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新型コロナワクチンと妊娠時の接種についてまとめてみました

はじめに

新型コロナウイルスは変異株の感染が拡大しています。東京・大阪・沖縄では7月12日から、再び緊急事態宣言期間となります。

新型コロナ感染拡大を食い止めるため、ワクチン接種が始まり、高齢者の接種率は7月10日現在で1回目を終えた人が75.75% 2回目を終えた人が45.66%となっています。

“政府が11日に公表した10日時点の最新の状況によりますと、1回目の接種を受けた高齢者は全国で2688万1960人で、高齢者全体の75.75%となりました。2回目の接種も終えた高齢者は、1620万4137人で45.66%です。”

高齢者のワクチン接種率 1回目75.75% 2回目45.66% 10日時点(NHK)

ワクチン接種は64歳以下の人にまで広がってきています。そこで「妊娠時にワクチン接種を受けても良いのか?」というような疑問を持っておられる方が多いのではないでしょうか。

まだまだ情報が少なく、どれがフェイクニュースか判断するのが難しいという状況にあります。そうした中、いくつかのメディアや専門家の方々などがこの件を取り上げていらっしゃいますし、現時点での見解などの発表も行われているので、まとめてみたいと思います。

ワクチンは妊娠に影響があるのでしょうか?厚生労働省のサイトでは・・・

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新型コロナワクチンとして接種されているのはファイザー製とモデルナ製です。どちらもmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンと呼ばれるものです。mRNAワクチンはワクチンとして遺伝情報を人体に投与するもので、新しいワクチンです。そのため、多くの人が接種に不安を抱えています。

これに対して、厚生労働省は「新型コロナワクチンQ&A」というサイトにおいて、ワクチンで注射するmRNAは短期間で分解されるため、人の遺伝情報であるDNAに組みこまれるものではないと解説しています。

“身体の中で、人の遺伝情報(DNA)からmRNAがつくられる仕組みがありますが、情報の流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAはつくられません。こうしたことから、mRNAを注射することで、その情報が長期に残ったり、精子や卵子の遺伝情報に取り込まれることはないと考えられています。”

新型コロナワクチンQ&A(厚生労働省)

また、「妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができるか?」という質問に対して、厚生労働省のサイトではmRNAワクチンが妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告が現状はない、という回答を示しています。

“妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方でも、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンを接種することができます。妊娠後期に新型コロナウイルスに感染した場合に重症化リスクが高くなるという点においては、ワクチン接種のメリットが考えられます。”

新型コロナワクチンQ&A(厚生労働省)

ワクチン接種について生殖遺伝子検査サービスの研究所の考え方は・・・

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そうした中、生殖遺伝子検査サービスの研究所で不妊治療のための検査を行なっているアイジェノミクスという会社がワクチン接種についての見解を公式ブログで発表していました。

アイジェノミクスでは「明確な答えがない」としています。その理由として挙げているのが「ワクチン接種は世界的に見ても、まだまだ事例が少なく、確かなデータが存在していない」ということでした。

その上で海外ですでに公表されているデータの中で重要だと思われるものを紹介されていました。遺伝子についての検査を行っている研究所ですから、参考になるのではないでしょうか。

中でも米国のアメリカ国立衛生研究所(NHI)という有名な研究所の所長で遺伝学者のフランシス・コリンズ博士が調査結果を発表しているものから、重要だと思われる部分をまとめてくれています。

NHIが調査の対象にしたのは2020年12月から2021年3月までの間にワクチン摂取した18歳から45歳までの103人の女性なんだそうです。そのうち、妊婦は30人の妊婦、授乳中の女性は16人。30人の妊婦の多くが1回目のワクチン接種時点で妊娠中期だったということです。

接種したワクチンのメーカーはファイザー、モデルナ、バイオンテックのいずれかで、接種したのはmRNAワクチンだったいうことです。

“この接種を行なった結果、妊婦であっても問題なくSARS-CoV-2の抗体を獲得できたこと、胎児のへその緒や母乳からも抗体が検出されたことが確認されており、妊娠中のワクチン接種が胎児の抗体獲得にも役立つことが示唆されています。”

新型コロナウイルスワクチン接種と妊娠・不妊治療、着床の窓への影響は?(アイジェノミクス)

妊娠時のワクチン接種、国立成育医療研究センターの考え方は・・・

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受精・妊娠に始まり、胎児期、新生児期、乳児期、学童期、思春期を経て次世代を育成する成人期へと至るライフサイクルに生じる疾患(成育疾患)に関する医療(成育医療)と研究を推進するために設立されたという国立成育医療研究センターも妊娠時のワクチン接種についての考え方をウエブサイトで公表しています。

“妊婦さんが新型コロナウイルスに感染すると、感染していない妊婦さんと比べて重症化する割合や早産等が多いとの報告もあり、ワクチン接種のメリットがあると考えられています。”

妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について(国立成育医療研究センター)

国立成育医療研究センターは米国におけるmRNAワクチンを接種した妊娠中の女性の登録調査で副反応の頻度は妊娠していない女性と同程度であり、流産や死産、早産などの頻度は一般的な妊婦さんと比べて上昇していないということという報告があったことを紹介しています。これは米国疾病予防管理センター(CDC)の発表によるものだと思われます。

米国で行われている調査について、NHIのデータを解説していたアイジェノミクスのブログにこのCDCの調査についてのリンクが紹介されていました。

“また、米国では健康に関する信頼できる情報の提供を行っている保健福祉省所管の感染症対策の総合研究所「米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention=CDC)」がさまざまなデータの発表や勧告を行っています。米CDCから発表される勧告などは多くの文献やデータの収集結果を元に作成・発表されていることから、日本も含む世界各国の医療関係者から高い信頼性を得ています。その米CDCのデータベースには、2021年6月14日時点で124,597人のワクチン接種済み妊婦が登録されています。”

新型コロナウイルスワクチン接種と妊娠・不妊治療、着床の窓への影響は?(アイジェノミクス)

妊娠時のワクチン接種について産婦人科医の見解を紹介している記事もありました

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ベネッセのサイト「たまひよ」では産婦人科医の先生に取材を行い、その見解を紹介していました。取材を受けられていたのは日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授で、日本産科婦人科学会専門医の早川智先生。

日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会が6月17日、ワクチン接種に関して、「妊娠12週までは避ける」という項目を外し、「希望する妊婦さんはワクチンを接種することができる」という見解を出したということを紹介・解説されておられます。

「接種前にすべきことってあるの?」「副反応が怖くて接種をためらってしまう!」といったことについても丁寧に解説されています。

“新型コロナウイルスワクチンは、接種するメリットがデメリットを上回ると考えられているものです。流行状況によりますが、感染者数が多い地域や、人とたくさん会う職業の方は接種したほうがいいと私は思います。また、肥満や気管支喘息、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群など合併症がある方は日本でも重症化している例があるんですよ。そういう方は積極的に接種を考えることをおすすめします。”

新型コロナウイルスワクチン接種、妊婦が受ける際の注意点は?(たまひよ)

妊娠時のワクチン接種、山中伸弥先生の考え方は・・・

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京都大学iPS細胞研究所所長・教授で2021年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥先生はご自身が運営されている「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」というサイトにおいて「妊娠とワクチン接種」というタイトルでウイルスに感染した場合のリスクについて、解説されておられます。

“このメタアナリシスによると、妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、子癇前症(妊娠に伴う高血圧や蛋白尿)が約1.3倍、早産が約1.8倍、死産が約2倍、それぞれのリスクが増大しています。また妊婦のICU、および新生児のNICUへの入院リスクが、それぞれ4.8倍と3.7倍増加しています。さらに新型ウイルスに感染して重症だった妊婦は、軽症だった妊婦に比べて、子癇前症や早産のリスクは約4倍増大していました。”

妊娠とワクチン接種(山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信)

妊娠時のワクチン接種はWHOの考え方も変わってきているようです

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一方、福岡市内の一般病院に内科医として勤務されている内科医、酒井健司先生が朝日新聞に寄せたコラムで2021年6月15日付のWHOの文書を参照したことについて言及されています。

そこでWHOがこれまでのワクチン接種を推奨しないということから、「妊娠女性へのワクチン接種のメリットが潜在的なリスクを上回る場合にはワクチン接種を推奨する」という方向に変わったと紹介され、その理由についても解説しておられます。

“推奨度合いが変化したのは、広くワクチンが使用され妊娠女性に対する効果や安全性のデータが得られたからです。発熱や倦怠(けんたい)感といった副作用は他の成人女性と同程度ありますが、胎児や新生児に対する悪影響はいまのところ報告されていません。データが積みあがっていくに従い推奨度合いが変わるのは普通のことです。データの収集は続けられていますので、今後、推奨度合いが変わる可能性はあります。”

妊娠中のコロナワクチンは? 推奨判断をWHOが改訂(朝日新聞デジタル)

まとめ

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ワクチン接種について、最終的にはかかりつけ医に相談して判断するしかないというのが現状のようです。この問題について、残念ながら明確な回答はないというのが実際のところでしょう。

この「妊活パパたち」でも新しい情報が集まってきたら、またまとめという形でご紹介したいと考えます。

妊娠中のワクチン接種についての参考リンク

日本産科婦人科学会・日本産婦人科感染症学会の発表(2021/05/12)

日本産科婦人科学会の発表(2021/06/17)

厚生労働省・新型コロナワクチンQ&A



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