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EnsembleGala後記④

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7-2.本番の感想

いや、もう1ヶ月経ちそうなんですけど。1ヶ月?えっ……?

④ホワイト・ローズ

Twitterでも書いたことだが、今回のプログラムでこの曲は重要な位置を占めていた。普段から吹奏楽を演奏する人たちが慣れ親しんだ作曲家フィリップ・スパークの作品。1部の曲も吹奏楽オリジナル楽曲だが、ナイジェルヘスの作品はそれ以上に「へスの曲」という色が強い(気がする)
ホワイトローズという作品は吹く人も聴く人も心落ち着けて聴ける作品を……というところで、たさんの選曲の中からぼくが推した。もちろんホワイトローズがヨークシャーを象徴する花であり、コンサートのテーマと合致することも含めてこの曲が良いだろうと思ったのである。そして初回の練習でこの曲を聴いて既に「わかっている」響きがしたのでもう何も問題ないなと感じたのだった。
ちゃんと細かく見ていくと、思ったよりは細かい部分で難しいところもあったようだが、やはり他の曲より完成度は高い演奏になったのではないか。たさんの合奏での穏やかな語り口がそのまま曲に表情を与えたかのように、まとまった演奏になったのではないだろうか。
なんと言ってもこの曲の最大の聴きどころは中間部のフルートソロとそれに続くクラリネットソロだと思う。まゆさんは透明感のある音色で、息が長く豊かな歌い方は本当に素敵だった。そしてのせさんの優しく語りかけるような表現はとても印象的だった。そしてソロを支える伴奏ラインの安定感も素晴らしかった。
この曲については、EnsembleGalaメンバーの特徴がとても曲想と合致していたようで、合奏を横で聴いていてもいつも楽しかった。スパーク作品の中ではマイナーな部類に入る曲ではあるけど、今回出会うことができて本当に良かった。

⑤キャッツ

がらにゃーん。の元ネタ、という訳でもなく。ただ、がらにゃーんが誕生する前にこの曲をやることは決まっていた。デメイ編曲版は既に絶版であったのだが、海外から取り寄せることが可能だとわかったからだ。
私個人的に、デメイが真価を発揮しているのはこういったアレンジ作品だと思う。特にミュージカルものについては、いい具合にポップス色を薄めて吹奏楽ナイズしてくれているので、どうしても原曲のままだと物足りなかったりダサくなるところをうまく演奏会用にまとめてくれている。そしてデメイのオーケストレーションはいい音するのである。
指揮としては最終的には気持ちよく振れたと思う。なかなかに難しい部分もあったが……(特にオールドデュトロノミー)
演奏も総合的に見て本番がいちばん良かったと言えるのではないかと思う。やはりトランペットの安定感がすごい。そしてアングレかぼすは(本人は不完全燃焼だったかと思うが)さすがの歌いこみだった。
やっぱりこの曲(このアレンジ)は後半のメモリーからが最高に気持ちいい。寄せては返す波のように感情の起伏が表現されている。もっともっと出来ただろうとは思うけど、いい具合におおらかな演奏でこれはこれで良かったのではないかと思う。表現として消極的であるようには感じなかった。むしろ、穏やかに、豊かに歌い上げるメモリーはきっと誰かの胸に届いたのではないだろうか。

⑥リバーダンス

本当のラスボスはここだった。
この曲については反省点が色々あった。いくつか書いておこうと思う。
まず練習時間の配分。相対的に合奏時間が短くなってしまった。練習日程のうち、前半はあまり時間を取らず、後半の日程で集中して練習のは当初からの予定通りである(打楽器とサックスが揃った状態でやるほうが効率が上がると思ったから)しかし、他の曲の合奏で圧迫されて時間が短くなってしまった部分があり、結果的に合奏で細かい部分まで拾いきれなかったところがある。
そしてセッティング。これはアプラホールのかなり響く特徴を理解していなかった部分もあるが、いずれにせよもっと対策は練れたはずだった。Firedance冒頭をゲネプロでやった時にこれはしまったと思った。響きの跳ね返りのせいか指揮台上では合ってるのか合ってないのかすら判断が難しい状況だった。

「こんな事を言う柄じゃないのはわかってますが……ぼくを信じてください」

本当はこんなこと言うつもりじゃなかったけど、そうせざるを得なかった。いや、そんなこと言いたくなかったのである。特にFiredance冒頭のようなアンサンブルは奏者が自発的にやるべきで指揮者はあくまで黒子に徹したほうがよい。でも事故を避けるには自分の指揮に合わせてもらうしか無かった。
その場でセッティングや方針を変えることもできたか?少なくともあの時の自分には出来なかった。

それでも、Firedanceの冒頭、カスタネットはぎりぎり踏みとどまったしコントラバスとバスクラは合わせてくれた。そしてピアノのまゆさんはまゆさんのピアノでしっかり聴かせてくれた。ここまでやってくれて本当にありがたかった。ぼくが不甲斐ないばかりに苦労をかけさせたかもしれないし、本当ならもっと輝かせてあげられたかもしれない。でもそんな中でみんな素敵なアンサンブルをしてくれたし、まゆさんはその瞬間、主役……ヒロインだった。

本番直前の話。
キャッツが終わって私が曲紹介をし舞台から袖にはけるときにまゆさんが「鳴らないんです」と言った。アンプからシンセサイザーの音が出てなかったのである。でも、一度任せて自分は待つことにした。袖で待っている時、自分の中であの時なんら解決策は浮かんでいなかった。結果的に音が出るようになって良かったものの内心不安が渦巻いていた。(実際は冒頭、音量が全然出なかったもころをぴなさんがカバーしたという)
アンサンブルが乱れる怖さと、シンセサイザーの件があってリバーダンスに関してはとてもではないが笑顔で振ってはいなかったと思う。そんな余裕はなかった。あとで指揮者ビデオを見ても明らかに動きが硬く見える。
そうはいっても、変拍子の続く楽譜、なんとか乗り切れたのは幸いだった。振り間違えもなかったと思う。アンサンブルが乱れる箇所はあったもののなんとか最後までやり通せたのは良かった。
全体の演奏としてはもっともっと精度を高めてはいけただろうと思う。ただ、最後までみんな譜面に食らいついてくれたのをひしひしと感じた本番だった。冒頭のちはるさんフルートソロは温度感がCloudsongにぴったり合っていた。Firedanceは前述のような怖さがあったものの、守りには入らなかったと思う。Lift the Wings、みんなぼくの表現によく付いてきてくれた。そしてチューバのペダルの響きは最高だった。Dance of the River Woman、牛若くんは吹き急ごうとするところよく耐えてくれたと思う。そしてRiverdance、ぽんさんのソプラノで良かった。たぶん彼女は演奏には納得してないだろうと思う。北出の練習の時に暗譜で吹いてるのを聴いて、曲に対して特別な思い入れがあるのかなと思った。私の表現にも実際合わせづらいところがあったように思うけど、そんな中で折り合ってくれた。彼女がいたからこのRiverdanceが成り立ったのは言うまでもない。出てくれて本当にありがとう。そして打楽器の皆さん、短い練習時間の中でベストを尽くしていただいた。打楽器について無知すぎて的確な指示が出せずに申し訳ない思いをしている。でも、百戦錬磨のメンツがなんとかまとめてくれたという思いがある。
打楽器パートについてはRiverdanceだけでなく、他の曲も、素晴らしいパフォーマンスをありがとうございました。そして打楽器関係の調整について大部分を担ってくださったおりい先輩にも改めて感謝申し上げます。

デメイのリバーダンス。ずっとやりたかった譜面だった。リバーダンス自体は中学生のころから憧れだったけど、ある時Firedanceに出会って、この曲が吹奏楽譜面に含まれていないことを悲しく思った。後からデメイ版にはFiredanceが入っていることを知って絶対やりたいと思った。今回、完全燃焼……とはいえなかったかもしれないがそれでも毎回振ってて楽しかったし、振れるありがたさを噛み締めていた。何度も言ってるけど、やはり感謝しかありません。

⑦ロンドンデリーの歌

編曲者パーシーグレインジャーは実はオーストラリア出身だが、イギリスに渡って民謡を蓄音機を使って採集し、それを自らの楽曲の素材としている(ex.リンカンシャーの花束)
無論ロンドンデリーの歌としては色んな編曲者の譜面があるのだが、グレインジャー版はその土地の匂いを強く感じるものである。
というところで、アンコールとしてたさんに振ってもらったわけだが、たさんが頑張ってくれたお陰で単にアンコールとしてみんな知ってる曲を……というだけでなくしっかり味わいのある演奏になったのではないかと思う。
それにしてもたさんは気持ちよさそうに振ってましたね(?)

⑧サンダーバード

実はこの曲もイギリス関連だから選んだと言うよりは単にサンダーバードのテーマが好きだから選んだのである。昔から聴いてた曲だから。そして入手の難しい森田編をあえて選んだ。サックスソロが好きだからだ。
文句なし。(あ、いや本番もっと落ち着いて出来ればよかったとは思う笑)最高に楽しかった。冒頭で発射カウントできなかったのだけ心残り……。

長くなったが、曲の感想は以上。
本当は演奏会関連で書けることもまだあったと思うけど、えらい時間が経ってしまったのでここで締めようと思う。 

8.終わりに


正直、初めての演奏会運営は楽しいことばかりではなかったし演奏会直前は不安なことが多すぎてナーバスにもなっていたが、終わって皆がいい顔をしてくれていたのでやってよかったと思う。
至らないことだらけで、みんなが必ずしも最後まで気持ちよく演奏出来たわけじゃないかもしれないけれど、何か、ひとつふたつ、良い思い出がこの先も心のどこかに残ってくれて、ふとした時に思い出してくれれば、それでいいのではないかと思うのである。

では、またどこかで。


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