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果てしなき 渇き

ブックオフに行くと だいたい無差別に

いくつかの本をピックアップしてレジに持っていくんだけれど

その中には

少し読んだだけで興ざめして やめてしまうものもあるのに

この本は 異質な存在を放っていた。

冒頭から あまりにグロテスクな死体描写に

思わず文体から意味を拾い上げて頭の中で

形として結び合わせる作業をやめてしまいたくなった。

にもかかわらず

なんだか そのグロテスクな描写から

まるで目がそらせないまま 

瞬きさえも忘れて見入ってしまうような

そんな感覚の本。

明らかに 読み進めることに抵抗があり

まがまがとしたグロテスクさに 

何度も吐き気をもよおしながらも

その場から離れることができない引力で

逃げ出す足を凍らせてしまうような。

もう久しく こんなに 暗黒の漆黒の色合いの

本を読んだことなく

本を読んでそのまま寝入ったら確実に悪夢にうなされそうな

本であったのに

もう没頭して我を忘れて読破してしまった。

まるきり人にオススメできない本で

愛やら友情やら

夢を持って人生を歩もうやら

感覚的にそういった 「美徳」が

全否定されて

もしかしたら人間って

こういう「美徳」的な意識ってのは

後天的に教育されて植え付けられたもので

そうでなかったとしたら

人間ってのはここまで 闇を持って

漆黒の存在になれるのかもしれない

そもそもの人間の「美徳」意識にまで立ち返って

どろどろとして底なし沼のような

吐き気をもよおすグロテスクなエグ味の中で

「生きること」

について 想いを巡らしてしまう本だった。

たまたま手に取ってレジに持っていっただけの本だったので

この本っていったいなんだろう?と

読み終えた後で ネットでレビューを調べてみると

酷評だらけで 逆に 笑えてしまう。

読むことによって 言葉の暴力に自分をさらすことになる

ある意味 

何を得ることもない

無意味な読書体験なのかもしれないけれど

ことさらそういう意味で考えると

自身で絶対に体験がかなわない事象を

疑似体験できるということでは

小説の意味を大いに成す。

絶対にオススメはできないけれど。

と書いておくと

絶対に読みたくなる人がいるはず(笑)

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