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【朗読後記】「尾生の信」を読む

 今年初めてのノートで今年初めての朗読です。予定では今月早々にうさぎに関係のある話を読もうと思っていたのですがしっくりいかなくて、他の話にしようかななどと迷っているうちに月末になりました。

 今回挑戦した「尾生の信」という作品は、橋の下で恋人と待ち合わせをしたもののとうとう現れず、満ち潮により増水した川で溺れ死ぬ男の話です、って酷い話だな……。「史記」にある故事で、固く約束を守ること、また馬鹿正直で融通のきかないたとえ、愚か者を言います。

 この作品はここまでくるのに何ヶ月もかかりました。大変美しい文章ですが、これは一人では無理と分かり、講師に指導を受けました。はじめの1ヶ月はいくら読んでもどういう音にすればいいのかわかりませんでした。なんとなく読めるようになってはきたものの、詩的な文章で起伏がなく、会話もないことから最初から最後まで一本調子になってしまいます。しかも言葉が難しい。ゆっくり読まないと聞き手には伝わらないでしょう。

 そしてこの「ゆっくり読む」というのが曲者です。「遅く読む」と「ゆっくり読む」は全く違う概念です。できているかどうかはさておき、ゆっくり読んだつもりです。自分ではこれまでとは結構変えました。一つひとつの言葉の処理が濃くて古い読み方です。それがこの作品にはベストな対処方法かと思いました。でもまだ未熟ですね。もうちょっとなんとかしたいです。この作品も時間をかけて作っていきたいです。

 でももっとさらっとこの世界観を表現できたら面白いんだろうな。将来、もっとサラッとでもゆっくりと表現したいなあと思います。現段階ではそれを実現できる方法を知りませんが。まだ色々なピースが足りません。

 芥川龍之介は生前、谷崎潤一郎と小説の物語性について論争しています。「物語の面白さ」を主張する谷崎に対して、芥川は「物語の面白さ」が小説を決めないと反論したそうです。紙面上で反論を交えながら連載されていたそうですが、自殺により幕を閉じました。人気作家の論争ですから注目を集めたのでしょうね。ちなみに2人の仲は良かったそうです。
 単なる読者としての意見ですが、物語があるかないかと作品の面白さは関係ない気がしますけどね。少なくとも芥川龍之介の作品を読む限りは。

お時間があれば聞いてください。

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