「💧と🙏」がなぜいけないか？

このような記事を書いた。

すると、安冨歩先生からこのようなリプライをいただいた。

私は、https://t.co/9PHfhBCZdb

このツイートの、

多分こういう人達出てきます💧
「・・・」
なのでファンタジー政策はご容赦お願いします 🙏

という枠組、特に💧と🙏を問題と考えましたが、岩崎さんは全体を含めて論じているので、論点は違います。が、考えていただけるのはありがたい。 https://t.co/BzT7pP2Vte

— 安冨歩（やすとみ　あゆみ） (@anmintei) December 30, 2019

そこでこの記事では、安冨先生が問題と考える「💧と🙏」について考えてみたい。

まず、なぜ「💧と🙏」が問題かというと、大きく三つあると思う。第一に卑怯。第二に嘘。第三に無自覚。順に見ていきたい。

第一に卑怯。議論でも喧嘩でも、相手を非難するとき、人は二種類の方法をとる。一つは「おまえは間違っている、とおれは思う」という方法。もう一つは「おまえのことは、誰も評価してくれないよ」という方法。

これは、支配力（相手への影響の強さ）においては、断然後者が上である。なぜなら、後者は人間の生理を利用しているからだ。そして人間の生理を利用することは、端的に卑怯なのである。

人間には「想像力がたくましい」という生理と「不安が際限なく募ってしまう」という生理がある。どちらも人間の生存には欠かせない。だから、どんな人でも多少の多寡はあれどこの二つを持っている。

そして「おまえのことは、誰も評価してくれないよ」は、この二つの生理に強力に訴えかける。人は、「誰も評価してくれないよ」といわれると、つい「みんなが評価してくれない孤独な自分」を想像してしまう。また、それに不安を募らせてしまう。そしてたいていの人は、自分のそうした生理にも気づけないので、この言葉に支配される。いわゆる「マインドコントロール」されてしまう。「誰も評価してくれないよ」は、誰もがマインドコントロールされてしまう呪いの言葉なのだ。

この呪いの言葉は、強力すぎるゆえに使うだけで卑怯だ。そして「💧と🙏」も、これと同種なのである。安冨先生を非難した人は、徹底して「自分ではなく他者があなたを評価しないよ」と言っている。つまり、徹頭徹尾「誰も評価してくれないよ」と言っているのだ。そして「💧と🙏」が、そのポジションを強調している。「涙」と「拝む手」は、自分が冷静であることのアピールだ。それはつまり、自分が当事者ではなく第三者として「俯瞰から見ている」ということのアピールに他ならない。

マインドコントロールには、この「俯瞰からの視点」が欠かせない。人は、俯瞰的な視点から「誰も評価してくれないよ」と言われると、主観的な立場から言われるよりも余計に悪い想像を働かせるし、不安も募る。

しかし、この「💧と🙏」を用いた人は、実は俯瞰的な立場にはいない。そうではなく、きわめて主観的な立場にいる。だから、「💧と🙏」は嘘なのである。自分の立ち位置を偽っているのだ。

続いて、第二の「嘘」。この人が「多分こういう人達出てきます💧」といったときの「💧」には、客観的な立場という意味に加え、もう一つの言語外メッセージが込められている。それは「私はあなたの味方です」というものだ。私は涙を流して、あなたが非難されることに同情していると伝えようとしている。

しかしこれも、有り体にいって大嘘である。なぜならこの人は、味方どころか敵の本丸だからだ。

人は、相手に「誰も評価してくれないよ」と言うとき、たいてい次の言葉を付け加える。「おれは評価してるけどな」。しかし実は、最も評価してないのはこの人なのだ。本当は「誰も」ではなく「おれは」なのだ。

しかし「おれは」と言ってしまうと、マインドコントロールの力が弱まる。だから「誰も」と偽る。確かに、「誰からも評価してもらえない可能性」もあるだろう。しかし確実なのは、そう言っているその人自身がまず評価していないということだ。それにもかかわらず、そうした立場を巧妙に隠す。これは、大嘘つきのそしりを免れないだろう。

第三に「無自覚」。この人は、上記の言葉を意識的にではなく無意識的に言っている。相手をマインドコントールしようとしていることを自覚できていない。確信犯ではなく衝動犯なのだ。

なぜかというと、この人自身がマインドコントールされているからである。まず間違いなく、親からマインドコントロールされている。親に同様のことをされて育ったのだ。

おかげで、それを真似ているうちにすっかりマインドコントロールが当たり前になってしまった。今ではそれをしていることも自覚ができなくなり、また指摘されたとしても理解できなくなっている。

ただし、マインドコントロールしたりされたりしていると、必ず心身に不調をきたす。健康でいられなくなる。だから、マインドコントロールすることは、相手と同時に自分も傷つけることになる。それもまた大きな問題なのである。

そのため、こうしたマインドコントロールは、何より本人のためにやめた方がいい。このままマインドコントールを続けていると、心身に深甚な不調を来たし、やがて人生がズタボロになってしまうだろう。

しかし、こういうことを説明しても、多くの人はマインドコントロールが深すぎて、なかなかそこから抜け出せない。だから、こういう人と出会った被害者は、ほとんどの場合でそこから離れるということしか対処手段がない。

しかしそうなると、マインドコントロールをしている人は、それを治すきっかけを得られないまま、マインドコントロールを継続するし、どんどん心身の不調をエスカレートさせてしまう。だから、ますます問題が拡散してしまうのだ。

この流れはしかし、どこかで止めなければならない。だから、マインドコントロールをしている人がいたら、それこそ本当に俯瞰的な立場にいる第三者が、その話法に対して異を唱える必要があるだろう。そうして粘り強く彼らの洗脳を解いていくことは、これからの社会においてきわめて重要な取り組みになっていくと考える。