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【朗読後記】「沼」に嵌って出られなかった話

まさに底なし沼でした

芥川龍之介の「沼」を朗読しました。まだまだうまく読めていないのですが、ここまで来るのに3か月かかりました💦
ゆっくり読んでも7分かからない短い話なのですが難易度高けぇ~~!今まで読んできたものの中で一番難しいかったです。かっこいい文章なので上手に読めれば相当かっこいいはずなんだけど、かっこいいとか悪いとかそういうレベルで読めるまでには至らず、朗読の体を為すことで精一杯でした。

でもこれどうしてこんなに難しいんだろう。
ストーリーというほどのものはなく、主人公(霊魂)が静かに思っているだけなんですよね。感情の動きはあるのだけど字面的には地味。同じフレーズの繰り返しとか、言い換えとか、視点の変化があって、細かいところで超かっこいいのだけど、普通に文字を読み上げたら台無しになってしまう。
また自分自身の読み方も改造中なので、私自身が定まらなかった。よりによってそんな時期にこんな難しいのに取り組まなければいいのに、もう無理しやがって…😞

今の朗読の講師に替えてから半年くらい経ちましたが、今まで学んできた朗読の延長線上にある部分と、新たに得たい技術とがあり、それがなんとなく頭と耳でわかるようになってきたところです。
聞く耳が出来てきても自分の口が追い付かない。耳がしっかりすればするほど、読めなくて落ち込むという負のスパイラルに陥ります。今回のスパイラルは結構激しくて、へこみっぱなしです。

「沼」の朗読はPodcastに2種類アップしています。
1つでびしっと決めたかったのですが納得できず再録。1度目よりは納得できるものにはなりました。もう自分だけのこだわりなので、私以外の人はその違いに興味はないでしょう。
一応書いておきますと、1回目のものは音域が狭いです。2回目のものはそれよりも音域を広げ、発声も変えました。1回目は少し前まで多く使ってきた声の出し方を多用、2回目は改善中の発声で目標とするものにだいぶ近づいてきた声です。舞台用っぽく聞こえるかもしれません。どちらがいい悪いというのはないのですが、今私は音域の広げて、表現をより豊かにしていきたいと考えているので目指している方向は後者が近いです。

【今回の学び】
一音も気を抜くな。力を抜くことと気を抜くことは違う。
とにかく文法!
クリアな言葉は頭と末尾で決まる。
つながりは息遣いで決まる。
「粘り」も表現に使えるぞ!

大変だけどだから面白い。朗読だいすき!まだまだ沼に嵌るぞ!

「沼」という作品について

この話、地味な内容なのですが面白い箇所が2か所あります。
一つは中に出てくる「invitation au voyage」という歌のこと。フランスの作曲家アンリ・デュパルクが作った歌曲です。作曲家についてもこの歌詞についても興味深い話があります。これについてのトークをポッドキャストにあげました。さらに、Spotifyのアプリからだとトークの後にジェシー・ノーマンが歌う「L‘invitation  au  voyage」を聞くことができます。アプリを入れてもいいなという方は是非聞いてみてください。プレミアムユーザーはフル再生、無料ユーザーでも30秒音楽を聴くことができます。

もう一箇所はラストにあるハスの花が咲くシーンです。
ここでの表現「玉のような睡蓮の花」は、芥川の作品「蜘蛛の糸」にも出てきます。極楽の蓮池に咲く花です。
「沼」では、主人公の「おれ」が沼に飛び込み自殺をします。ラストに自分の口から茎を伸ばし、美しい白いハスの花が咲きます。
芥川龍之介の死生観や宗教観を調べたわけではありませんが、睡蓮の花は極楽の象徴なのかなと思いました。なのでおれが最後に見た不思議な世界は極楽であって、この話の救いなのかなと感じました。

発展途上な朗読ですがよかったら聞いてください。



楽譜が見られる動画がありました。

フランス語の歌詞と日本語訳が出ています。

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