見出し画像

旅行中に民家の壁を見よう

旅行中にそこらの民家に注目したことはあるだろうか。

城やなまこ壁が見事な豪商の邸宅ではなくて、ガチ民家だ。

最近の家はどこにいっても同じで無個性だけど、古い民家であればその土地特有の個性を発見できることがある。

以前は観光地で屋根を見ようという話をしたので、今回は屋根ではなく壁に注目してみよう。

①焼杉

まず、焼杉に関してはあまりいい写真がなく申し訳ない。

あなたは焼杉を知っているだろうか。西日本の人であれば常識かもしれないし、名前は知らなくてもあちこちで見てなじみがあるかもしれない。

ただ私は東日本の人間なので、瀬戸内海周辺で焼杉の民家が並んでいるのを初めて見た時、見たことのない知らない文化だなあと思った。

東日本の人のために説明すると、焼杉は杉板の表面を焼いてこがしたものだ。

瀬戸内海の周辺には壁面が焼杉になっている民家がよくある。

私は旅行中の経験則から瀬戸内海を中心に広がっていると勝手に思っているけど、西日本特有の壁らしいので、私がよく見ていないだけで瀬戸内海以外でもたくさんあるのかもしれない。

特徴として表面が炭化していることから、普通の木の壁よりも耐久力が高く、丁寧に焼かれた壁であれば50年メンテナンスなしで持つという。真っ黒な見た目も渋くて高級感がある。

いつ焼杉が誕生したのか、なぜ東日本に普及しなかったのかはよく分かっていないという。

西日本の人間にしてみれば「いや、旅行中も何も町を歩いていればたまに見るじゃん」と思うかもしれないが、我々東日本側の人間にしてみれば本当になじみがない壁だ。

②佐久島の黒壁

こんな黒い壁もある。

愛知県・佐久島には壁の黒い民家が大量に建っている。この色は焼いたものではなく、表面にぬられたコールタールのためだ。

元々コールタールは防腐のために船底にぬられていたが、それを家の壁に塗ることで腐食や害虫を避けることができる。

安く優秀な壁材ができるなど時代の流れもあり減少していたが、行政や島民の活動によりかつての黒壁の家が建ち並ぶ風景を復活させた。

佐久島は他にも現代アートを島に点在させたりと観光地化に熱心だし、しっかりとそれなりの知名度を築くことに成功している。

黒い壁が建ち並ぶ昔の町並みを大事にしたいという想いに加え、観光資源として活用したいという計算高さとしたたかさがほのかに香る気もするけど、いずれにしても佐久島のナイスな判断により作り上げられた町並みだ。

③滋賀のベンガラ塗り

滋賀県には壁が赤く塗られた木造建築が多い気がするなと思って調べたところ、滋賀県の湖北地方(米原市、長浜市)では家の木造部分にベンガラ塗りを施すことがあるらしい。このベンガラ塗りは、時には壁だけでなく家の内部までおよぶことがあるという。

滋賀県の湖北地方は別にベンガラの名産地というわけでもないし、ベンガラ塗りをする理由も防腐や魔除け、見栄え目的など諸説あってはっきりしない。理由が不明なのになぜか特定の地域に多い謎の壁だ。

普通の民家に使われているのでたぶんそこまで高価ではないと思うけど、神社の鳥居などとは異なる控えめな赤色が目に映え、高級感と格式の高さを感じる壁だ。

まとめ

このように、民家の壁には地域ごとの特色が残っている。昔ながらの町並みを歩く時は、城や豪商の邸宅だけでなく、一般の民家の細部にも注目してみると発見があるだろう。

ご支援頂けますと励みになります!