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日本に一時帰国した私がアメリカに帰国。

旅行記はまだ続くけれど、ちょっと一息いれる。
旅行中にあったことをこんな風に書くのもいいのではと思う。

子供たちのいるアメリカに帰国した私は、彼らの母艦である。

さて。
運転免許証を Real ID に切り替えるアポのため、MVC (Motor Vehicle Commission) に出かけた。

Real ID というのは、州が発行する運転免許証=身分証明書とは異なり、連邦政府で通用する身分証明書。 国内線搭乗とか連邦政府機関への入場とか。私の住む州では2023年5月3日以降、が、連邦レベルでは2025年5月7日以降、Real ID が必要、らしい。(どっちだよ?)

アメリカでは、身分証明証としては運転免許証が一番パワフルかもしれない。パスポートを持っていない人も大勢いるけれど、免許証は皆持っているし「運転しない」身分証明証 (Non Driver's ID)もある。運転できない未成年は学生証がある。

Real IDで国内線は搭乗できるというのは、これからの私には便利。

予約していったのに、それぞれのステップで待たされ待たされ、結局終わったのが一時間後、というのはアメリカならでは。

そして。
身元と住所確認に必要書類は結構面倒なルールに基づいて複数用意しなければいけないのだけれど、MVCのウェブサイトは懇切丁寧に Interactive に手伝ってくれる。

そういう必要書類をさらに対面で確認してくれるステップがある。だらしないアメリカ人対応である。

順番が来て、窓口で書類を見せると、
今の免許証
パスポート
Social Security Card
と、矢継ぎ早に問われ、一つずつ手渡す。

最後に、住所確認用の書類は?と聞かれ、ウェブサイトに指示された通りに用意したガス料金請求書を出すと、担当者はにっこり。これを用意できていない人が多いらしい。

"I wish everyone was prepared like you!!"
"The website is very good and helpful. 😉"
"Yes!!"

こういう類の会話はアメリカならでは。あぁ帰ってきたなぁと思う。

番号をもらって椅子に座り、また延々と順番待ち。ようやく窓口にたどり着く。強烈なアクセントのおじさん。プラスチックの仕切りに片耳をひっつけんばかりに近寄り、何を言ってるかの聞き取りに集中する。

いよいよ写真を撮る段階にきて、アップにしていた髪をおろしてカメラに向かう。撮った写真を、画面で見せてくれる。

"….Well…I think it's OK.”
"You look BEAUTIFUL!!!"

お世辞だろうがなんだろうが、そう言われて悪い気はしない。
こういう会話もアメリカならでは。

そうだ。お世辞といえば。


北陸新幹線の中。3人がけの列の窓際に座っていたら、赤ちゃんを連れた若い夫婦が隣の二席に座った。私もそういう若い母親だった時期がある。飛行機や電車で子供が泣いたりぐずったりすると、身がすくむ思いがした。

が、二人育ててしまうと、よその赤ん坊がどんなに泣き叫ぼうとなにも感じなくなってしまう。それどころか、若いお母さん達の気持ちが手に取るようにわかる。

そのお母さんは生後6ヶ月の赤ちゃんを胸元に抱っこしていて、担いでいたリュックから腕を抜こうとしたがうまくいかない。お父さんはそれに気づかないので、私が手を貸してリュックを外してあげた。

「すみません」
「大丈夫。私も二人育てて同じ経験してるから」

ちょっと話し続けたそうな気配を感じる。きっと不思議な人だと思われているのに違いないから、自分から言う。

「私ねー、アメリカが長いの。30年。向こうで子供二人育てたの」
「あー、やっぱり。たたずまいが違うなーって思いました。海外が長い方か、ハーフかなって」

た、たたずまいが違う?!ハーフ?!
笑。

彼女は Working Holidayでフランスで一年暮らしたことがあるという。

それはいい経験をしたわねぇ。外から日本を見る目があるかないかってのは、子供を育てる上で特に大事だから。

「はい。あれ以上滞在したら、日本に帰ってこれなくなると思いました」
「うん、わかる。日本大好きだけど、私はもう日本では暮らせないと思う」

私、嘘つかないしお世辞言わないんだけど、この子は可愛いわねぇ。赤ちゃんなら皆可愛いっていう人いるけど、それは嘘。可愛くない赤ちゃんだって、いるのよ。でも、あなたの赤ちゃんはほんとに可愛い。

彼女は笑った。

私は途中下車するので、立ち上がって通路に立つ。お父さんがぐずり始めた赤ちゃんを連れて席を立っていたから、「お座りになってください」という彼女の言葉に甘える。

私が母に言われたことなんだけどね、子育てしてると、その時々でその状態が永遠に続く気がして絶望的な気分になるんだけど、その状態は決して永遠じゃないから。もちろん次の段階ではまた別の種類のチャレンジがやってくるけれど、それも永遠には続かない。それを忘れないこと。

こんな老人社会で子供産んで育ててるんだから、堂々としてていいのよ。

ありがとうございます、と深々と頭を下げた若いお母さん。

東京で会った二人の若い女性に、この話をした。

「うわぁ。彼女、きっと嬉しくて泣いたはずです。お母さん達、ほんとに肩身狭く生きてますから。きっと一生忘れない言葉です」

日本で会った私の友人知人。子供がいるのは一割程度と気づいて言葉を失った。

子育て支援が整っていない日本の社会。私の記憶にある30年前の日本となんら変わっていない。賃金が上がらず、共働きをせざるを得ない夫婦は「子供は産まない。産めない。産みたくない」と言い続けている。

子供を育てているお母さんたちの肩身が狭い社会?

どんなに貯めても貯金にはなんの利息もつかず、超低金利で運用されるしかない年金制度を、誰が支えることになると思っているのだ。

日本民族が絶滅してもいいのか?

頑張れ。
いつの時代でもどこの国でも、子育ては人類の偉業なのだ。
それを決して忘れずに。
頑張れ。

そして。私は母艦としてアメリカに帰ってきた。


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ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。