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シェアハウスとカレー

コンビニ1つの田舎町で生まれ
のどかな田舎で暮らしてきたわたしが
20歳で上京し
初めて住んだのは
三軒茶屋のシェアハウス。

きっかけは父。
モデルをやるなら海外に行きたいと当時 

意気込んでいたわたしに父が
ボーダレスシェアハウスについて
書かれた記事を
片手に
「こういうのあるらしい」と
見せてくれた。

外国人とも交流でき
知人がほぼいない東京で
たくさん友達を作れるかも。
あわよくば、彼氏も出来ちゃったり⁈と
父の提案にひとり 妄想を膨らませ

さっそく
ボーダレスシェアハウスの内見に車で4時間。父と二人東京へ向かった。

季節は冬。
行き交う人々、
聞こえてくる声、車の音 
あまりの騒がしさに
父と2人でそわそわ。

目的の内見するシェアハウスは駅から10分ほど。
「ここです」と
案内されたシェアハウス

外観は田舎にある
おばあちゃんの一軒家
2階建てだけどそこまで大きくない

ここに男女10人が住んでいるらしい。

中から明かりがもれている。
「だれかいるかなぁ?」と
担当者がドアノブをガチャっと開けた途端

懐かしい。昔実家でよく食べていた あのカレーのいい匂いがした。この瞬間わたしの心は奪われた。

. . . . . きめた!!
わたしここに住む!!!!

今まで一人暮らしだったわたし
こんな寒い日でも帰った時に誰かがいる
そしてだいすきなあのカレーライスの匂い
この東京で人の温かさを感じれる。

最幸じゃないか。
わたしはすでに玄関で心奪われ
このシェアハウスに住むことを決めた。

一方で父。
ドアが開き玄関に入った瞬間 靴の散らかりように驚いたのだろう。
「俺はいかない」とひと言。

内見のためにわざわざ5時間もかけてきたのに見ないの?と内心わたしは驚いたが、そのまま父を置いて中へ上がった。

木目の廊下
ソファテレビのあるキッチン
リビング 風呂場 トイレ
木でできた一軒家
ほんと田舎のおばあちゃんちのようだ

リビングで女性が1人
カレーを作っていた。
「こんにちは〜」と笑顔で声をかける。恥ずかしそうな様子。

「あの子が一緒の部屋に住む
 韓国人の女性だよ〜〜」と
紹介を受けた。優しそうな人だ。

彼女こそわたしの胃袋をつかんだ張本人。実際食べてはいないのだけど(笑)

そしてこれから一緒に住むことになるシェアパートナー。今でも続く友達。

思い起こせば、あの日内見に行かなければ 彼女がカレーを作っていなければ そもそも父が新聞を見ていなかったら

あの場所に住むことはなかったのかもしれない。

そして、楽しい思い出も、苦い思い出も、もしかしたら今の自分も、ここにいなかったのかもしれない。そう思うと、あのカレーの匂いは思い出も幸せも大切な人々も、すべてを引き寄せてくれたようにも思う。

内見の帰り道

父に「あそこに住もうと思う、カレーの匂いに惹かれちゃったんだよね」と 苦笑いしながら言うと 
父はいいとも悪いともいわず、好きなようにしたらいいと笑っていた。

あの冬の寒い日、あの場所であの時にカレーの匂いから感じた幸せ。

あの めぐり合わせに改めて感謝を感じることができた

4年後の今日この頃。



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