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21年住み、20年空き家だった。

  2014年2月の日記です。
 
 横浜の家は1979年32歳で購入して21年間住み、
2000年53歳で東京から新潟に転勤した時から、
空き家になっている。
購入した時に些かの紆余曲折がある。

 購入当時、私は31歳、2人目の1歳の子供が歩き出し、
住んでいた団地が些か狭くなって、一戸建てを探していた。
私と妻の実家、勤め、環境などを勘案し、
田園都市線沿いがよかろうと、
電鉄会社系のT不動産の友の会なるものに入り、
販売情報を優先的に得ていた。
 
 正月2日の夕方、実家から団地に戻ると、
T社から葉書が来ており、
新たに100戸余の新築住宅を売り出すとのこと。
最寄り駅は狙いの田園都市線の某駅、早速現地に赴くと、
綺麗に区画整理され、一戸の土地も広め、
直ぐ裏が小山で緑濃く、公園も近い。

 これはいいと、直ぐに販売センターに行き、
購入希望を登録すると、2番だった。
人気が高く、戸数の4倍、4百人余が申し込んだ。
登録順に希望の物件を選択出来るから2番は俄然有利だ。
売り出しの中央付近、南面道路のよさそうなところに、
2戸のモデルホームが既に建てられており、
それ以外の区画は建築に着手したばかりで、
5月頃完成するとのこと。
モデルホームの一戸が、東南の角地で日当たりもいいし、
土地も比較的広いので、買える価格ならばこれだと決めた。

 数日後、全国紙に広告が掲載された。
モデルホームがイラストで紹介され、
おおよその価格も書かれており、
これなら大丈夫だと、ほっとする。
2週間後、正式な物件説明書を受け取る。
団地全体のレイアウト、各戸の造り、土地の図面、建物の平面図
等が書かれた説明書に、別刷で価格一覧表が付いている。
ところが、狙っていたモデルホームの価格欄だけが空欄だ。

 不審に思い、T電鉄に電話した。
「モデルホーム2戸の価格が書いていないが?」
「モデルホームは売りません。」
「それはおかしい、新聞の広告にもでていたが、あれは嘘か?」
「兎も角販売しないことになっています。」
何度か、押し問答したが、埒が明かない。
最後に、「では公正取引委員会に問い合わせてみる。」
で、ひとまず、電話を終えた。

 駄目元と思いつつ、宣言通りに、公正取引委員会に電話し、
詳細を説明すると、
「その通りだとすると確かにおかしい。」
「では、どうすればいいのか?」
「その説明書、広告、価格表など、全てを持参して来てくれれば、
対応を検討する。」
「わかりました。」
当時の公取委は人も少なく、言外では、
細かいことに構ってはいられない、
どうしてもと言うなら、全てあなたが証明してください、
とのことらしい。

 まあ、仕方が無い、モデルホームは買えないだろうから、
何処にしようか、と第2、第3の候補を検討し始めた。
ところが、2,3日経つと、T電鉄から電話があり、
「モデルホームも売ることになりました。」とのこと。
公取委に聞いてみる、と言ったのが利いたのか、
あるいは、公取委から聞き取りの電話でもあったのかもしれない。
T社は世間に知られた大企業、
公になった場合の世評を恐れたのだろう。

 数日後、登録者が販売センターに集まり、
登録順に希望の物件を決めた。
1番の人は、モデルホームの、やや安い方を希望し、
2番の私は、狙い通り、東南角地をゲット出来た。
後で、聞きかじったのは、モデルホームがお得だから、
T社の関係者に売るつもりだったらしい。
それなら、最初から販売から外しておけばいいのだが、
なんらかの社内事情があったのだろう。

 あの家には21年間住み、2人の息子は独立し、
当方は新潟に転勤して、家は空き家になった。
更に14年後の現在、近隣の各家の庭には木々が茂り、
緑濃い落ち着いた街になっている。
ただし、住人の大部分は高齢者、若者は少なく、
子供は見掛けない。
家はしっかり出来ており、適度な手入れをして、
いつでも住める状態を保っている。

ハナミズキが満開




 追:結局、空家状態は20年に及び、2020年に処分した。


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