タブー

タブーに触れる。

タブー【taboo】
〔ポリネシア語で、明確にしるしをつける意〕
① 聖・俗、浄・不浄、正常・異常を区別し、両者の接近・接触を回避・禁止し、それを犯した場合には超自然的制裁がくだるとする観念・慣習の総称。特定の人間(王・死者・妊産婦など)、事物(動植物・鉱物・食物など)、状態(出産・月経・成人・死など)、行為(戦闘・狩猟・近親相姦・食事・言葉など)、日時、方角などをめぐるものなどがある。禁忌。
② 言及したり行なったりしてはいけないこと。 「社長の前でゴルフの話は-だ」
            (大辞林第三版より)

もともと「タブー」というのは、それを犯すと超自然的な制裁がくだると信じられていた言動、行動のことだった。そこから超自然的な意味合いが薄れ「言及したり行ったりしてはいけないこと」の意味に転じた。

いま、後者の意味での「タブー」は、そこらじゅうにある。
反社会的な言行のみならず、最近話題の「忖度」もその一つだろう。

特定の芸能人を番組に出演させない方がいい(だろう)。
大物政治家の意向には逆らわない方がいい(だろう)。

そんな配慮が重なって「タブー」が生まれる。
忖度の話題において、いま一つ当事者の顔が見えてこないのは、責任逃れもあるだろうが、複数の人の暗黙の了解によって発生する「タブー」の性質に依るところもあるのかもしれない。

そして、その「タブー」に触れるとき、人には「ならず者」になる覚悟がいる。「超自然的な制裁」がくだされるかもしれないのだから。

なぜ急にこんな話をしだしたかというと、こうした「タブー」の意識は、身近な人間関係においても発生するものだなあと思ったからだ。

昨日、ぼくは奥さんにまたルノルマンカードを引いてもらった。
前回があんまりよかったから、さらにプライベートな悩みを扱ってみたかったのだ。

いまの状況を話して、「じゃあ引いてみるね」と引いたカードがこれだった。

棺に入れる。

いきなりの棺。
「なにかを一旦終わらせる」という意味だそうだ。
そのことによって、コウノトリの示す「よい方向への移動や幸運」がもたさらせるらしい。

とっさに「XXを終わらせたい!」と言った。
XXは説明が長くなるので省くが、ぼくにとって、奥さんに決して言ってはならないと思っていた「タブー」だった。

それを言ってしまったら、やめてしまったら、奥さんに心底失望されるし、自分にも失望する。

責任は果たさなければならないのだ。だから、やめてはならない。
旦那なのだから、つらくても頑張らなくてはならない。

結婚以来、そんなふうに思って取り組んできたことを「やめたい!」と叫んだとき、すこし泣きそうになった。

その後、話をしたり、聞いたり、何枚かカードを引いたりして、棺に入れるのは、どうやら本当にそれでいいと明らかになった。

うれしかった。

しかし、無罪放免というわけにはいかない。

最後に出たカードは、これだった。

熊と錨。

オーソリティーを示す熊と前回にも出てきた錨。

これは、ぼくにとって「プロの作曲家であること」を示していた。

かつて、ミスチルやサザンや B'z や、その他、幾多のアーティストがそうしてくれたように、会ったこともないどこかの誰かの、心を震わせるような曲をつくること。

感動をつくること。

これこそが、ぼく自身の最大の「タブー」だった。

そんなこと、畏れ多くてできない、とずっと思ってきた。
だって、それらの曲たちはあまりにも凄かったから。

でも、これだけまざまざと見せられると、やめたいと言っていたXXは、この本当の「タブー」を見ないための隠れ蓑になっていたのだとわかる。

それでこの日、ぼくは「プロの作曲家になる」という目的地を設定した。

自信はない。あるはずがない。でも、設定はできる。

奥さんのしてくれたルノルマンカードのセッションは、そんな人生の進路を変える時間になった。

㐧二音楽室でのぼくの仕事も、ふだんは言えない「タブー」を歌や曲のかたちにして解放してもらうことで、息を詰まらせていたものを外に出し、呼吸を深くすることを意図している。

奥さんの引くカードを通じて、自分が実体験してみると、歌にせよ、カードにせよ、中立的な媒体があることで、人はこんなにも息がしやすくなるものかと驚いた。

そして、「タブー」だと思っていたそれを口にし、日の目にさらすことで進んでいく物事があることにも気づかされる。

それは目に入ってしまえば、否応無くそれだとわかってしまう。

だから、昨日のセッションは、そんな感覚はなかったけれど、結構こわいことに触れた時間だったのかもしれない。

そのせいかもしれないが、今日は珍しく風邪を引いて寝込んでいる。

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