なぜDaiGo氏はホームレスや生活保護の人は死んでもいいと言ったのか?
DaiGo氏が炎上している。「ホームレスや生活保護の人は死んでもいいと自分は思う」と言ったからだ。みなさんは、これについてどう思うか?
ぼくは、DaiGo氏がなぜこういう発言をしたのか、について考えた。その考えについて、以下に整理してみたい。
まず、氏は「心の中では、誰でもみんなこう思っているよね」ということを言いたい——という気持ちがあったのだろう。つまり、「誰も言えない本当のことを自分は言う」というポジションを得たかったのだ。
また、氏は「ホームレスや生活保護に限らず、死んでもらいたいと思う人は誰でもいるよね」という趣旨のことを言った。それは、一面には真実だろう。「こいつ、死ねば良いのに」と誰かに対して思ったことのない人間というのは、おそらく世の中に一人もいない。「自分はそんなことを思ったことはない」と主張する人もたくさんいるだろうが、それは自分で気づいていないだけである。そこに議論の余地はない。誰かに死んでほしいと思うことは、人間にとってきわめてナチュラルであり、また避けがたいものだからだ。
それを分かっている上で、DaiGo氏は「自分はホームレスや生活保護の人は死んでもいい思う」と言った。「このように氏が思っている」ということも、紛れもない真実だろう。DaiGo氏は、けして露悪的に(嘘で)そう言っているのではなく、紛れもなく心からそう思っている——とぼくも思う。
そのため、DaiGo氏のこの発言は、「2つの真実を言っている」という前提で考える必要があるだろう。その「2つの真実」とは、「誰でも死んでくれと思う人はいるはずだ」というものと、「DaiGo氏はホームレスや生活保護の人は死んでもいいと思っている」ということだ。
その上で、世の中には「自分は誰にも死んでほしくない」というふうに強固に考えている人が多い、という真実がある。そういう人にとっては、1の真実は認めがたいので、必ず「おかしい」という反論が来る。ただ、こういう人は、自分に「誰かに死んでほしいと思う気持ちがある」ということを未来永劫理解できないので、そもそも議論にならない。
そして、DaiGo氏にはこういう人と議論するつもりは端からないだろう。こういう人を端から相手にしていない。その代わりに、相手にしたい人がいる。それは、意識的に「こいつ死んでくれないかな」と強く思っているにもかかわわず、それを口に出して言えない人だ。そういう人が多いのも、また真実だ。なぜなら、先述したようにそれは人間にとってナチュラルなことだし、同時に、理解できない人も多いので、言うと「非人道的だ」と周囲から責められるからだ。それで、ほとんどの人はその気持ちを隠している。
そこへ、DaiGo氏がそれを言ってくれると、「自分の気持ちを代弁してくれた!」という気持ちになる。「代弁は好きへの第一歩」なので、そういう気持ちを持っていた人は、この動画を見てDaiGo氏のファンになるだろう。DaiGo氏は、そういうファンに向けてこの言葉を言った。そういうファンを獲得するための手段として言ったのだ。
2つ目の「ホームレスや生活保護の人は死んでもいい」という気持ちは、DaiGo氏の本心なので、それを本当か嘘か問うことには意味がない。したがって、ここで議論の対象になるのは、「そう思うことは是か非か」というものだ。
ここは、哲学的に難しい問題である。世の中は、建前上は「何を思ってもいい」ということになっている。いわゆる「思想信条の自由」というやつだ。また、実際問題として、人が何かを思うことを止めることはできない。
その一方で、実質的には、人は自由に思うことはできない。例えば、壮年の男性が「幼児とセックスしたい」と思うことは、言う言わない以前に、思うだけで強く社会から非難される。非難されるだけではなく、たいていは排斥される。社会から排斥されると、人は生きていけない。だから、たいていこういう本心を持っている人は、それを表明できないし、しない。
「ホームレスや生活保護の人は死んでもいい」と言うのも、そういう類いのひとつだ。これを思うことは、今の社会では許されていない。そのため、社会的排斥は免れないだろう。
ではなぜ、DaiGo氏はそれを発言したのか?
理由は簡単で、DaiGo氏は「社会的に排斥されない」と考えたのだ。むしろ、自分と同じように「ホームレスや生活保護の人は死んでもいい」と思っている人はたくさんいて、そこでファンを獲得できる、と踏んだのである。そう読んだのだ。
その読みは、ぼくは外れていると思う。そのため、DaiGo氏はこの後、自分の読みの浅さを後悔することとなるだろう。
ちなみに、「ホームレスや生活保護の人は死んでもいいか?」ということの議論もここには派生的に生まれてくるが、それは話しが長くなるので、また別のエントリーで書いてみたい。
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