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雑記:匂いと記憶

好きな匂い、嫌いな匂い、安心する匂い…

香りで一喜一憂することが最近増えた。

特に社会人になってから、気持ちのリセットで香り付きのハンドクリームを使う。
他にも香水や化粧品、身に纏う香りひとつでその日一日の気分に変化がある。
小さな変化だけど、この変化が日々を生きていく中で結構大切だと思う。

いろんなことに気づくし、時には香りがトリガーとなって昔の記憶を繋ぐこともあり、心に余裕を持たせてくれる。それが楽しい。

最近、懐かしい思い出と再会した香りがある。
DIORの化粧品とAUX PARADISのハンドクリーム(Savon)の匂い。

お気に入りのハンドクリーム♡

どちらもごく一般的な香りだけど、
ひと塗り纏うと今まで感じたことのない懐かしさが現れた。どこか遠くに行ってしまっていた、大切なものが近くにやって来る感覚。

それは、10年前に亡くなった祖母の香りに似ていた。

彼女が生きていた頃、
祖父母の家でこれらの香りがしていたことを急に思い出した。

生きていた人の痕跡がこういう形で蘇るのは言葉に言い表せられないほど不思議な体験だった。

そして同時に、まだその家は住んでいるのに、懐かしいと思うほどにその匂いが薄くなっていたことにハッとした。


こういう特定の匂いが、記憶や感情と結びつき呼び起こす現象は「プルースト効果」と名前が付けられているらしい。

フランス作家のマルセル・プルーストに名前が似てるな〜と思ったら、まさに彼の代表作『失われた時を求めて』で描かれている描写が元になっていた。

私は何気なく、お茶に浸してやわらかくなったひと切れのマドレーヌごと、ひと匙の紅茶をすくって口に持っていった。ところが、お菓子のかけらの混じったそのひと口のお茶が口の裏にふれたとたんに、私は自分の内部で異常なことが進行しつつあるのに気付いて、びくっとした。

『失われた時を求めて』より

学生時代に、西洋文学の授業でこの小説を読んで感想文を書くというレポートがあった。
こんな有名な描写、絶対に先生は「プルースト効果」について言及しているはずだが、私は全く記憶にない。
と言うのも、当時はこの小説の夢のように場面ががどんどん移り変わっていく感じが読みにくかったのを覚えてる。
今覚えば、印象派の絵を見てる感覚がなんとなく似ていて、芸術的な表現だったんだと思う。けれど当時の私はそれに慣れず、レポートもめちゃくちゃテキトーに書いた気がする。
きっと古いPCかUSBの中に残っているはずだが、データが無事であれば、どんなお粗末な感想文があるのか想像するのも恐ろしい 笑

これも何かの縁だろうと思う。昔読みきれなかったこの小説に今年はもう一度向き合おう。
この感想はいずれまた。

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香りについて意識するようになってから、好きな匂い、嫌いな匂いがわかってきた気がする。
それを感じる瞬間はととても動物的だなと思って、少し面白い。

街を歩いていると、いろんな香りがあって、この瞬間に感じている「香り」もいつか「記憶」として蘇るかもしれないと心で思いながら今日も身近な香りを記憶に刻む。

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