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大学生のムスメ。哲学の授業で。

「ママ、アタシ向こう二週間、今学期最初のテストの嵐だから、姿くらますかもしれない」

と予告されたのが、2月に入ってすぐの週末。

そして、月曜の夜。そろそろベッドで読書するかと用意していたら、電話が鳴った。

「この哲学のクラス。週に一回なんだけど、夜7時から9時半なんだよ」
「ひぃ。そんな時間のクラス、何人くらい取ってるの?」
「うーん、15人くらい。でさ、ママはこのクラス気に入ると思うんだ」

モラル、をテーマにするらしい。

どの哲学家の思想を中心に?と聞いたら、Alistotle(=アリストテレス)とのこと。どうか、ググって発音を確認してくださいまし。いきなり言われたら、なんのことか日本人にはわかるまい。

さて。

マネージャーとして、一人解雇にしなければならなくなった。候補は二人。一人は、採用したばかりの若者。優秀で一生懸命働く。
もう一人は、自分よりちょっと下レベルのマネージャー。同じマネージャー仲間として「友達」。怠け者で、生産性まるでナシ。

アナタならどっちを解雇する?

私は迷いなく答えた。
生産性のない怠け者の「友達」に、決まってるではないか。

"That's no fucking brainer." と私。考える必要などない。
"I know."

ところが。
クラスの殆どが「優秀な働き者の若者」を選んだのだそうだ。ひぃぃぃ。

人間関係は長期にわたって続くから「友達」との関係をここで壊すべきではない、というのが理由。

違うでしょう。その若い働き者の子と、友達になればいいじゃないの。そのほうがずっとお互いにとっていい関係が始まる。

もちろん、ムスメは私と同意見である。

「この国はそんな風に考える奴らばっかりだから、何も改善も進歩もせず、我々がそういう非効率性に苦しむ結果になるのだ!」

と、思わず叫ぶ。
目の前のちゃぶ台(があれば)をひっくり返す勢いである。これから働き始める若者がそんな考え方をしていたら、この国はどうなるのか。

続いて。
教授が目に涙を浮かべながら、自身の経験を例にあげてクラスに問いかけたこと。

"Who in your life has the best moral character?"
(君たちの人生で、道徳観のもっとも高かったと思われる人は?)

自分の人生で出会った人たちの中で。

ソイツの答えは、"Air Bender's uncle, Iroh." だったと、ムスメが呆れ返っている。

Eddy が好きそうなクラスじゃない?と言ったら、絶対にダメだと思う、と言ったムスメの理由がコレだった。あんなに穏やかな彼なのに、きっと黙っていられずにソイツを真正面から見据えて、

"Are you fucking kidding, right?"

と、全身脱力しながら軽蔑の眼差しとともに叱り飛ばすだろう、とムスメは言う。

アニメのキャラは侮れないと思うけれど、でも "In your life" という時にアニメのキャラはないでしょうよ。一体、どんな人生送ってきたんだよ。

私だったら誰だろう。今は小説の中の登場人物しか思いあたらない。

"To kill a mockingbird" (邦題は「アラバマ物語」)の Atticus Finch


スガタクラマスカモと言ってたムスメは、夜だった電話が朝に変わって、毎朝かけてくる。

今朝は、電話の中の私を連れてメールルームに行き、私が出した手紙を受け取ったあとに、Air Dropでできるコピー機で印刷(一枚 10 cents!!)し、寮に戻って、遅めの朝ごはん(チキンスープに pastina 入れて電子レンジ)を食べていた。

「あ、バスが折り返したから出かける準備するわ」
「ママの方もそろそろ仕事する。またね〜」


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。