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動いている

 2011年8月の日記です。
 
 岐阜の販売会社から長良川鵜飼見物の誘いがあり、
先週の土曜日に行ってきたのだが・・・
 
 元々、販売店の社員旅行に、私以下の当社数名が招かれ、
総勢70人程度、受け入れのホテルはそれなりに丁寧な対応だ。
鵜飼見学に先立って、ホテルの広間で、鵜使いの親分による、
鵜飼の歴史や(古事記に記述があるとか、)
装束や道具など諸々の説明を拝聴した後、
屋形船の船着き場に向かうべく、ホテル玄関前のバスに向かった。
 
 指示に従い、先頭のマイクロバスに乗ると、補助席も全て満席になる。
係りの人が乗車口のところで、人数を確認していると、
後ろの方で誰かが、「動いている、動いている」と大きな声で叫び始める。
外を見ると、確かにバスは音も無く早足程度の速度で、
前に進んでいるが、運転席には誰もいない。
 
 緩い下り坂に差し掛かり、徐々に加速し、
20メートルほど先に停車中のワゴン車に迫っている。
間違いなくぶつかると覚悟して、前席の背もたれに両手を突っ張った。
 
 と、運転席の直ぐ後ろの席に座っていた販売会社の社長殿が、席を立ち、
運転席横、腰の高さ程度の出っ張り(エンジン部分だろう)に
腹ばいになり、ハンドルの下に手を伸ばしてサイドブレーキを引くと、
バスは停止した。
この間、4、5秒だっただろうか。
 
 前のワゴン車までは5メートル程度を残すのみだったから、
1、2秒の差で衝突を免れた事になる。
もしあのまま衝突していたら、バスは止まったのか、
あるいはワゴン者もろとも更に進み、公道まで出てしまったかもしれない。
 
 全員で拍手をして社長に感謝すると、
社長殿は、運転席に入ってブレーキを踏む時間が無かったので、
手を伸ばしてサイドブレーキを引っ張ったと解説してくれた。
因みに彼は71歳。
 
 その後、運転手が乗り込み、何事も無かったように出発し、
屋形船での宴会も、鵜飼見学も、ホテルに戻ってのカラオケも、
全て無事に終了、翌朝何事もなく大宮に帰宅した。

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