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サボりの代償

 GWの最終日の朝。外はいいお天気だ。今日は何をしようかなと窓を開けると、外はジャングルだった。

 驚いた私は一度窓を閉めた。おかしい。まだ夢の途中なのか?
 深呼吸をしてから再び窓を開けた。

 庭が一面草で覆われている。
 いや、もともと雑草は生えていた。GW中に草取りをしなければと思っていたが、今の状況はそれとは違う。
 我が家の敷地全体をカラスノエンドウが分厚く覆っている。そして庭ばかりか家全体を包むこむように絡み付いているのだ。
 家の壁を覆う草にはかわいらしいいピンク色の花が咲き、3cmくらいのさやえんどうのような実もたくさんなっている。
 見るとカラスノエンドウの襲来にあったのは我が家だけ。お隣さんはいつも通りだ。うちの前を通りかかった人が何人か立ち止まって我が家を眺めている。一体何が起こったんだろう。

 昨日までは普通だった。一晩でこんなに成長するなんて!昨日のうちに草取りをすればこんなことにはならなかったのに!!

 夫を叩き起こして外を見せる。
 連休最終日は草取りに1日を費やすことになりそうだ。いや、終わるのか?


 玄関を開けるのにも一苦労。ブツブツブツと音を立ててカラスノエンドウがちぎれる。あまり力を入れなくても切れるのが幸いだ。
 とにかく手を伸ばして掴んでは引きちぎるを繰り返すしかない。ゴミ袋はすぐにパンパンになる。なかなか壁が出てこない。ひたすらむしり取っていく。

「全くねー」
と聞こえるようにおばちゃん2人が言っている。隣家の高校生が
「マジやばくねー!」
と大笑いしながら緑の館を背景に自撮りしている。野次馬の数はどんどん増えるが誰も手伝ってくれない。

 むしっては捨て、むしっては捨て、いくらやっても減った気がしない。
「もうやだぁ〜!」
 私は泣きながら蔓草を引きちぎる。

 すると家の中から2匹の猫が出てきた。
「私たちが手伝ってあげますわっ!」
 2匹の猫たちは自慢の爪を使い蔓草を引っ掻き始めた。高いところもお手の物。壁もよじ登り、屋根の上からバッサバッサと草を落としてくる。
にゃにゃにゃにゃー!!
さすが猫の手!

 猫たちが蔓草を引き剥がす。私たちはゴミ袋に入れていく。見事な連携プレーで3時間後、家に絡み付いた草と庭に生い茂った草たちは綺麗さっぱりなくなった。ゴミ袋258枚分だった。

「いやあ……酷い目に遭った。」
 私と夫は汗を拭きながら玄関に入った。

「酷い目にあったのは私たちの方ですわ!」
 猫たちが玄関に並んで座り私たちを睨んでいた。

「はい。その通りでございます。あなたたちのおかげで仕事が早く終わりました。大変感謝しております。どうもありがとうございました。」
 私と夫は深々と頭を下げた。

「それじゃ全然足りないわ!我々は今後、人間たちにこれらを要求する!」
と、紙を差し出してきた。

① 毎日おやつにちゅーるーを1本出すこと。
② カリカリご飯はシーバ・デュオシリーズにすること。
③ 座椅子、ソファー、座布団は常に我々が優先であること。
④ 我々が膝に乗りたいというときには人間には拒否権はない。
⑤ 我々が遊びたいというときには人間には拒否権がない。
⑥ 我々が撫でるように求めるとき人間に拒否権はない。
⑦ ④⑤⑥について、これらを終了する時間は我々が決める。人間が勝手に止めることはできない。

かくして私と夫は猫たちの家来となった。    <了>


★こちらは創作課題「アシスタント」で書きました。
こちらにまとめていただきました。

※トップ画像は渦巻のようなデザインのデジタル画です。黒、緑、紫、黄色などがマーブル状に混ざりながら渦巻いています。


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