陰謀論が見せる幸福な世界。秩序の破綻と世界革命

我々は秩序のもとに生きている。秩序を支えるのは神話だ。
いまの日本を支配するのは、才能あるもの、努力したものが報われるという神話だ。
だが、これは神話というだけあって、完全な作り話だ。しかし、大谷翔平をはじめ、圧倒的な才能を持った努力した人間、成功者を自称する連中が神話は本当だとみせつける。
アメリカにはもっとたくさんこういう神話を信じている連中がいる。イーロンマスク、トランプ……。
だがもし、それが完全に嘘で、秩序なんてものは実はなく、非常な恣意的で無秩序なものだとしたら? そしてそれをわたしたちは心の底では知っているとしたら?
そう。その時体制は崩壊する。
ペレストロイカがもたらした破滅、ソ連は神話が嘘だったと伝えたことで終焉した。
 
世界に秩序があると私たちは信じたがる。
最近世界中で流行の共同謀議論、世界の支配者たちが決めている、そういう言説の背後には秩序の希求がある。
もし秩序がないのであれば、我々はなぜ自分がこんな目に遭っているのかを説明することができないだろう。
世界の支配者たちが勝手に決めている、そう信じることができれば、いまの状態を作り出しているのが世界の支配者たちの悪巧みだと納得できる。
こうして秩序は維持されるのだ。
共同謀議論は、実は世界の支配者たちの権力を強化する働きを持っている。そして、陰謀論を信じる者は自分の責任を彼らに押し付けることができる。
だから陰謀論がなくなることはない。双方にとってそれは都合がいいからだ。
秩序が崩壊する時、我々は理不尽を見る。
ここでいう秩序が崩壊するときというのは、「実は世界の支配者なんてのはいない」あるいは「世界の支配者は思ったより無能で危機に対処できない」ことが判明した時だ。
そのとき、わたしたちは理不尽から回復する希望を完全に失ってしまう。なぜなら、これまでは連中が我々にたいして陰謀をしかけて苦しめているからで、連中を改心させることができればうまくいく可能性があった。だが、単純に彼らが失敗し続けただけなのだとすれば、もうどうしようもないじゃないか。
理不尽が正されない時、我々は絶望するかあるいは怒り狂う。それは個人に対する嫉妬を遥かに超えた形而上的な怒り、それを否定する怒りを作り出す。その時心のバランスシートは崩壊するのだ。
革命を仕掛けるのはこのタイミング以外にない。
 
革命家になるためにはこの理不尽を自ら体験しなければならないのだろう。だから、わたしは才能があり努力をし、天の導きを受けているにもかかわらず未だに結果を、正当な対価を受け取れる気配すらない。
わたしはそのように納得することでかろうじてこの形而上的な怒りを抑え込む。
もしこれを抑え切れないのだとしたら、その時は世界が壊れる時だろう。
 
なぜ大洪水が起きたのか少しだけ理解できた気がする。きっと、大洪水前の世界は残酷で理不尽だったのだ。
だから壊れた。今回も同じになるのだろうか? それはわたしにはわからない。

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