日記 2024.10.5(土) 誰も乗らなくなった車。
念のため毛布をかけて眠った。ぽかぽかの布団の中が気持ちがいい。昨日はコインロッカー代を浮かせるため、重い荷物を持ってあちこち歩き回ったので両肩が筋肉痛。腕を動かすたびにいたい。
7時過ぎに起き上がりカーテンを開けて外を眺める。お母さんの部屋の窓からはブッポウソウの巣箱がよく見える。今年もうちで子づくりをしてくれたブッポウソウはもう旅立ってしまった。ギャーギャーとにぎやかな鳴き声も姿もなく静かな巣箱。また来年も来てくれるかな。楽しみに待ちたい。
朝ごはんの支度をする。昨日のお味噌汁の残りと、圧力鍋で炊いたご飯。お母さんがブリのカマを塩焼きにする。美味しそう、朝から豪華だな。
今日はお父さんは朝からリハビリへ。お母さんはおでかけの予定はないらしい。わたしは掃除を進めていこうと思う。昨日お風呂に入りながらお風呂掃除をしておいた。昨日のわたしが今日のわたしにやる気を与えてくれる。掃除を進めておいてくれてありがとう。
どこから掃除をしようかと迷った時は玄関から掃除をするようにしている。外用の箒を手に取り、実家の小さな玄関を掃除する。玄関にはスリッパくらいしか広がっていないからあっという間にきれいになる。玄関掃除はすぐに達成感が得られるし、箒を使ってほこりや汚れを掃く作業はやっぱり気持ちがいい。だんだんエンジンがかかってきた。そのまま窓の外、サッシのほこりもとっていく。ヤモリさんが生息するようになってから窓の汚れが目立つようになった。彼らは掃除するきっかけをくれているのだ。
玄関と外を掃いたら一旦掃除は満足してしまった。昨日買ったごぼうを味噌漬けにしてみたいので台所へ。お母さんはわたしが掃除したりしている間に別のことをしたかったらしいが一緒にごぼうの味噌漬けを作ってくれることになった。
ごぼう200gをしょうゆを加えたお湯で4分くらい茹で冷ましておく。味噌に黒砂糖、切りごまを混ぜたものを床にしてごぼうを包んでひと晩漬ける。これでごぼうの味噌漬けは出来る。長く漬けても美味しいらしく味の変化を楽しんでみたい。
実家で今食べている味噌は年代物のようで塩は枯れ、まったく角のない不思議な味わい。古い味噌の方が薬効は高いというけれど、こういうものなのかと思った。お味噌汁に入れる時はたくさん入れても薄く感じてしまうので、しっかりと出汁を効かせて仕上げたほうがいい気がした。新しい味噌と混ぜたりして使っても楽しそうだ。
お昼ごはんはお母さんと二人で食べる。朝ごはんをたっぷり食べたのでもうお昼?さっき朝ごはん食べたようななどと言いながら二人で笑う。お味噌汁の残りとご飯で簡単に済ませたけれどそれだけで十分だった。
お昼寝をしてから気になっていたパン屋さんまでお母さんとドライブ。山の中の狭い道を通り近道をしながら隣町のパン屋さんへ行ってみる。手入れがされていない放置された畑や田んぼはセイタカアワダチソウが群生していた。黄色い花がきれい。すこし迷いながら辿り着いたパン屋さんは、気さくなお兄さんとお姉さんのお店だった。シナモンのドーナツ、あんぱん、紫芋のパン、食パンを買った。包んでいただいたパンを受け取るとずっしりと重い。こんなに重たいパンは初めてでなんだか面白い。
車の燃料をすこしだけ追加してから家に帰る。今乗っているお母さんの車、まもなく手放し新しい車を買うらしい。お母さんはいまの車を気に入っているしまだ修理しながら乗りたいと言っていたが、孫のためにもスライドドアの軽乗用車がほしいというお父さんの願いが聞き入れられる形となった。
現在実家には軽トラックとお父さんの中古で買ったレクサス、お母さんの軽乗用車の3台がある。お父さんはもうゴルフもやめてあまり長距離を運転しなくなったのでレクサスを手放し、軽トラックとお母さんの新しい軽乗用車の2台にしたいらしいのだがお母さんが一人、それを止めている。乗らなくなった車をいつまでも置いておくのはもったいないとわたしも思うのだが、お母さんはレクサスに乗るお父さんがとても好きらしいのだ。
いつかレクサスに乗ってお迎えに来てもらった時の姿がかっこよくて忘れられない、お母さんはそう言っていた。怒られたり喧嘩したりすることも多いけれど、お母さんはお父さんにまだ恋をしているようなところがある。映画俳優のように見えた。お母さんは時々少女のようになってお父さんを見ているらしい。なんとかわいいのだろう。お父さんにあの車は似合っています、手放さないでください、お母さんはお父さんに素直にそう伝えたのだそうだ。
お父さんがリハビリから帰ってくるすこし前に家に帰ってきた。お父さんがいない間をねらって出かけ、再び帰ってくる前に家に戻るようにしているのだとお母さんはいたずらっぽく笑う。
夕飯の支度。今日はお母さんが買った大きなせいろを使って野菜をたっぷり蒸してみることにした。にんじん、大根、キャベツ、ピーマン、じゃがいも、小松菜、ごぼう、卵。蒸し布を敷いたせいろに野菜をたっぷり詰めていく。酢味噌だれと味噌マヨネーズのタレで食べよう。わかめときゅうりのすりごまたっぷりの酢の物も用意したのであとは野菜を蒸すだけ。お父さんとわたしは先にお風呂に入った。
久しぶりにビールで乾杯。わたしが鎌倉土産に買ったクラフトビールを三人で分けて飲む。フルーティーですごく美味しかった。お酒はもう少し欲しいかな、それくらいでやめておくのが気持ちいい。みんなが揃ったから蒸しあがったせいろを開ける。湯気とともに歓声があがった。15分くらい蒸せば大根、にんじん、ごぼうもしっかりとやわらかくなる。蒸した卵もなんだかゆで卵とはちょっと違って美味しかった。蒸し野菜はお父さんにも食べやすくてすごく喜んでいた。みんなたっぷり野菜を食べられてしあわせな夕飯。
お母さんとお父さん、長く一緒に暮らすこの二人はなぜかいつも素直になれなくてすれ違い、喧嘩をしたり揉めたりしている。長く夫婦でいるということは素直さを失うことなのか、この二人を見ているといつもそう感じる。それでも中古のレクサスはいまも車庫の奥で静かに佇んでいる。素直な気持ちはちゃんと伝わる、その証として今もうちにある。
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