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光の透過率。

今日、那珂川のある作家さんに会った。

素晴らしい方だった。
そして僕は、クロマニヨンズの甲本ヒロトさんのこの言葉を紹介した。

えっとね、最後にね、さっきある雑誌の対談で言ったことと今話していたことがもの凄くリンクするので、まったく同じことを言うね。

えっと、月や星は輝いてないよね? 星って輝いてないよね? 反射してるだけだよね。ロックンロールの星たちも輝いてるんじゃなくて反射してるんだ。光っているのは太陽じゃないか。星が光ってるんじゃなくて、太陽が光ってる。月が光ってるんじゃなくて、太陽が光ってる。

そしてローリング・ストーンズが光ってるんじゃなくて、ブルースが光ってる。マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフが光ってるから、その光を受けたローリング・ストーンズが反射してるだけじゃないか。

(略)

だから、もし、これを読んでいるみんなが今の流行りの音楽でもいい、ヒップホップでもいいよ。何でもいいから「かっちょいい!」と思ったら、そいつらをカッコよく見せているものは、そいつら自身が「カッコいい」って思った奴らだから、それを追っかけて見て欲しい。そう思う。

そんで、その輝きをあなたも受けています。今この本を読んでいたり、今誰かを「カッコいいな」と思ってる人たちも、その輝きを今受けています。だから反射させてみてください。あなたはきっと輝く。自分が感動したっていうことは、人を感動させる力を持ったという証拠だから。勇気をもって楽しく生きて欲しい。だから「楽しいな」と思ったらもう勝ちだよ。だからどんどん反射させようぜ、輝きを。
(『ロックンロールが降ってきた日』より)

その作家さんは、文字通り「輝きを反射させている」人だった。
表現は現代的で尖っているのに、その光は驚くほど健やかだった。

最近、僕が素晴らしいなと思う人は、みな自分が薄い。
だからヒロトが「太陽」と呼ぶ、根元的な光がよく透過する。
それはどんなに尖って退廃的な表現をしていても、キラキラと輝いて見える。

「僕は内面から表現するアーティストではなく、歴史と時代性を大事にしているんです」とその作家さんは言った。先達から受け継がれてきたものを継承しつつ、いま、この時代にいる事を刻みたい。そして、作品を後世に遺したい。

と書くと野心的に聞こえるけれど、実際のその人は驚くほど何も持っていなかった。余計なものはもたず、ただいるものだけもって、ひたすら作る。

この作家さんに会ったことは、僕にとってとても大きなことだったように思う。あの健やかさ。あのシンプルさ。あの感じ。それが僕がこれから生きていく上での基準になるように思えた。

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