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認知症と物忘れの違い




 

認知症と老化は別のプロセス


加齢による記憶の衰えと認知症は全くの別とは言い切れません。加齢によって脳の細胞が減少したり、神経伝達物質が減少したりすることで、記憶力や学習能力が低下することは自然な現象です。しかし、これが認知症につながるとは限りません。認知症は、加齢だけでなく、遺伝的な要因や生活習慣や環境などが複雑に影響して発症する病気です。認知症には、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型など、様々なタイプがあります。また、若年性認知症やMCI(軽度認知障害)など、年齢や症状の程度によっても分類されます。これらの病気の症状が認知症です。

記憶の衰えと記憶の破壊の違い


病的と病的でない違いの線引きは、記憶に限って言えば、怒ったことを忘れても、何かのきっかけ(会話、テレビ、音楽など)で思い出すことが出来れば老化と言えます。これは、記憶の定着や再生に関わる脳の部位や機能が衰えているだけで、記憶自体は失われていないことを意味します。一方、思い出すことが出来ない、または思い出したとしても、その時の状況や感情などを覚えていない場合は認知症と言えます。これは、記憶そのものが破壊されていることを意味します。認知症の場合、記憶の欠落はランダムに起こるのではなく、一般的には新しい記憶から古い記憶へと順番に消えていきます。これは、記憶の定着に関わる海馬という脳の部位が障害を受けるためです。しかし海馬はトレーニングによって改善することが解ってきています。これを脳の可塑性と言います。壊れてしあった脳神経は復活しませんが、その代わりの回路、神経が育つのです。

記憶以外の認知症の症状


また、認知症は記憶の障害だけではありません。例えば最初に現れる障害が、匂いなど感覚の衰えです。これは、嗅覚や味覚などの感覚情報を処理する脳の部位が障害を受けることで起こります。感覚の衰えは、食欲や嗜好の変化や、物事に対する興味や関心の低下などにつながります。また、頭はしっかりしているのに道を間違えるなど、方向感覚や空間認識の衰えも認知症のひとつです。これは、空間や位置を認識する脳の部位が障害を受けることで起こります。方向感覚や空間認識の衰えは、迷子になったり、物を置き忘れたり、身の回りの整理ができなくなったりする原因になります。

認知症という事


記憶に限って言えば物忘れは認知症に限らず、誰にでもある現象です。認知症で忘れるという事は、記憶が削ぎ落ちてしまう事です。したがって、思い出すことができません。物忘れは、何かきっかけがあれば思い出すことができます。

例えば、健常者が夕飯で何を食べたか思い出せないのは、食べたことは覚えているが、内容が思い出せないだけです。記憶の引き出しが開かない状態です。一方、認知症の場合、食べたこと自体を忘れています。お腹が膨れているとも思わない。こういう状態です。食べるという事は、記憶でなく感覚の問題でもあります。したがって感覚に集中すれば(よく使う紀気を付ける)感覚が戻る可能性はまだあります。改善も期待できますね。

また物忘れや感覚の衰えが有っても人に迷惑をかけずに自立して生きていければ認知症ではないともいえるのです。死ぬまで楽しく元気に暮らしましょう。
以上参考になれば幸いです。


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