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詩まとめ

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日本紳士録のポエム
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#ポエム

七月の蝉

雲を染める夕陽が記憶にあるものよりもずっと濃かった 夏が来ていた 目線を下げると、アスフ…

3

冷たい猫

消えた猫のもとめるもの モノローグの間は目を閉じて ごく手短に撫でろという だから消えたの…

2

かたすみの町

まちかどにすわる犬 ゆうやけに照らされたまち 往来のくるまとひとを 犬はじっと あしたは晴れ…

3

ぽかぽか犬

ぴくぴくと動いている。あっ、という口のかたちのまま声を出せずに固まっている。手綱の先にい…

5

ふかふか猫

光に青猫の影 ぼろ布の塊を抱いた猫 錆び付いたフェンス アスファルトを焦がす日光 転がるよ…

2

夏の呼び声

夏が呼んでるらしい 季節にも重力が働くみたいだ 寒がりな高校生が夏の予定を話すのって面白い…

1

不定形の女

水辺の草むらに 女の死体が 虹色に 辱しめられている 草むらだから こういうこともあるのだと 年上の仲間は教えてくれた 女の死体が人間の形でいるのは稀で 巨大な昆虫や 液状の肉 無数の魚の目になっていたこともある 僕たちは女の死体を横目に ドロケイをして遊んでいた 女の目は 溶け落ちた骨の間に ぐずぐずの果物みたいに埋まっていた

目と鼻と月

目と鼻と月の 影が ロビーに連続して 隊列のように 怒声 鳴り響くから意識を 閉じて 嵐の後の…

1

ゲーム的人生ゲーム

私が死んでいる 世界を見つめるのは 死んでいない私だ 私は鈍摩した精神でずっと 死んでいる私…

2

ニヒリズムの枯れ

自殺者の心奥にある どろどろにとけた幸福が 陽気な夜を呼び寄せたのは 楽しいねって笑う親子…

恍惚な悪夢

骨の天使が 異様に発達した肩甲骨を羽ばたかせながら 僕に近づき その鋭い指で僕の眼をくりぬ…

2

比喩としての肉体

空隙のある肉体にうまれ それが満ちることのない 様は わたしの思想が現実を侵しはじめている …

3

意味の概念

失うことを恐れて 掌で覆った それは徐々にちいさくなり 最後はくろい一点の粒になった 概念 …

終末モノローグ

かなしいとか つらいとか ということは 意外に 重い鬱のなかでは思わなくて ただ どんどんどんどん 自分が透明になったり 宇宙が狭くなって 狭い箱のなかで縮こまった 僕が 真っ暗な空間をふわふわ漂っている そんな感じになるわけです