重力が働くみたいだ 寒がりな高校生が夏の予定を話すのって面白い…
水辺の草むらに 女の死体が 虹色に 辱しめられている 草むらだから こういうこともあるのだと 年上の仲間は教えてくれた 女の死体が人間の形でいるのは稀で 巨大な昆虫や 液状の肉 無数の魚の目になっていたこともある 僕たちは女の死体を横目に ドロケイをして遊んでいた 女の目は 溶け落ちた骨の間に ぐずぐずの果物みたいに埋まっていた
目と鼻と月の 影が ロビーに連続して 隊列のように 怒声 鳴り響くから意識を 閉じて 嵐の後の…
私が死んでいる 世界を見つめるのは 死んでいない私だ 私は鈍摩した精神でずっと 死んでいる私…
自殺者の心奥にある どろどろにとけた幸福が 陽気な夜を呼び寄せたのは 楽しいねって笑う親子…
骨の天使が 異様に発達した肩甲骨を羽ばたかせながら 僕に近づき その鋭い指で僕の眼をくりぬ…
空隙のある肉体にうまれ それが満ちることのない 様は わたしの思想が現実を侵しはじめている …
失うことを恐れて 掌で覆った それは徐々にちいさくなり 最後はくろい一点の粒になった 概念 …
かなしいとか つらいとか ということは 意外に 重い鬱のなかでは思わなくて ただ どんどんどんどん 自分が透明になったり 宇宙が狭くなって 狭い箱のなかで縮こまった 僕が 真っ暗な空間をふわふわ漂っている そんな感じになるわけです