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「君主論」8.運命と成功体験

 マキャヴェリ「君主論」と自分の思うところ、その8です。
 
(7)仮に運命が人間活動の半分を、思いのままに裁定しえたとしても、少なくともあと半分か、半分近くは、運命が我々の支配にまかせてくれているとみるのが本当だ・・・・人間はもって生まれた性質に傾いて、そこから離れられない・・・ある道を進んで繁栄を味わった人は、どうしてもその道から離れる気になれない・・・・
 
 
 マキャヴェリの時代はルネサンス以前のキリスト教世界、人間が運命に関与する、運命を変えるとは言い難かっただろうから、ここでは半分程度と控えめに言っているのではないか。
 
 リーマンショックやコロナ禍など企業環境が激変する大事件は、いつか必ず起こるものだし、それほどではなくても、常に大小様々な変化が企業に押し寄せ、企業はいつも波に晒されている。人生と同じだ。以前にも出てきたが、「晴れの日に嵐のくることなど考えもしないのは、人間共通の欠点」だが、それでは遅れをとってしまう。経営者は運命に身を任せてはならず、運命を先取りせねばならない。
 
 トップが成功体験に固執するが故に大失敗をした企業は枚挙にいとまがない。シャープは液晶に固執し、東芝は原発に固執して大損害を生じ、会社そのものの解体、売却に陥ってしまった。昨今話題のビッグモーターも、破綻に向かって一目散だ。大企業でなくても、一代で起こした企業の社長が、環境が変わった時に最初の成功体験から抜け出せず、破綻するのは嫌というほど見て来た。運命と言えばそれまでだが、本当は人災ではないかとも思う。
 
 
 マキャヴェリから少々離れて、私の考え(独断と偏見)を述べると・・・・
 企業の発展に必要な要素は大雑把に言うと、1.経営者、2.社員、3.時の運、の三つだと思う。経営者が賢明な判断を下し、その意図を社員が理解して誠実に実行し、それがその時の経済環境に合致していれば、企業は発展する。三つの要素が一つでも欠けると、その企業は消滅する。勿論この三つの要素は互いに影響しあっているから、単純ではないのだが。

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