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土地を持っていれば苦労しない。

 2006年、新潟時代の日記です。
新潟の会社は市の中心から車で10分程の市街地にあり、
精密部品の工場としては、分不相応に広大な土地を持っている。
主要な県道に面し、商業地や物流拠点として土地を借りたいとの話が
頻繁にあり、工場の空き地をパチンコ、ショッピングセンターや
倉庫などに貸していた。
好調な本業に土地の賃貸料も加わり、
文句なしの業績を維持して財務体質も抜群だ。
 
 工場と道を隔てたところが、厚生地区になっており、
広々とした敷地に独身寮、体育館、社宅が点在し、
200ヤードのゴルフ練習場もある。
私は、家内と共にその社宅に住み、連日ゴルフ練習に励んでいた。
ゴルフバッグと靴は、練習場に置いてあり、
ゴルフに行く朝、練習場で100球ほど打つてから、
迎えの車に乗るのがワンパターンだった。
練習場にはプロがいて時々教えてもらった。
 
 その頃、市が巨費を投じて、信濃川河口に地下道が建設されて
当社が面している県道が、下町の繁華街に直接繋がった。
県道の交通量が急増し、当社の近辺は格好の商業地域となった。
当然の帰結として、新潟では最有力の某スーパーが
厚生地区の土地を貸してくれと、当社に攻勢をかけてくる。
社宅、独身寮、体育館、ゴルフ練習場を撤去し、
スーパーと家電を中心としたショッピングモールをつくるとのこと。
道路を挟んだ当社の敷地内で別のスーパーが、
営業中だが、全く気にしない。
 
 厚生地区を貸すとなると、社宅や独身寮の、
入居者に近隣の賃貸に移ってもらわねばならない。
体育館を使っている人たちはどうするのか、
個人的にも、ゴルフ練習場がなくなったら、腕が落ちる。
貸せば、それなりに利益は増えるが、今は、業績に何の問題もなく、
慌てて貸すほどのことではないと、返事を先延ばししていた。
 
 某スーパーは最初、坪当り○○円だと安めに言っていたが、
返事を延ばしていると、徐々に値段を上げてくる。
その頃、大店法の期限が迫り、ある時期を過ぎると、
大規模店舗の開発が出来なくなるのだが、
それを持ち出して、スーパーは貸せと迫ってくる。
こっちは貸さなくてもかまわないと、放置していると、
これが最後とばかり、破格の賃貸料を提案してきた。
仕方がない、そこまで言うなら、貨そうかと、
しぶしぶといった表情で了解した。予想通りだ。
 
 社宅は老朽化して人気がなく、10家族程度しかいないから、
補助を出して近くの賃貸に移ってもらうのは簡単だった。
私も直ぐ近くのマンションに移った。
練習場がなくなり、ゴルフは下手になった。
1年後、風景は一変し、10数店のショッピングモールが出現した。

  

 開店以来、結構な繁盛だが、近所の某スーパーは閉店し、
個人商店も少なからず影響を受けたようだ。
元々新潟市の人口が増えてはいないのだから、
全体の購買量も増えるわけではない。
あちらで買っていた分をこちらで買うに過ぎないから、
新たなショッピングモールが、地域経済に貢献しているわけではない。
 
 開発などせずに、潤沢な空き地に植わっていたヒマラヤ杉や
ゴルフ練習場の緑の芝生を残したほうが、
地域の環境保全になったのではないかと思う。
体育館で剣道の練習をしていた子供達はどうしているだろうか。

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